イケメン好きには申し訳ないが、このドラマにイケメンはたった一人しか出てこない。本当に地味なメンツなのだが、感動は最大級である。脚本がノ・ヒギョンというのが期待度MAXになるが、やはり期待通り、いや期待以上の素晴らしさだった。警察署にはアジョシ(韓国語でオジサンの意)ばかりで華やかさはひとかけらもないが、話数を重ねるごとに物語に引き込まれて行く。

 刑事モノとは違う警察官の地味な仕事 の数々。酔っ払いの世話とパトカーの中に吐いた吐瀉物の掃除、喧嘩の仲裁など殺人犯を捕まえるような緊張感漂う仕事はほとんどない。後半から緊張感が漂う内容になって来るが。

 主役は新人警官役のチョン・ユミと無駄に背が高いイ・グァンス。イ・グァンスの出演ドラマは結構観ているのだが、未だに好感度ナシだ。そして何とも嫌味で態度の悪い先輩警察官オ・ヤンチョン(ぺ・ソンウ)が前半では本当に嫌な奴なのだが、後半に行くにつれて何とも魅力的なアジョシとなって行くのだ。他にも私の好きなソ・ドンイル、検事や刑事役が多いチャン・ヒョンソン、やはり刑事役が多めのイ・シオンなど演技派が揃っている。

 警察学校を卒業したハン・ジョンオ(チョン・ユミ)、ヨム・サンス(イ・グァンス)、ソン・ヘリ(イ・ジェヨン)の3人は犯罪多地区と言われるホンイル警察署で警察官としての仕事を始めるが、内容はトイレ掃除や酔っ払いの世話などうんざりするような事ばかりだった。しかもホンイル警察署に警察の時に嫌味な教官だったオ・ヤンチョン(ぺ・ソンウ)が3人の前に現れる。ヤンチョンは夜の海で人命救助をしたが、一緒にいた先輩が溺れて死んでしまった事から疑惑を持たれ降格されてホンイル警察署に来たのだ。しかしヤンチョンは熱血刑事で何度も表彰されているレジェンドだった。

 ヤンチョンの下に付いたサンスは嫌味を言われてばかりだがグッと堪えていた。ヘリは定年間近のイ・サムボ(イ・オル)の下に付くが、緊張感のない仕事ばかりで犯人を捕まえてみたいと愚痴を言っていた。ジョンオの上司カン・ナミル(イ・シオン)はあまり積極的に動こうとしない。

 そんな時大学でのデモを鎮圧するために現場へ行くが、外で配られた弁当を急いで食べるとすぐに大学構内に入る。学生たちは歌を歌いながら腕を組んで座り込んでいて引き離すのも容易ではなかった。

 一方降格されたヤンチョンは妻からいきなり離婚したいと言われ、ショックを受ける。妻のジャンミ(ぺ・ジョンオク)は青少年捜査のチーム長で忙しいながらも家庭の雑事もこなしている。しかしヤンチョンが家庭を顧みず仕事を続ける事ため不満を爆発させたのだ。

 3人の新人警察官の中でメキメキと頭角を現し始めたジョンオにサンスとヘリは劣等感を感じる。特にサンスは恋心を抱いているジョンオに対して複雑な気持ちになった。

 ホンイル地区で殺人事件が起こり、現場に行ったジョンオは凄惨な死体を見てショックを受けて現場恐怖症になってしまう。一方サンスは事あるごとにヤンチョンから注意を受け苛立ち、ヘリはサンボが年寄りなのが気に入らず何かと対立してしまう。

 ジョンオは先輩たちからアドバイスを受け必死に克服しようとしていたが、見回りの途中女性から店にいる男性客が怖いと言われ、単独で店に行くが、そこへ別な男が入ってきて男性客とトラブルになる。ジョンオは危険な行為をしようとした女性を止めようとして思わずテーザーガン(一時的に電気ショックを与えるスタンガンのようなもの?)を使用したが、その女性が妊娠していた為問題となってしまい、調査を受ける事になり、益々意気消沈するジョンオ。

 一方ジョンオを心配するミョンホ(シン・ドンウク)をライバル視するサンスだが、投身自殺を止めることができた事を素直に喜ぶ。

 サンスは頑張って容疑者を追跡した結果負傷してしまう。サンスを教育する立場にあるヤンチョンはまた組んでいる同僚を危険な目に遭わせたと非難が集まる。

 そんな時売春組織を捕らえるために女性青少年課の捜査員達に協力する事になったホンイル地区の隊員達。女性青少年課のチーム長はヤンチョンの妻ジャンミだ。ジョンオはジャンミと共にアジトから出てきた犯人の一人を捉える。

