最近セローで近場を散歩がてら走るのが楽しい。早朝から夜遅くまで遠くを走っていた頃が懐かしい。この日は檜原村から奥多摩へ続く「鋸山林道」を走ろうと出発した。檜原街道を西に走り、T字路を右折して山間の道を行く。途中、神戸岩(かのといわ)方面へ右折するのだが、通り過ぎてしまった。「小河内峠は奥多摩方面へは行けなません」という看板が出てきたので引き返す。
今度は鋸山林道の曲がり角を見つけて左折。渓流沿いを走るとキャンプ場や、マス釣り場がある。神戸岩も過ぎ、トンネルをぬけるとまたしても行き止まる。鋸山林道通行止めの柵が道路をふさぐ。
やはり林道は行き止まりが多いな。行き止まりにも慣れてしまった。神戸岩ですこし休憩して奥多摩周遊道路を走って帰ることにした。
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奥多摩周遊道路は走り屋さんが大好きなワインディング道路。僕は遅い車の後ろをゆっくり着いて走るだけだけれど、パワーのあるバイクだったらやっぱり少しエンジンを回してるだろうな、などと思う。
ところが、奥多摩側の入り口付近ではバイクの事故に遭遇。数台のバイクが停まっていて、路肩には負傷したライダーが倒れている。通りがかりのライダーなのか、ツーリング仲間かわからないが十名近い人たちが道路の交通整理なども行っていた。しばらく行くと、救急車とパトカー、消防車までがサイレンを鳴らして奥多摩方面から向かってきてすれ違う。
長い間ツーリングをしていると、このようなバイク事故にも遭遇することは珍しくない。ちょっとした不注意から命取りになることもある。バイクライフの魅力と魔力は紙一重なのだと思う瞬間。無理をしてはいけない。普通に走っていても、もらい事故があるのだから。
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アフリカツインに乗っていた頃の話をしよう。
福井県、永平寺に向かっている昼下がり、もうすこしで永平寺に着くという美濃街道あたりのファミレスのこと。僕は遅い昼食を取っていると杖をついた老人が隣に座った。すると老人が「ソロツーリングですか?」と話しかけてきた。返事をしてその老人をよく見たらその人は、老人ではなかった。足を負傷した30代くらいの人だった。
「峠道のコーナーをバイクでバンクしていたら、対向車線をはみ出して車が走ってきた。なんとか避けようとしたけれど避けきれずに当たってしまい、バイクもろとも倒れた。病院で手術を受けてようやく杖をついて歩けるようになった。今でもバイクに乗りたいと思うけれどギア付きは無理かな。友達はX-ADVでも乗れば良いというけれど、どうだろう。楽しいツーリング中に、話しかけてすみませんでした。でも気をつけて。」
そんな会話したのを覚えている。
その人は退院したばかりのようで、誰かに話さずにはいられなかったのだろう。これは僕の頭の奥底で苦い思い出として残っている。
バイクツーリングは多くの発見と、多くの喜び、感動を与えてくれる。そしてその全てを楽しい思い出にするために安全過ぎるくらいに安全に運転することが、とても大切なのだと教えてくれたのだ。
2021年5月8日(土曜日)