こんにちは。
昨日、「肺野末梢小型の微小浸潤肺腺がん」ということで投稿してしました。
これを読むと、
じゃあ、A/Bが0.25よりもさらに大きかったらどうなるの?
と考えるのは人間として、というか肺腺がんで今現在悩んでおられる方には自然に湧き出る疑問ですよね。
このような結果についても、医学界の最も信頼できる、というか最高峰の学術雑誌に最近研究結果が報告されていましたので、その論文を物理が専門ですが、私なりに読んでまとめた内容です。
ただ、先日のざっくりとした統計でなく、これだけ詳細に条件を示してくれると、自分の状況に照らし合わせて考えることも可能ですよね。
実際、私の場合は日本人を対象とした、しかもごく最近。さらに言うと、偶然にも私のために研究してくれたのか?というような研究内容の結果で自分の未来を随分と見通せるようになりました。
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肺野末梢小型の非小細胞肺がんの手術における区域切除の妥当性に関して大々的な研究を行って得られた成果についてまとめられた論文
THe Lancet, Vol.399, Issue 10335, pp. 1607-1617
の概要について,素人でしかも専門分野も完全に異なりますが,私なりに理解して要点をまとめた結果について述べます.
ちなみに医学分野の英語の学術論文のため,
出てくる専門用語は私がいつも使う物理のものとは全く違うため,解釈に少し誤りがあるかもしれませんが,大筋は間違いないと思います.
初期の肺野末梢型肺腺がんで苦しんでいる方たちのご参考に少しでもなれば幸いです.
論文の概要
先ず,この研究では肺野抹消部に非小細胞肺がんを有する肺がん罹患者を対象として選んでいますが,臨床学的に充実成分(Consolidation)のサイズA,腫瘍(Tumor)の長径サイズB(充実成分を含んだすりガラス結節のサイズ)として
B≦20mm かつ CTR=A/B>0. 5
を基本的に満たすこととしています.
選ばれた1100人程の対象者を手術で肺葉切除群と区域切除群に無作為に分配して,どちらの手術がより優位性があるかについて調査しています.
以下で重要な数字について,肺葉切除群と区域切除群を比較して見ていきます.
説明のないものについては表の数字をご覧ください.
なお,数字は見やすいように,
同じ数字のときは黒色,肺葉切除群は緑色,区域切除群は青色としています.
① 調査対象者
- エントリー人数:554人と552人
- 平均年齢(中央値の年齢かも知れません):どちらも67歳
- 最低年齢&最高年齢:35歳&85歳と32歳&83歳
- 70歳以上:どちらも211名
② 臨床学的所見から
*右肺の中葉には2区域しかなく容積も小さく,一般に区域切除は行わないため調査対象からは外されているものと思われます.
併存する基礎疾患については
- 基礎疾患(一つ以上)を有する患者:275人と270人
- 高血圧症:169人と156人
- 糖尿病:49人と56人
- 呼吸器疾患:25人と31人
- 循環器疾患:23人と30人
腫瘍に対する充実成分の比率CTR(=A/B)については、
- 平均の腫瘍径B:どちらも平均16mm(6mm~20mm)
- 0.25<CTR≦0.5:62人と73人
- 0.5<CTR<1:208人と194人
- CTR=1(充実成分のみ):283例と285例(いずれも半数以上)
1名を除いて全てが0.25以上
A/B=1(充実成分のみ)のケースが283例と285例と半数以上.
③ 術後の病理学的所見から
肺がんの種類
- 肺腺がん:501人と502人
- 扁平上皮がん:38人と37人
病理学的分類
T因子 (原発巣のがんの大きさ・広がり)
- T1a:427人と453人
- T1b:51人と35人
- T2a:71人と59人
- T2b:0人と1人
- T3:4人と2人
腫瘍径については,腫瘍最大径20mm以下だけではなく,それ以外の患者さんもかなりいて,全体に占めるT1a以外のその割合は17~19%になります.
N因子 (リンパ節への広がり)
- N0(転移なし):522人と516人
- N1:16人と17人
- N2:15人と17人
原発巣と同じ側にある気管支の周囲や肺門,リンパ節,縦隔へ転移しているケース(N1やN2)が少なからず存在してます.
M因子 (遠隔転移)
区域切除群に1名のみ
病理病期(pIA/pIB/pIIA/pIIB/pIIIA/pIV/不明)
- (455人/64人/15人/3人/16人/1人/1人)と(468人/46人/18人/1人/18人/1人/2人)
④ 結果
- 手術の結果,化学療法の適用となった人数:67人と44人
- 全調査期間中の死亡者数:83人と58人(生存期間の中間値は7.3年)
- 局所再発率:5.4%と10.5%(切除した区域以外の残りの肺葉中に検査に引っかからな芽が残るのでしょうね)
- 5年生存率:91.1%と94.3%
- 5年無再発生存率:87.9%と88%
⑤ まとめ
肺がんの再発率に関してはともに88%程度で差異は無しということです.
ただし,5年生存率で見ると区域切除群の方が明らかに良好で,これは研究対象となった肺がん罹患者の平均年齢(中央値年齢?)がともに67歳という高齢であること.
さらに70歳以上がともに211人もいることを考えると当然の結果のように思います.
もともとの日本人の平均寿命が80数歳であるのに加えて,このような高齢者にとっては肺葉切除はかなり負担が大きかったことが原因の一つとして考えられます.
それでもお亡くなりになられた方の生存期間(中間値)が7.3年というのは医療・薬剤技術の進歩による素晴らしい成果だと思います.
さらにこの結果を見るうえで考慮すべきことは,併存する基礎疾患です.
高血圧症と糖尿病,さらには呼吸器疾患や循環機器疾患をもった患者さんが,どちらの群にも約半数の270人程度います.
このような併存する基礎疾患は生存率を大きく下げる可能性が高いと思います.
また,こういった基礎疾患は60歳以上の高齢者になるほど多いので,高齢者でもこういった基礎疾患のない方や,30代や40代の若い世代の方の生存率は以下の投稿でも述べましたが,5年生存率はこの数字(91.1%と94.3%)よりもかなり高いものと思われます.
また私の予想ですが,
化学療法を行ったときに重要なのは気力(前向きな気持ち)と免疫力,そして体力だと思うので,若い世代ほどその効果はきっと高くなっていると思います.
以上がこの論文を見て私が思ったことですが,また何か気が付いたことがあれば追記させていただきます.
参考として
以下は国立がんセンターのホームページに掲載されていた2010年のデータで,あらゆる肺がん患者を含んでいますが,今回の結果から得られた5年生存率を見た場合,薬剤や手術法の進歩により5年生存率がはるかに向上していることがわかりますね.
肺がんのステージ | 国立がん研究センター 中央病院 (ncc.go.jp)
最後に
ネット上にはがん患者の生存率に関する情報があふれていますが,
それらを見て一喜一憂するのではなく,