DVDで。
僕と妻の1778の物語
テレビドラマ「僕の生きる道」シリーズのスタッフが制作。作家・眉村卓が妻のがん発覚から死を迎えるまで、1日1話の短編小説を書き続けた実話を映像化している。
あらすじもなにもない。上に書いた通り。死に向かう妻に対して何もしてやれないもどかしさと、「笑い」ががんに対する免疫力を高めるという医師の言葉。小説家としてできることは、「妻が笑ってくれる小説を書くこと」だけ。そんな理由で書き始める短編小説。「本にするつもりで書いて」という妻の言葉に、ペンと原稿用紙を武器に病気と戦い続ける日々。
担当医役の大杉連さんもこのチームの常連
この作品をリードするのは紛れもなく妻の竹内結子さん。確実な演技力もさることながら、キャラクター設定が凄すぎる。抗がん剤治療が始まってもふつうに生活している前半部分。特に何の説明もなかったが、そうとう無理しているはず。なのに、洗濯も料理もこなしちゃう。何もできないあげく「じゃあ小説を書く」とのんきに語る夫を許す寛容さ。できるもんじゃあない。第1話を読み、「これじゃエッセイ」と批判し、「本にするつもりで書いて」と叱咤激励するあたりは、「やるなら真剣にやれ」というメッセージなんだろうか。
こんな嫁さんいいな、と思うなかれ。こんな嫁に巡り合えるなんて、どれだけ確率が低いことか。実話なんですよね。眉村さんは幸せだったんじゃないかと思います。
はかなげに美しくなっていきます
そして核になるのは草薙剛くん。この人、ホントわからない。たぶん演技はうまくない。この作品でも台詞回しは素人っぽく、そこら辺にいる人と変わらない。ドラマとかみていてもそう。だから似たような役ばかり回ってくる。ただ、不思議とそうゆう役が必要なドラマなり映画なりが存在して、そこに彼を当てはめるとピタリとはまってしまう。素人を演じているのだからこそ、彼の素人っぽさが必要とされる。
この作品でもそう。主人公は彼しか考えられない。繰り返す。たぶん演技はうまくない。でも、これを計算してやっているとしたら…草薙剛は怪物も知れない。怪物君は大野くんだが。
この作品、感動ドラマです。言われなくても知ってますよね。ただ、主人公がSF作家で、物語の中で小説を書くのです、妄想しながら。その妄想が、SFなもんだから面白い。宇宙人のくだりは、さすが小日向文世、とうならせられる。小日向さんも常連さんですね。でもって主人公がロボット好き。しかもブリキのおもちゃ系の。妄想の中でもロボットが大活躍。その造形もまた見所。笑える。で、後半の悲劇がより感慨深いものになる。
これは知識屋というお話のロボット
原案となった眉村卓の短編小説集を読んだ。さすがに抜粋。1778編全部は入っていません。当然「最終回」も知っているはずだが、ドラマの進行を追っているうちに、すっかり忘れていた。妻が死に、「最終回」の原稿に向かいペンを滑らせた時点で、最終回のその感動の内容を思い出した。泣けた。不用意だった。
おそらく、思いのほか、いい作品だと思う。ジャニ映画嫌いな人でも楽しめると思う。
「結局は死んじゃうんじゃん」
そのとおり。でも、こういう時代だから、死に方は美しくありたい。
死に方を考えることは、生き方を考えることでもある。
そう思いません?
hiroでした。