NETFLIXオリジナルアニメ


リリックが紡ぐ世界の未来

日本列島全域を突然襲った大地震。壊滅的な被害から逃れて生き延びた高校生の歩(上田麗奈)は自宅近くの広域避難場所の公園で父(てらそままさき)、母(佐々木優子)、弟の剛(村中知)と再会。無政府状態のなか日本が沈むという噂が流れ、東京から離れ内陸に向かって移動を始める。


小説家・小松左京氏の代表作「日本沈没」を下敷きに現代に設定を置き換えて大胆に再構築。「夜は短し歩けよ乙女」の湯浅政明監督でNETFLIXが制作したアニメ作品、各話30分弱の全10話を一気に鑑賞。

原作未読で、何度か製作されている映像作品も未見なので比較は不可。僕にとって正真正銘の初沈没。本作、政府や科学者ではなく、市民目線で描いているのは一連の作品とは趣を異にしているのではないでしょうか?


時期的に首都直下型地震のシミュレーション的要素もあるのかと想像していたけれどハズレ。否コメディな「サバイバルファミリー」的ロードムービーな中盤の展開。湯浅監督的な「遊び」もなくて重い。

この中盤がヒリヒリ。人間のイヤなところを見せつけられる件はドラマ「ウォーキングデッド」も連想。耐性のない人には辛い。でもって毎回大切な人が一人ひとりといなくなるのだから。賛否があるのも頷ける。


「日本ヘイト」との感想もあるとか。申し訳ありませんが、その方には本作難しかったかもしれません。原作は「日本とは?」がテーマだったようです。それを下敷きにした本作も同じだったと思います。

時が経ち、情報通信のグローバル化により国の概念は大きく変化。オリンピックを象徴にボーダーレス化した世界での「日本とは?」「国家とは?」を改めて問いかける。第9話に盛り込んだメッセージがわかりやすい。


国籍、人種、インターネット、信仰、国境、障害、バーチャルリアリティ…様々な問題から未来を手探り。とかくネガティヴにとらわれやすいSNSやVRを明るい未来につながるアイテムとしてとらえたラストは印象的。

シリーズ中カギになる第9話。そこに音楽表現が得意な湯浅的演出を混ぜたのが「なぜ湯浅監督?」という疑問を一掃。かつ本作の大きなテーマを感覚的にも発現。全体通して、よくできてたと思う。


hiroでした。