 一方詐欺の犯人を取りに逃したジョンミン、ミンソク、ナムイルは責任問題となり懲罰委員会にかけられる事になったが、3人の中で一人だけを責任者として監察に行く事にした。しかしそれぞれの事情でなかなか一人に決められない。

 ホンイル地区第1チームの隊員達はキ・ハンソル隊長の元、チームの結束(ソン・ドンイル)を高めるため合宿に行く事になった。ヤンチョンとギョンモ(チャン・ヒョンソン)は元々仲が悪く、サンスとミョンホはジョンオを巡る恋のライバルだ。

 合宿に行った翌日の朝、ミョンホとジョンオがキスしている所を偶然見てしまい、ショックを受けるサンス。想いを抑え切れないサンスはジョンオに告白するが、同僚としか思えないと言われる。しかし諦めないと宣言するサンス。

 そんな時、売春事件にヤンチョンの以前の部下ジュヨンが関係している事を知ったジャンミは潜伏捜査をしようとギョンモに協力を仰ぐ。ヤンチョンも可愛がっていた部下のジュヨンが怪しいと聞いて驚く。

 そんな時以前検挙した高校生の恨みをかったサムボは夜道でオートバイに乗った若者達に襲われ、その現場を撮影されてしまう。

ヤンチョンは違法カジノ現場に駆けつけ、ジュヨンがいた事を聞かされ激昂し探し回る。ジュヨンを見つけると怒りのあまり殴打するヤンチョン。

 一方意識がないまま入院しているヤンチョンの母に会いに行った父が人工呼吸器を外してしまい、その事を妻から聞かされたヤンチョン。更に怒りのボルテージが上がったヤンチョンは実家に行き、テレビを見ている父の前でテレビを壊す。父は言う。「母さんも口がきけたら殺してくれと言うに違いない」。ヤンチョンはその言葉にやり切れない思いがこみ上げる。

 ヘリは上司のサムボが暴行された事を知るが、彼女には心当たりがあった。サムボに暴行した少年たちを捕らえるため第1チームが動き出す。

 そんな時ホンイル地区近くの山で未成年の性的暴行事件が起きる。担当はジャンミだが、連続で起きているにも関わらず証拠がなく捜査は行き詰まっていた。

 ヤンチョンはアパートの駐車場で娘ソンイが彼氏ともみ合っている現場を見て思わず彼氏を殴ってしまい、ソンイは泣きながらヤンチョンに抗議し、母ジャンミに父の横暴さを訴える。しかしジャンミはヤンチョンの味方をした。

 一方未成年暴行事件の被害者ギョンジンに協力を求めるジョンオだが、なかなか説得に応じない。そしてジョンオは12年前自分も暴行に遭った事を告げる。偶然通りかかってそれを聞いてしまったサンス。だがギョンジンはそんなジョンオの説得に応じ、ギョンジンが妹と共に犯人に名札を奪われたことを語った。この事件はマヒョンレイプ事件と呼ばれる事になった。

 マヒョンレイプ事件の公開走査が決定し、ヤンチョンはジャンミのチームと合流する事になる。そんな時、ヤンチョンは父にジャンミが言った事を伝える。「母さんの呼吸器を外そう」と。そしてテレビを壊した事を謝るヤンチョン。

 そんな時キ・ハンソル隊長は体の不調を感じていたが、娘の結婚式や次々起こる事件のため病院へは行かなかった。

レイプ事件の捜査で休みもなく働いている隊員達の不満が爆発し、上司と言い合いになる。しかし犯人は捕まえなければならない。

 ヤンチョンはふと気づく。犯人は客ではなく山の近くで店を営んでいる店主だと。そう考えると全ての疑問が解けた。

そして店主の妻は夫が隠していた少女達の名札を見つけてしまう。犯人が着ている青いジャンパーと帽子が干してある屋上へ行く妻。

 その頃サンスは犯人と酷似した人物を見つけて追いかけ、無線で各隊員に知らせた。

 ジョンオは隊員達と学校でSNS性暴力予告の件である高校を訪れていたが、独自の見解を述べたため、集まった母親達の反感をかってしまう。後でギョンモに学校へ行って謝れと言われたジョンオだが、謝る気は無いと言う。サンスはそんなジョンオに謝れと説得するが、彼女は引かない。サンスの顔を見てレイプされた経験を語る。それをミンホもヤンチョンも聞いていた。

