ストッカー | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。




うちの夫の中には、確実におばちゃんがひとり住んでいる。
多分、関西圏のおばちゃんである。


食材は、安けりゃ安いほうがいい。
豆腐は、充填豆腐がいちばん。
「○個セットでお買い得」「すごい値引き」に大変弱い。
値切れるところなら、確実に値切る。
「ゴネ得」も大得意である。

だから、
必要最小限しか買いたくない代わりに
ちょっと高くてもこだわりのあるもんがいい、
という私とはいつも反駁する。


夫曰く「そんな高いもの無駄使いだ」らしいが、
私から言わせると使わないのに得だからという
理由だけで安いものをどっさり買う方が無駄だなあと思う。


そんな夫のいちばん理解しがたい習性は「ストック」だ。


旅行ではアメニティをがっさり持って帰る。
なので国内外のありとあらゆるアメニティがうちに溢れている。

テイクアウトのお店に行けば、調味料をぐわっと持って帰る。
気づくと冷蔵庫には松屋のバーベキューソースやら
持ち帰り寿司につく醤油やらハンバーガーショップの
ケチャップ&マスタードやらの小袋がガンガン詰め込まれる。

レストランで出る袋入りのお手ふきも必ず余分をもらって持って帰る。
それが台所のそこかしこにひっそり装備されている。


これ、使うならまだ理解できる。

夫の場合、これらはほとんど使うことがない。


使わないのに次にまた持って帰るので、
家にはストックがたまる一方なのである。

「そんなことない、お手ふきとか使ってる!
 お前だってあんときあってよかっただろ?」
と反論するんだけど、それはごくたまにであって、
大抵は取っておきすぎて、お手ふきはカピカピに乾燥しているのだ。

アメニティに至っては、旅先に持っていったところを
1度も見たことがない。


うちには醤油もケチャップもシャンプーも洗顔料もカミソリもちゃんとある。
なのに何のためにわざわざストックを増やし続け、
しかもそれを使おうとしないのかがさっぱり分からなかったが


彼にとってはこの「ストックする」という行為自体が快楽なのだ


ということに思い至ってやっと腑に落ちた。


小さな「タダでもらえるもの」を機会逃がさずたくさんもらえた。
家に置いておこう。なんか得した気分。
これで当分はわざわざ買わなくても安心だぜ!

そんなささやかな喜びにひたるのが楽しいだけなのだ。



わたしは夫には内緒で定期的に古そうなものをがんがん処分している。
だからいくらストックしても、彼の所持する総量は増えていない。
むしろ、微妙に減っている。

でも、それでいいだろう。
「持って帰る」、それ自体が目的で
量を増やすことは重要ではないはずだから。


ストック


しかし目を離すと1日でこのくらいがすぐ
「こんにちは」とやってくるんだよなあ