21本目(4月10日鑑賞)


オンナダカラ時代が動いた
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ペンタゴン・ペーパーズ
最高機密文書
 
監督:スティーヴン・スピルバーグ/脚本:リズ・ハンナ/ジョシュ・シンガー/音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:メリル・ストリープ/トム・ハンクス/サラ・ポールソン/ボブ・オデンカーク/トレイシー・レッツ/ブラッドリー・ウィットフォード/アリソン・ブリー/ブルース・グリーンウッド/マシュー・リス
 
1971年、ベトナムの戦況が膠着するなか、ニューヨークタイムズがスクープを打つ。それは、政府が敗戦濃厚であるという分析を隠蔽し、兵を送り続けていたことを示す文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を入手したという記事だった。政府に新聞の差し止めを要求されたタイムズは窮地に陥る。そんななか中堅新聞ワシントンポストの主幹ブラッドリー(トム・ハンクス)は次長バグディキアン(ボブ・オデンカーク)から文書を入手したとの報告を得て、社主キャサリン(メリル・ストリープ)に記事の掲載を迫る。
 
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冒頭から、いろんな組織のいろんな人物が矢継ぎ早に登場。やっば!難しい系ってヤツ⁉︎…と警戒したが、心配無用。例のブツ手に入れちゃったけど載せようかどうしようか、の駆け引きが本筋。至ってシンプル。

人物を絞ってそこに集約させたのはスピルバーグの手腕。わかりやすい。ちゃんとエンタメ作品になっているのだからさすが。

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オトコくさいブラッドリーに手綱を預ける手はあった。それでも硬派な社会派サスペンスの名作に連ねることはできた。ところが巨匠はそうしない。キャサリンという中年女子をセンターに置いた。

夫が他界するまでは普通の主婦だったオンナが社主に就き、社運を左右する決断を迫られる。オンナにはオンナの理論がある。ブラッドリーの妻君(サラ・ポールソン)が絶妙の合いの手を挟む。この阿吽、脚本リズ・ハンナの技あり。

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ということで、本作主演は間違いなくメリル姐さん。オスカーノミネートが功労枠でないことが一目瞭然。W主演のトム兄さんがとても若い。動きが。伊達に髪の毛フサフサなわけではない。

おでん掻っ込む…失敬オデンカークさんのアップがよい。邦画の傑作「クライマーズ・ハイ」に似た空気のなかで堺雅人の役回り。トレイシー・レッツの壁の厚さに脱帽。ブルース・グリーンウッドの役人ぶりにハマる。

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大手新聞社初の女性社主キャサリン。オンナダカラと扱われた時代。その肩書きでありながらサロンの政談にも入れないのが象徴的。ところがその時代が転換期を迎える。ニクソンの悪政にベトナム出兵に国民が否を主張し始めた。

最愛の夫や息子を戦地へ送られたオンナたちも声を上げる。ニクソンの敵、ジャーナリズムへの期待が膨らむ。その先頭にいたのがオンナダカラなおさらだ。裁判所から出てきたキャサリンを囲むオンナたちの歓喜が目に焼きつく。

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「クライマーズ・ハイ」の名を出した。夜中でも人がいて、インクの匂いが漂う(気がする)空気が好きだ。活版を組む工程には心和み、「ラン」の指示に熱くなった。ラストの印刷所シーンには冷めやらぬ「熱」がある。

「権力を見張らなくてはならない。我々がその任を負わなければ誰がやる?」
「新聞記事について夫はこう言った。“歴史書の最初の草稿だ”と」
「報道機関は国民に仕えるものであり、政権や政治家に仕えるものではない」
「いつも完璧じゃなくても最高の記事を目指す。それが仕事でしょ?」
…金言の数々はスクリーンで。



hiroでした。
 
 
 
脚本9 映像8 音響8 配役9 音楽8
42/50