赤木智弘さん、「強者女性」に「かわいい!」といわれる。 | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

赤木智弘さん、「強者女性」に「かわいい!」といわれる。

 ここらへん界隈では話題の赤木智弘さんの「ひっぱたきたい 」論文ですが、私がたまに仕事をしている女性誌界隈では、まったく知られていません(まあそりゃそうか)。それに、ここらへん界隈では、赤木さんはあっちこっちで攻撃にあっているようにも見うけられますが、なんか、90年代に「人を殺しては、どうしてダメなんですか」といった少年にびびりまくった左陣営を思い出します。
論文読ませていただくと、単純に「戦争に行かせないでくれー」ともいってるし、ブログを見れば「仕事します!」ともいってるし、まあ「戦争行っちゃうよりは、専業(でも兼業でもいいが)主夫になってもらったほうがいいんでは?もしくは仕事してもらったほうがいいんでは?」と思い、さらに赤川学さんが話してるようなハイパーガミー(上方婚)
の話も対象に向けて書けるし(強者女性自身も悩みどころでもあるのはなんとなくわかってます)、と思いまして、じゃあ「(相対的には数少ない)強者女性ターゲットにモノ申しにいってみなーい?」と赤木さんにお声をかけさせていただきました。

 赤木さんは先月号の「論座」では高原さんに「恫喝だ!」とか言われてましたが、本人は余計頭くるだけだろうと思います。「若者が右傾化している」と言論人たちがよく嘆きますが、言葉で勝負しているなら「彼ひとりくらい納得させて、左傾化させてみたら?」と編集者的には思います。
 以前、紹介したスウェーデンの中学生の教科書にも「うちの国は失業率は他国とくらべて少ないです。でも当の失業している本人にそのようなことをいってもまったく意味はありません。」みたいなこと書いてありましたが、まさに中学生でもわかる常識的に考えて「思いやり」の範疇だと思います。
 それに彼がいってることっていうのはあってます。先の大戦中の求人広告などを見たらわかると思いますが(upしてもいいですが、今スキャナー故障中のためすいません)、たとえば満州のカフェの給料なんて、日本本土よりかなり高めに設定されていました。「夢を抱いて結果的に騙された国民」ではなくて、「貧乏だったから、給料が高いところの就職先」として「軍隊」を選んでしまうのは、浜井先生も指摘してたことです。そこに階層格差として下の人が集まるのは自然な流れでしょう。だからやめさせたいなら、彼を「説教す
ること」ではないし、もしくは「説教されてると思われること」ではないと思うんですけど。
 まあ、赤木さんがブログ上である別のカテゴリーを作って、ほかの弱者をたたいたことについては、本人にも尋ねてみました。「ちょっと感情的になってしまいました」と反省もしてたし、もし今度言ったら、それこそ「ペチッ」と頭を「ひっぱたく」と。それでよいんじゃないの?

 さて、「強者女性」編集者は多少の「恫喝」は、慣れておるのです(いいのか悪いのかはさておき)。
 「なんかねーおもしろい男子がいるのよー。」と編集部で話していたところ、「なになに、今どきの若者に珍しく、元気よろしいじゃないのー。」という反応。というわけで、「アムール特集」で私が恋愛の裏の社会事情を2ページエッセイで書き、赤木さんが「専業主夫になりたいプレゼン」をしてもらうという構成でゴー。

 編集部「強者」女性たちからは「おー、フリーターなのに数字強いじゃん、頭いいじゃん、かわいいー♪ぐっとくるよー」(→いいのか悪いのか 笑)という感想があったり、「ほんとにさー女性誌が煽ってる部分あるよねー」とか反省も出ていたりとなかなかおもしろい反応でした。
 ほかにも尾辻かな子議員や押井守さんのインタビューもありますよ。ただいま発売中です。
http://www.otsuji-k.com/


なんていうのかな、今40歳くらい以降で働いているフリーライター界隈の方々は勇ましいこといって、編集者に「えーと、なんかテープ起こしからやってみる?」って仕事はじめた人も多いし、今活躍してるフリーランスのカメラマンやスタイリストだって、いまいちよくわかんないまま編集部に電話して「○○さんのアシスタントになりたいんですー」っていったら「とりあえず撮影きてみるー?」って紹介されたって人けっこういますよ。まず、人手が足りなかったんですって。仕事として「継続」できるかどうかは本人の才能や努力がもちろんいると思いますけど、赤木さんをさ、例えば「恫喝だ」とか「甘えだー」とか「わかっとらん」とかいえるほど、ご自分たちは品がよろしかったかしら?お勉強してたのかしら?自分ひとりの力で活躍することになったのかしら?って思うのよね。

