99本目(12月16日鑑賞)FP③
闘い方にもお国柄
監督:ミック・ジャクソン/脚本:デヴィッド・ヘア/音楽:ハワード・ショア/原作:デボラ・E・リップシュタット
出演:レイチェル・ワイズ/トム・ウィルキンソン/ティモシー・スポール/アンドリュー・スコット/ジャック・ロウデン/カレン・ピストリアス/アレックス・ジェニングス
ユダヤ人をルーツに持つデボラ(レイチェル・ワイズ)は「ホロコーストの真実」を著した米国の歴史学者。彼女の講演会に紛れ込み騒ぎを起こしたホロコースト否定論の英国人アーヴィング(ティモシー・スポール)は、後日、英国王立裁判所でデボラと出版社を相手に名誉毀損の訴えを起こす。デボラはジュリアス(アンドリュー・スコット)、ランプトン(トム・ウィルキンソン)らと訴訟チームを組みアーヴィングと相見える。
またまた驚きの実話。
「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」を観て1961年のアイヒマン裁判を知った。戦後15年経ってホロコーストの有無を論争していたことに驚いた。本作のアーヴィング訴訟も実話。それも戦後55年の2000年、最近の話だ。
ホロコーストは事実…が定説。ところが現代でもホロコーストを否定する人がいる。ネオナチだってフィクションではないのだし。その辺は「帰ってきたヒトラー」に教えてもらった。
裁判制度の違いがポイント。米国では原告に立証責任があり、英国では被告に立証責任がある。デボラたちは、ホロコーストがあったことから再度立証しなければならない、という難題。
米国流のデボラと英国流の弁護団。双方の主張が淘汰され、ひとつのチームが形成されていく。勝利に向けて団結していく様はエンタメの高揚感だ。
「ボディガード」のジャクソン監督。その後はドキュメンタリーを多く手がけたらしく、実話モノは手慣れたもの。自身ユダヤの血を持つレイチェルは何度もデボラ本人と会い、取材を重ねたらしい。
知的悪役が多いスコットは主人公の相棒ジュリアス役。ウィルキンソンの存在感も重厚で頼もしい。スポールは小悪党がホントに似合う。ジュリアスの助手役ジャック・ロウデンの名に聞き覚え。「ダンケルク」のパイロットだった。
この裁判、恥ずかしながら記憶にないが、世間の耳目を集めたらしい。本人の著書を原案としているためデボラ寄りながら、注目された裁判を綿密な調査で映像化した手腕はさすが。
ただし、アーヴィングの論拠が弱く、彼の悲喜劇のようにも見える。判決も、そこまでの議論の意味を薄くした印象。裁判劇であり、勝訴までのドラマ。「ホロコーストの真実」を声高に叫ぶ硬派な作品とは違った。
hiroでした。
hiroの世界史知識は映画でできている(笑)
脚本8 映像7 音響7 配役7 美術7
36/50