11本目(3月9日鑑賞)FP2

 
着ている服で判断するな!
グリーンブック
 
監督・脚本:ピーター・ファレリー/脚本:ニック・ヴァレロンガ/ブライアン・カリー/音楽:クリス・パワーズ
出演:ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ/リンダ・カーデリーニ/ディミル・D・マリノフ/マイク・ハットン
 
トニー(ヴィゴ・モーテンセン)は用心棒を勤めるナイトクラブの改装のため職を失う。ある日、ある人物の運転手の仕事を持ちかけられ、面接場所に行くとそこはカーネギーホール。依頼主はホールの上階に住む天才的な黒人ピアニストのドク・シャーリー(マハーシャラ・アリ)だった。
 
 
あの人はあーだ、この人はこーだ。集団にいるとこの手の話に事欠かない。あーなんだ、こーなんだ。当人のことなど知らなくてもイメージは勝手に出来上がる。
 
東京の人がみんな洗練されているわけではない。女子高生がみんなギャルではない。背が高い人がバスケが得意とは限らない。大阪の人だってお笑いが嫌いな人もいる。
 
体格や顔や服や肌の色。それはその人の外見的な特徴でしかない。出身地だって環境条件でしかない。それ以上の情報は知ることでしか得られない。知らないのなら決めつけるべきではない。
 
 
本作の舞台は60年代のアメリカ。
 
最初は肌の色を気にするトニー。理由もなく「なんとなく嫌」なんだと。ところが単純な彼はドクの演奏を聴いて感動する。ホワイトハウスでも演奏するほどの実力なのだが、トニーには関係ない。感動したから「彼は天才だ!」と。
 
そんな天才との珍道中。ギャップを楽しんでるうちに「気が合うかも」となっていく。ドクを理解することで、今まで考えたこともなかった黒人が置かれた状況を自分なりに考えるようになる。
 
 
そのドクは厳しい環境だと知りながら深南部ツアーを決行する信念の人。ではあるが、正直なところは「怖い」。当然だ。命の危険さえあるのだから。
 
腕っぷしの男トニーを選んだ大きな要素はそこなのだろう。初めは。だが、ドクも試行錯誤。迷いながら、弱音を吐きながらの旅。トニーの存在が単なる運転手でもボディガードでもなくなっていく。
 
着ている服で人を判断するな…はトニーのセリフ。人を見た目で判断するなと、トニー自身が見つけた結論なのだろう。2人の心が寄り添っていく。その過程が暖かい。
 
 
ヴィゴがアラゴルン様以来の大ヒット作センター。伝説の王がメタボ腹の下着姿で部屋をうろうろ。ホットドッグ26個食って、フライドチキンを食べた手でハンドルを握る。嬉しいじゃないか。
 
アリはあっという間にアカデミー賞の常連。問題作「ムーンライト」やエンタメ作「アリータ」に加え、こういうソフトな役までこなす。大躍進はまだまだ止まらない。
 
ちなみに「グリーンブック」とは黒人が安全に旅するためのガイドブック。「グリーン」(安全)と銘打っている時点で怖い。
 
 
本作に拳を握って訴える重さはなく、とても軽妙で洒脱。ジャズとロックンロールをBGMに描くのは2人の友情。差別の非を叫ぶのではなく、差別を乗り越える方法を提唱しているから、本作とても優しい。
 
アカデミー賞で優しい作品が選ばれたのは嬉しい限り。監督のファレリーはコメディ畑の人。一見ミスマッチな組み合わせが最高の物語を生み出した。最後のセリフで笑わせるセンスがすごい好き。
 
 
 
hiroでした。
 
 
 
脚本9 映像8 音響8 配役9 音楽9
43/50