 彼みたいな人がいたら80年代なら、「なんか、おもしろいじゃん。なんかやらせてみなさいよ!」という社会的視線があったのではないかしら?若人に対してもうちっと余裕があったように思います。それこそ余裕のなさを転化して「若者を無闇に怖がる」社会的文脈にからめとられてるんじゃない?
 というわけで、掲載媒体こちら!
 (うふっ)  媒体コンセプトは「毒のある女」だそうです(笑) フランスの雑誌の日本版でつい先日発売されました。創刊のときに表参道ヒルズにバーンと広告うってましたが、見た人いるかな?


numero

-というわけで私のエッセイ部分から少し抜粋-

 昔なら“おばさん”といわれていた世代にきれいな女性が増えました。メディアで活躍する元アイドルたちを見ていても、例えば、キョンキョンは1966 年生まれだから立派な40 女。キョンキョンと呼び捨てにしている場合ではありませんでした。渡辺真里奈はいつも可愛い格好をしていますが、70 年生まれだからもう37 歳。ほしのあきは30 歳という見た目とのギャップの年齢の高さをウリにしていて、それが人気だったり。とにかく自分の年齢は棚に上げて、他人の年齢を聞くと驚きます。
  先日、友人女性(41 歳未婚、編集者) と話題のビストロでご飯を食べながら「この業界、“化け物”が多いけど、ほんと一般人も“化け物”が増えたよねー、○○ちゃんももう40 歳なんだよねー」と笑っていました。知り合いのヘアメイクさんは読者モデルについて、「最近の若い子の化粧技術たるやプロ顔負けで驚くよー」と言います。
  “化け物”をあえて定義してみれば、40 歳以上の女性で、“いくつか分からないくらい若く見えて、バイタリティもある女性たち”といったところでしょうか。
 
 女性たちは“きれい”になるためにお化粧品やファッションに投資してきたのです。実際に商品も多様化したので、化粧品の機能やメイクの技術も随分向上しました。 そして、女性が変わったのは外見だけではありません。「美しくなりたい」は向上心のひとつです。つまり、こうした向上心を持つ女性の対象は“ 美” だけではありません。おいしいレストランの情報、ワイン、エステ、歌舞伎にフラダンス…などなど。日々、自分磨きに精を出す。例えば、ピラティスに燃えている渡辺真里奈や、マラソンも野菜ソムリエもやっている長谷川理恵。趣味へのあくなき向上心はどこから湧いて出てくるのでしょうか。もちろん、そんな女性ばかりではないでしょうが、男性同様に社会に出て、がむしゃらに働いてきた女性の多くが「せっかく面白くなってきた趣味もやめられないし、生活レベルは落とせない」と言います。自分に投資して、磨きあげた彼女らに釣り合う男性は一体どこにいるのでしょう?

  ちょっとここで落ち着いてみましょう。女性たちはきれいになった、そして物知りにもなった。でも、果たして“強く”なったのでしょうか。参考になる調査があります。総務省の調査では、働く女性の収入は全年齢層で男性より低く、男性より早い40 歳代をピークに下降。さらに厚生労働省の「労働者健康状況調査の概況」では身体的疲労を感じている人は約76 %で、男性よりも多い状況。相体的に見ると、体力、収入ともに男性よりも低いことになります。たしかに、女性は体力や筋力は男性より弱いですし当然といえば当然です。
  生活時間の国際比較でも、日本の働く女性たちの労働時間はアメリカに次いで長い。家事労働においては、日本の男性は他の多くの先進国と比べて約4分の1で「27 分」。突出して短い。ただ、これは男性がさぼっているわけではなくて、男性の労働時間が長いからです。比較した国の中で日本人男性は最も長時間働いています。
  世界一(!)を争うキツイ労働環境の中で、日本女性たちが、頑張ったご褒美にステキな王子様を待ち望む気持ちは分かります。でも、“舌も目も肥えた30 代女性を満足させ、なおかつルックスも好みで、包容力もあって家庭も大事にしてくれる男性”なんて言い出したら、出会いの多い編集の仕事をしている私でさえ、そうそう会ったことがありません。
 
