13本目(3月1日鑑賞)


主人公のなかの女と少女
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シェイプ・オブ・ウォーター
 
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ/脚本:ヴァネッサ・テイラー/音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:サリー・ホーキンス/マイケル・シャノン/リチャード・ジェンキンス/マイケル・スタールバーグ/ダグ・ジョーンズ/オクタヴィア・スペンサー
 
冷戦下のアメリカ。孤児として育ち、声を持たないイライザ(サリー・ホーキンス)は、政府の研究施設で掃除の仕事をしていた。ある日、謎の水中生物(ダグ・ジョーンズ)の収容に出くわし、偶然その姿を目にする。人間のような手足を持ち、魚の生態を備える彼に魅了されたイライザは、時間を見つけては彼に会いにいくようになる。一方、研究が進まずに焦燥する責任者ストリックランド(マイケル・シャノン)は彼を解剖するようボスに提案する。
 
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怪獣王デルトロの新・代名詞作品か。

異種間交流である。大人向け「E.T.」の趣き。「シザーハンズ」とも近い空気のおとぎ話。孤独な二人が障壁を乗り越え引き寄せあうラブストーリー。

デスプラの音楽がレコードや映画のダンスシーンとリンク。時代感をムーディーに醸す。雨、水。湿った色合いは水中の浮遊感を演出し、我々の緊張を解きほぐす。

主人公の純な思いが胸を打つ。これは幅広い層に共感を生むパターン。「シェイプ・オブ・ウォーターのデルトロ」と呼ばれる日も近いかも。

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もう少し突っ込むと、これ、絵面以上に性的な話に思えた。イライザがもつ「女」と「少女」が鍵。

他人とのコミュニケーションが苦手なイライザ。少ない友人でも満たせないのは「性」。日課の自慰はその象徴大人の「女」だから不思議はない。

ありのままの自分を見てくれる「彼」。「守りたい」が「愛」に変わる。「初恋」に近い感覚。イライザのなかにある「少女」だ。

「女」と「少女」が同居するイライザだから「彼」との関係は成立する。ラブストーリーだけど、生々しい愛。ヤングアダルトのコイバナとは違うところ。

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サリーは不思議な魅力。パディントンのママが少女のようなみずみずしさ。オクタヴィア・スペンサーの助演が神がかってきた。「ドリーム」となんとなく似た役(笑)。

リチャード・ジェンキンスの髪の毛ネタは爆笑。彼の立ち位置、意外と難役。マイケル・シャノンは何事でしょ。中間管理職のドSっぷりが半端ない。素顔なしのダグ。シャンとしてて姿勢が良い。

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性描写そのものは数えるほど。純愛ファンタジーとして観るとR指定は過敏反応。ところが「性」まで考えるとR指定も納得。本作、うまいのは「純愛ファンタジー」でも「大人の恋愛」でも十二分に楽しめるということ。

「純」と「性」…このふたつ案外近いものだと思う。

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「水の形」は様々で常に変化している。同じように「愛の形」も様々。もっと俯瞰で見ると「人の形」も様々ということか。



hiroでした。
アカデミー作品賞始め4部門受賞
おめでとうございます。



脚本9 映像8 音響7 配役8 音楽8
40/50