14世期ヨーロッパの人口の約四割を死にいたらしめた黒死病。当時、黒死病が領主、農民、貴族、キリスト教にあたえた影響について考察されている他、ユダヤ人が井戸に病原菌を投げ入れたとの根も葉もない疑いをかけられた上に拷問を受け虐殺されたことなども記載されている。現在の新型コロナウィルスの蔓延に対するなんらかの対応のヒントがあるかと思い、手に取ったが黒死病が歴史に与えた影響とその当時の人々に与えた影響についての論文である。
ただ訳者のひとりである久保儀明氏は新型コロナウィルスのパンデミックについて、後書きに次のように書いているのが興味深い。感染症を防ぐ為にはある程度個人の権利が制限されるのは止むを得ない。個人の権利には応分の責任と義務が伴うと。コロナ特措法改正案も止む無しと思っている私にとっては同感するところである。また昨今のマイナンバーカードの普及に対して、個人情報保護の観点から不信感を煽るような風潮についても、賛成派のコメンテーターと疫病防衛の観点から議論する風土が必要と思うのだ。
