IcaからNascaまではバスで2時間ほどで、3.5ソリだった。 
バス停で何人かの客引きが声をかけてきたが、全て無視し目的のホステルYemayaに行く。 
チェックインをしていると、ツアーエージェントが来てナスカの地上絵のツアーを薦めて来た。 
15人乗りの飛行機で35ドルで、でも全部は見れない。55ドル出してくれれば、5人乗りの飛行機で全ての絵を見れると言った。じゃあ、それで良いよと僕は言った。人生で最後のチャンスだから全部見れた方が良い。 
ホステルは、25ソリだった。 
それらの話しを通訳してくれたのが、ホステルのオーナーの娘で、アメリカの大学で勉強しているが、今休みで戻ってきているという綺麗な女性だった。 
彼女は、自分はアメリカ人だと言った。 
両親のオーナーは、ペルー人だ。だが、彼女はアメリカで生まれアメリカの学校で教育を受け、休みには手伝いに戻ってきているとのことだ。なんだか、ペルーの社会が少しわかったような気がした。フジモリを悪く言うやつは多い。彼は巨額の富を横領していたと。じゃあ、今の政府はどうだと質問すると、笑いながら、今の政府も変わらないとみんな言う。ペルーが嫌いかと言うと、そうではなく、ペルーに誇りを持っている。ただ、はなっから政府を信用していないのだ。だから、娘をアメリカで産み、アメリカの国籍を取らせた。 
彼女は、綺麗で性格もよく。Nascaの町の情報をいろいろ教えてくれた。美味しいフルーツジュースの店やピザ屋。日本語が打てそうなインターネットカフェ等等。 
Arequipaに行くのに一番安全なバス会社を聞くとCruzDelSurだと教えてくれた。ツーリストにもっともポピュラーなバス会社だそうだ。 

チケットを買いにCruzDelSurのオフィスに行く。 
ただの座席のエコノミーで45ソリ、リクライニング席で足のリクライニングやトイレも付いてるビジネスで75ソリ、ベッド式のファーストクラスで105ソリだと説明される。 
じゃあ、ビジネスで良いと明日の11時発のチケットを買った。ビジネスクラスにツーリストが一番多いと思ったからだ。Limaでアメリカ人の女性に笑われたが、僕はまだハイジャックを恐れていた。木を隠すなら森の中に、人を隠すなら人民の中へ。ハイジャックにあっても、周りがツーリストだらけなら、僕の持ち金を奪われる可能性が低くなる。そう思ったのだ。 

インターネットカフェに行き、みんなにメールを送る。 
その後、町をぶらぶらしているとIslasBallestasのツアーで一緒だったスペイン・ザ・ジョンレノがベンチで本を読んでいた。 
「よう!」と声をかける。 
彼は昨夜着いて、それから地上絵のツアーを探し、一番安い35ドルの飛行機で今朝見てきて、この町はすることがないので、9時発のバスまで本を読んで過ごすことにしたと言った。 
「35ドルのやつって、15人乗りだろ?」 
「15人乗りだったけど、俺はそれで十分だった」と彼は言った。9時のバスで彼はArequipaに行くというので、じゃあまた、Arequipaで会うかもねと別れた。 
夕飯は、ホステルの女性の薦めた店ではなく、ピスコサワーをただで付けてくれると言った店で摂った。 
ピスコサワーは、甘くさわやかで気候によく合っていた。だがアルコールが強く、飲んでいるだけで楽しい気分になる。たぶん、これで女性を酔わせて口説くのがペルーのやり方なのだと思った。 
帰りにスーパーでビールを買い、ホステルの屋上で町を見ながら飲んだ。決して楽しい夜じゃない。話し相手もいない孤独な夜だ。でも、こういう夜も嫌いじゃないと思いながらビールを飲んだ。

 

朝5時半に目を覚まし、シャワーを浴びてから下のロビーに行く。何か軽く食事がしたいから店を教えて欲しいと頼むと、飛行機は揺れるから何も食べないずに戻ってきてから食事をした方が良いと言われた。しょうがないのでコーラを買い、部屋で日記を書く。 
7時半に階段を下りていくとエージェントがすでに待っていた。 
「あれ?8時の約束だよね?」 
「もうみんなが集まったから行こう」とエージェントは言った。 
バスに乗り込むと白人のカップルと白人男性と南米系の女性のカップルがすでに乗り込んでいた。 
10分ほど走った空港で小さな飛行機に乗り、ナスカの地上絵を見る。たいしたことないなと思った。どうやって書いたのかはなぞとされているようだが、なんだか100人くらい指揮できる身分なら、僕でも書けそうな気がした。どうやって描くかを頭の中でまとめる。エジプト人がピラミッドの高さを測ったやり方を採用することにした。 
そんなことを考えながらナスカの地上絵を見ていたのだが、他の4人の乗客に比べ、僕のノリが悪かったからかもしれないが、「あれが、地上絵だ」と何度も指差し言われた。その度に僕は「わかってる」と言わなければならず、少しパイロットがうざかった。しかもポイントからポイントに移る時、地上絵の地図を取り出し、ハンドルから手を離し指差し「次はここに行く」とか説明するたびに飛行機が揺れたのも不愉快で、全然楽しい気分になれなかった。

なんだかなぁという感じだった。