WOWOW鑑賞


商人シンドラーと軍人ゲートの違い
シンドラーのリスト
 
監督:スティーヴン・スピルバーグ/脚本:スティーヴン・ザイリアン/原作:トーマス・キニーリー/音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:リーアム・ニーソン/ベン・キングズレー/レイフ・ファインズ/キャロライン・グッドオール/ジョナサン・サガール/エンベス・デイヴィッツ/マルゴーシャ・ゲベル
 
ナチスドイツ占領下のポーランド南端クラクフでドイツ人実業家のオスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)はホーロー容器工場で財を得る。その成功には会計士シュターン(ベン・キングズレー)はじめ低賃金で有能な多くのユダヤ人が不可欠であった。クラクフに設置された収容所に工場のユダヤ人も収容されると、シンドラーは所長のゲート(レイフ・ファインズ)と接触し、ユダヤ人職工がいないと工場が動かないと訴える。そんなおり収容されると戻ってこない収容所の噂が流れ始める。
 

初見。実話。3時間15分の超巨編。

モノクロなのはカラーだとリアルすぎるからか。モノクロが苦手なhiro。それに長尺。劇場なら寝てたかも。寝そうなほどつまらないのかと問われると否。丁寧の一言。ナチスのあれも、ユダヤのあれも。

ことさら目を引く主人公の心模様。最初は得体が知れないシンドラー。伝説の善人とは乖離。それが少しずつ少しずつ変わっていく。その描写が静かでとても丁寧。


近年、ナチスドイツを描いた作品は数多。今でこそ非人道的で残虐な描写は珍しくない。スタンダードになったのは1993年の本作以降なのかもね。

ゲートの心情が興味深い。彼の目には人に見えないユダヤ人。無造作に撃ち、無慈悲に殺す。ところが一人のメイドと接して「?」と思う。何かが違う。が、何が違うかわからない。ゲートは「悪」。かばう気などない。それほど「独裁」と「洗脳」は怖い。


シンドラーがドイツ人でありナチス党員であることにも注目。本作の内容を信じるなら、彼は政治理論ではなく経済理論から党員になった。そう考えると彼の心境の変化も納得。経済的にホロコーストは「損」でしかない。

軍人ゲートは答えを出せなかった。商人シンドラーは答えを出した。その対比が本作の肝のひとつ。ニーソン、ファインズの両優の極上演技の応酬だ。


「金にモノを言わせただけじゃん」と思われるかもしれない。商人シンドラーには、それが最も効率的な解決策なのだろう。彼の評価は、全財産を投じてまでやってのけたことではなかったか。

「あと10人、あと2人…」シンドラーの嗚咽が耳に残るラスト。そこまで観てやっと、本作、長尺にしてまで丁寧さにこだわったことが伝わった。



hiroでした。