WOWOW鑑賞


歩くとヒトはシンプルになる
ロング・トレイル!
 
監督:ケン・クワピス/原作:ビル・ブライソン/脚本:リック・カーブ/ビル・ホールダーマン/音楽:ネイサン・ラーソン
出演:ロバート・レッドフォード/ニック・ノルティ/クリステン・シャール/メアリー・スティーンバージェン/エマ・トンプソン
 
売れっ子紀行作家のビル(ロバート・レッドフォード)は老境の域に入り、周囲からは引退も勧められている。作家に引退はないと言い切るビルは全長3500キロに及ぶロング・トレイルに挑戦しようと思いたつが、妻(エマ・トンプソン)から危険だから一人では行かせられないと言われる。旅の道連れを探すなか、ただ一人誘いに応じたのは40年前にケンカ別れしたまま会っていなかったカッツ(ニック・ノルティ)だった。
 

 

今だからできる役を演じたレッドフォードが素敵すぎる。

 

ロング・トレイルとは山間や森林の道を数千キロ、ひたすら歩くこと。距離によっては数か月に及ぶこともある。「わたしに会うまでの1600キロ」が記憶に新しい。本作は、作家ビル・ブライソンの紀行文を原作に、レッドフォード、ノルティの70代バディが歩く。


レッドフォードは歳とってなお、いや歳とってからチャレンジング。悪役やったり、ベテランキャスターやったり、主人公のおじいちゃんやったり、ヨットで遭難したり…。色香漂う2枚目スターが今だからできる役に貪欲だ。



スピリチュアル作品なのかと思ったら、とても楽しい珍道中。インテリイケメンジジイの相棒が元アル中メタボジジイのノルティ。歩くのが本気で辛そうでリアル。美男と野獣バディ、というだけで頰が緩む。

人と接するのが苦手な作家はほんの少し上から目線。アル中メタボも無邪気そうで何かを抱えている。そんな老人二人の共通点が「虚栄心」。誰だってかっこ悪いところは見られたくない。


ホンネをぶつけながら、互いの知らなかった部分に気付いていく。虚栄心の殻が剥がれ落ちる様はセオリーどおりではある。ただ「歩くだけ」でそれが自然になされるのが本作のキモ。

妻役トンプソンが贅沢だと思った…が、ラストの抱擁ですべて持っていった。クリステン・シャール演じるおしゃべり山ガールも効果的なスパイス。


「わたしに会うまでの〜」がツボだった。そして本作…やはり好き。歩くだけ。熊に遭遇したり、コワモテに追われたり、などちょっとした事件は小ネタ。ただ、歩くだけ、だ。

歩く。疲れる。するとヒトはシンプルになっていく。笑う、怒る、泣く…感情表現もシンプルになる。未体験のロング・トレイルにとても魅力を感じている。が、時間がない。残念。



hiroでした。