HDD鑑賞

 
モノクロ画のセンスはやはり市川崑
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ビルマの竪琴
 
監督:市川崑/原作:竹山道雄/脚本:和田夏十/音楽:伊福部昭
出演:安井昌二/三國連太郎/浜村純/内藤武敏/西村晃/春日俊二/三橋達也/北林谷栄
 
1945年、ビルマ。連合軍の上陸により劣勢に立たされた日本軍は、山岳地帯の逃走を続けていた。井上隊もそのひとつだったが、音楽好きな隊長(三國連太郎)の下、水島上等兵(安井昌二)の竪琴を伴奏に歌を歌っては折れそうな心を支えていた。山間の村で包囲され、英国軍に投降した井上隊は、そこで終戦を知る。捕虜収容所でのある日、抵抗の激しい日本部隊の説得を英国軍に命じられた水島。しかし、説得は失敗し部隊は全滅。その日以来、水島は姿を消してしまう。
 
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竹山道雄の児童文学が原作。1985年版も未見で、全くの初。たぶん、若い時に観ていてもわからんかった。今だから水島の気持ち、わかる気がする。これがわかる児童はすごい。hiroは児童以下です。
 
目の前に夥しい死体の山。命じられてこの地に来て、やったことはただの殺し合い。目の前にあるのはその結果。
 
助かって良かった…ではない。戦争の不条理を知り、自分が生き延びた意味を考えるのですね、水島は。

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日本に帰れることを喜ぶ戦友たち。彼らの反応は正しい。水島の持つピュアさは、彼らのそれとも異質。
 
劇中、水島の個人的な背景は語られません。妻子がいたのか、両親は健在なのか。戦場の亡霊か精霊の類なのかとさえ思えてきます。

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終戦から11年の1956年作品。苦難の時代のこのスパンで原作が書かれ、映像化されたのに驚愕。なんらかの宣伝要素が仕込まれていたのでしょうか。英国軍含めていい人しか出てこないのは、そんな配慮でしょうか。
 
市川崑といえば「犬神家の一族」。光と影、計算されたカット割り、フラッシュバック編集。画の色と美しさが際立ってました。モノクロであっても、光と影の強烈なコントラストは後年のそれと同じ。巨匠の巨匠たる所以を垣間見ました。

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主演の安井さんは存じ上げず、調べました。本作が出世作らしく、その後、実娘と共演したテレビドラマでお茶の間にも進出。昨年、85歳で亡くなられているようです。三國さんの若い頃の作品は初。ご子息そっくりです。浜村純さん、西村晃さん等、劇団系の方々多数出演。北林谷栄さん、紅一点、目立っており、出てくると目が離せませんでした。
 
当初、本作は2部構成だったよう。日活のドタバタで総集編も同時に公開される失態(現存しているのはこの総集編らしい)。このトラブルで日活を飛び出した市川崑。1985年、東宝で自身でリメイクしたのは、けじめだったのでしょうか。85年版も観るべきなんでしょうね。
 
Home Home Sweet home
There’s no place like home
Oh there is no place like home
「埴生の宿」、これで有名だったのですね。英語詩もしっくりきますね。
 
 
 
 
hiroでした。