  私が以前会社で働いていたとき、ある同僚の女性が残業しながら「嫁とマッサージチェアが欲しいなー」とふとつぶやきました。みんな「そうだよねー」とか頷いていましたが、でも同時に「やっぱり嫌だ」という空気も漂っていました。今までの価値観なら、仕事をしない彼氏や夫は、「ヒモ」という言葉どおり、彼氏がいてもなんだか敗北感が漂う話。
  でも、ここでため息をつかずに、ちょっと価値転換をしてみてはどうでしょう。先ごろ某大物セクシータレントとバラエティー系タレントの結婚が報道されたとき、知り合いの女性が「えっ!? もっと派手な人と結婚するかと思った!」と驚いていました。でも私には、相手を社会的な立ち位置ではなく、自分の価値観で恋人を選び、そして生きて行こうと決めた彼女の誠実さのように思いました(もしかしたら、したたかさなのかもしれませんが)。先の“つぶやき”に戻りますが、ベターな選択として、「嫁が欲しい」とつぶやいたその言葉どおり「男を養う」という覚悟を持って、恋愛を経て結婚し、長い将来を共に歩み、互いに成長していくのも一案かもしれないですね。女性が出産や育児で助けが欲しいとき、頼もしい男性として活躍しているかもしれません。
 
 キョンキョンだって20 歳年下と付き合う時代。20 代後半の男性たちは男女平等という価値観を普通に身につけて育っている世代でもあるわけですから、「だめんず」ではない可能性も高いはず。それに仕事で実績を積み重ねている女性なら、この男が将来化けるかどうか、「だめんず」かどうかを見抜けるのではないかしら。稼ぎはいいが、口だけ番長のえらそうな男よりは脱力させてくれて、楽しい毎日が送れるかもしれません。プロポーズだって、タイミングを見て女性から軽く言ってみるのもアリかもしれません。私の周りにも「奥さんが段取ってくれてラクだった」と言ってる男性もいれば、「そろそろ(籍に)入りましょうよ」とお風呂に入るかのごとく言われた男性もいます。
  “自分を磨く”。これは化粧をして最新のモードを着こなし、ワインの値打ちが分かるようになることだけではありません。「愛」とは何かを考えると、社会の状況を理解し、必要とあれば他人にも手をさしのべる優しさと行動力ではないでしょうか。「出会いがない、もっといい人がいるかもしれない」と愛の流浪者になって同じことを繰り返していませんか? 変えるべきは、恋人ではなく自分の考え方や相手を見る目かもしれません。


続けて赤木さんインタビュー

「専業主夫になりたい」赤木智弘

  僕はバブル崩壊の余波で正社員になることができず、いまだ非正規労働に甘んじている「若年男性」です、といっても31歳ですが。
  「結婚」は「恋愛のゴール」というハッピーな意味もあるんでしょうが、経済的には自立できない女性を 「専業主婦」という立場で男性が養ってきた一面もあるのは事実だと思います。
  「専業主婦」は「第3号被保険者」と言い換えてもいいですが、これは、「厚生年金や共済年金の加入者(第2号被保険者)に扶養される配偶者で、年齢が20歳以上60歳未満、年収130万円未満の人」のことです。全国に約1109万人おり、このうち男性は約8万人。99%以上が女性です。
  「正社員で働いている」という点から強者と弱者に分けると、「強者男性」、「強者女性」、「弱者女性」がいて、その下に家庭に入るという選択肢もほとんどない「弱者男性」がいるということをまずは認識してほしいなあと思っています。
  僕はフリーターですから、経済的「弱者」です。弱者の立場として強者からの働きかけがないと、なかなか動くことはできません。30歳を過ぎた男性でありながら、フリーターであるという「負い目」があるからです。ですから、強者女性は積極的に弱者男性にお声をかけていただけないでしょうか。

 心の底から就職氷河期をうらみたくなります。
 
 少なくとも私は、年齢にこだわりもありませんし、女性をコントロールしたいというようなマッチョな欲望も持ち合わせてはおりません。むしろ肉体的に弱い存在である女性に合わせることで、女性の仕事の負担を減らすという、生活が楽になる方向へのシフトチェンジに、「専業主夫」として内助の功に励みたいと思います。社会的には1%未満の立場なので、「レア」という価値はあるかもしれない(苦笑)。
  最後にこんな僕ですが、ご興味がある女性はメールをぜひください。お待ちしております。けっこう本気です。

 男とか女とか関係なく、みんなでラクになったほうがいいと思うんだけどね。「自己責任論」っていうか、すでに日本人はかなり「自己責任」貫徹してるような気がしますが。
 もう1本私がエッセイ書いております。後日あげます。