若い頃から四国遍路に行きたいと思っていた。日常を離れ、何かを求め、多くの人々が巡礼する四国遍路に憧れをいだいていた。そこには旅の原点があるのではないかと思っている。私は仏教徒なのかと問われれば、そうですと言えるほどの信仰心はないのだけれど、年齢を重ねるうちに、仏教への関心が大きくなってきた。仏教が日本の歴史や文化、芸術に多大な影響を及ぼしていることも暮らしの中で意識するようになった。仏事が増えてきたことも影響があるだろう。

 

それでも四国は遠い。コロナ19もあり地域を跨いでの移動は気が引ける。時間もあるようでない。そこで秩父に三十四カ所の観音霊場めぐりがあることは知っていたので、まずは家から近い秩父へ行こうと思い立った。

 

5月14日金曜日晴れ。セローで秩父へ出発。なじみの成木街道、正丸峠を走れば約1時間であしがくぼ道の駅に到着する。ここで、一番札所四萬部寺への道をマップルで確認した。まずは四萬部寺で納経帖を入手したいと思っていた。

 

道の駅から10分も走ると四萬部寺の駐車場に到着。街道沿いには秩父霊場めぐりの看板が設置されているのでありがたい。それにしても秩父の街はどこか昔なつかしい感じがする。

 

四萬部寺には札所の中に巡礼するための杖や納経帖などが用意されていて、僕はその中で、秩父でしか手に入らないと勧められた納経帖を選んで御朱印をいただいた。また34カ所のお寺の地図が書かれてあるパンフレットもいただき二番真福寺への行き方も丁寧に教えていただいた。

外へ出て境内を散策する。鳥が鳴き汗がでる季節だ。観音堂は樹木を背に、石灯籠、鐘楼も全てが調和して美しい。

 

四萬部寺の名の由来は、播磨の性空上人から秩父に行き布教するように命ぜられた、弟子の幻通が、四万部の仏典を読経して経塚を築いたとことによる。納経帖の裏ページにはそれぞれのお寺の御詠歌が記されている。

 

ありがたや 一巻きならぬ法のはな 数は四萬部の寺にいにしえ

 

秩父観音めぐりは、室町時代に始まり、その歴史は古い。江戸時代には観音信仰は庶民の心の支えとして流布し隆盛を極めるようになったと言う。そしてそれから数百年経った今日も数名の人たちが同じように巡礼しているのだった。