53本目(7月3日鑑賞)
人の光と陰はいつの時代も
忍びの国
監督:中村義洋/原作・脚本:和田竜/音楽:高見優
出演:大野智/鈴木亮平/伊勢谷友介/石原さとみ/知念侑李/マキタスポーツ/立川談春/きたろう/でんでん/平祐奈/満島真之介/上田耕一/小松利昌/芦川誠/國村隼/山崎努
領主を持たない忍びの国・伊賀。傭兵として武将に雇われるのが常の彼らに、天下統一をもくろむ織田信長の影が忍び寄る。信長の実子信雄(知念侑李)を婿に入れ織田方となった隣国伊勢の北畠家に使いを出した忍び衆だったが、使者平兵衛(鈴木亮平)が裏切り、伊賀攻めの策を建言する。刻々と戦へと向かう時流は、伊賀一の忍び無門(大野智)らも巻き込んでいく。
実はこれ、結構ブラックでなかなか怖い。NARUTOの躍動も忍たまの楽しさも、どこにもない。
本題前に忍者について考察。定義するなら、諜報・殺傷能力に長けた特殊技能集団で、労使契約によって稼働する、いわば傭兵部隊といったところ。正規部隊でない彼らは人ではなく物。人でなし、虎狼の輩と言われ、何代にもわたって存続。いつしか人としての尊厳は不要なものになったのではないか。
そんな前提での鑑賞を推奨。
彼らの「命」が笑えるほどに軽い。仲間や家族の死を笑う。可笑しい。おかしい。なので怖い。死生観がまるで違う。「のぼうの城」の和田竜が綿密に調べ考察したリアルだ。
主人公無門もそうした世界で生きてきた。それが普通。いや普通じゃないと気付いたのが平兵衛。この二人と北畠の武将日置大膳(伊勢谷友介)を中心に死生観を問う造り。大野くんの飄々とした演技にほのぼのコメディを観てる気にさせられるが、実のテーマは人の闇だ。
さらにラストに中村監督のしかけ。現代人への痛烈なメッセージ…いや、平手打ちではないか。監督、何か怒っているのですか?
大野くんは初めてスクリーンで拝見。キャスティングの妙。石原さとみは好調持続。変幻自在の亮平くん、今回は「凄み」。無門と平兵衛とのコントラストは本作のキモ。伊勢谷くんは得意分野の役どころ。
満島真之介、國村隼、平祐奈も与えられた役を見事にこなし、マキタスポーツが出色で、立川談春、きたろう、でんでん、小松利昌が期待通りの働き。中村組の常連さん山崎努、上田耕一、芦川誠がいて安心。一人だけ、力不足な子がいたなぁ。
コメディ・レベルの笑いは暖かい光。虎狼の輩の非人情は内包する影。太陽と月、人の二面性だ。毛色はまったく違えども、中村監督の伊坂作品に見られた構造かと。
…などと小難しいこと書いたけど、エンタメ歴史アクションとしても楽しめる。アイドル映画? そんなんどっちだっていいじゃんね。線引きは観る人が決めること。
hiroでした。
脚本8 映像6 音響7 配役8 音楽7
36/50