 一方キ・ハンソル隊長は病院で癌と告知され、勤務の楽な地区へ異動しようと思っていた。

そんな中ハリは自分もレイプ事件のような大きい事件に関わりたいとサムボに言っていたが、いざ交通事故の現場に行くと事故の凄さにショックを受け、気を失って倒れた。

 警察署に連行された男の一人が暴れたため、近くにいた男を突き飛ばしてしまったミンソク。その場では気づかなかったが、後で大変な事になった。

 ジョンオは打ちひしがれて部屋にいたが、サンスは部屋に入って彼女がヤケ酒を飲まないように冷蔵庫のアルコールを袋に入れて持って行った。翌朝ジョンオを誘って走ったサンスは「大変だったなと慰めたいけど言葉が出ない」そう言って涙ぐんだ。

 ジョンオはミョンホと別れる事となった。「縁がなかった」と言うミョンホ。彼は3年前恋人を事故で亡くしていた。

 一方ジャンミはレイプ事件で警察の捜査の仕方に市民から批判が湧き、その責任を取らされる格好となる。怒りが収まらないジャンミだが

停職処分となった。

 一方ハンソルらの同僚で警察を辞めた先輩が追い詰められて焼身自殺をすると予告してきてハンソルは説得を試みるが失敗してしまった。何とか一命は取り留めた。しかし悲しすぎる結末・・。

 警察署で暴れた男を取り押さえるため近くにいた男を突き飛ばして告訴される事になったミンソク。大した怪我では無いのだが、男はひどい状態だと訴える。

 部下のためにも裁判にしたくないハンソル、ギョンモたちはプライドを捨てて土下座しようという結論になる。示談金は少しでも下げてもらい、皆でカンパする事にした。その後ミンソクの同僚たちが男の嘘を暴いた。

 ヤンチョンは定職になった妻ジャンミを最大限慰めていた。そんな時ジョンオから尊敬していますと言うメールが来て思わず泣いてしまうジャンミ。

 そんな時酒を飲観ながら猛スピードで運転する男がパトカーに激突し、パトカーから出てきた警官を手製の銃で撃ち殺した。ヤンチョンとサンス、ヘリとサムボ、ジョンオとナミルも現場に駆けつけたが、撃ちまくる犯人を捕まえることができない。そして犯人の隙を見てヤンチョンが撃ち、犯人に手錠をかけた。

 ジョンオは凶悪犯罪が続く事に不安を感じ、海外に留学しようと決意。ジョンオの決意を知ったサンスはいつまでも待つと彼女に告げる。

 一方癌の手術に成功したハンソルだが、撃たれた警官がハンソルを訪ねて来た警官だと知って泣いた。

撃たれた警官の事を思い、隊員の誰もが泣いた。助けることができなかった無念の思いと次は撃たれるかも知れないと言う怖さを抱えて・・。

 そんな時巡回中だったヤンチョンは公園のトイレで血を流している少年を見つけてすぐに無線で応援を要請するが、犯人にメスで襲われてしまい、気を失った。近くにいたサンスが駆けつけ犯人を狙撃する。

 ヤンチョンは意識不明のままだったが、サンスは連続殺人犯を検挙したと言う事で意気揚々だったが、実はサンスが捕まえた犯人は模倣犯で真犯人は一般の市民が見つけて通報したことがわかる。そうなるとサンスの発砲は適切だったのかと言う世論が起こり、サンスは警官生命が終わるかも知れない瀬戸際に立たされてしまう。そんな中ヤンチョンが意識を取り戻す。

 ハンソルとギョンモが警察署長に会いに行き、クビ覚悟で抗議をした。翌日サンスの懲戒委員会が開かれると元警察官で今は人権派の弁護士がいて彼の理路整然とした言葉によってサンスは救われた。そしてヤンチョンもサンスの上司として意見を述べる。

 そして多数決でサンスは不問となった。

 ヤンチョンはサンスに「銃を撃つと自分が損するんだ。次に同じ状況になったら逃げろ」と言った。

 観終わった時、感じ悪い人と思っていたヤンチョンが好きになっていた。熱血過ぎて怖いと思ったこともあるが、ラスト近く奥さんとイチャイチャしているのが微笑ましかった。奥さんをヌナ(韓国語でお姉さん)と呼んでいたから年上なのだろう。そして素っ気ない態度だった父親と手を繋いで歩く姿がまた微笑ましかった。

 もう本当に地味って言うか色で言ったら全体的にグレーな感じなのだが、オジサンたちがいいのだ、すごく。反対に若者が今ひとつ魅力に欠ける。イ・グァンスが私の好みではないからなのか、チョン・ユミもキャラのせいか態度が可愛くないし。ただヘリが後半おじいちゃん上司に懐いていくのが可愛かった。

 最後に定年間近のサムボを演じたイ・オルさんが2022年5月26日食道癌で亡くなったそうだ。いい味を出していただけに残念。