―心に残る言葉、苦しい時に助けてくれた言葉とかありますか?

 

ちょっと自分が苦しくなると思い出す言葉があって。

目が見えなくなって心身ともにお先真っ暗で実家に引き篭もっていた時に高校の1学年下の女の子がよく私のこと気にかけて実家に遊びに来てくれていたんです。私はすごく信頼している友人で。

 

テレビも見ないし、カレンダーも見れないし、ずっと家にいて、家と眼科の往復の生活で、家でやる事は食べる事だけと言う日がずっと続いていて、今日が何月何日何曜日かもわからない状態になっていました。そんな私に彼女から「今日が何曜日かくらいわかっときなよ」とか、「テレビくらい見なよ」とかすごい促されて。

 

その時に私が、「ねぇ、今までの人生でいちばんのピークっていつだった?」って尋ねたんですね。私は、二十歳の時に生まれて初めてフランスに行きました。私がすごく尊敬する憧れのセルジュ・ゲンスブールという歌手がいるんですけれども、彼のお墓に一人で行ったんですね。ずっと行きたかった場所に行けて、私はその時にこれは私の人生のピークだって思って、生きててよかったって、すごく幸せに感じた瞬間だったんです。

そのゲンスブールのお墓に行って2年たって私は目が見えなくなっちゃって。彼女に「私は2年前二十歳の時にゲンスブールのお墓に行った時、フランスにいたあの瞬間が私の人生のピークだったんだけど、あなたにとって人生のピークってあったの?」って質問したんですね。そしたら彼女にすごい叱られちゃいまして。「何言ってんの?」って。

 

「人生のピークは死ぬ10分前でしょ。人生死ぬまで右肩あがりでしょ」って言われた時に目が覚めて、「あ、そっか私これからもっと上を目指さなきゃいけないんだ」って思いました。その時の彼女の言葉がすごく印象に残って、今でも彼女の言葉をたまに思い出します。なので、常にいまがピークであるように生きなきゃいけないのかなって、こんな風に過ごせるようになったのは彼女のおかげかなって思ってます。

 

 

―感動しますね。最後に、このブログのテーマの一つが一流の人の話が聞きたいと思ったのがきっかけだったんですが、蔡本さんにとって、一流の人ってどんな人ですか?

 

余り一流とは何かって考えたことないから難しい質問なんですけれど、私が尊敬する一流と思える方々を並べた時に思うのが、まず素直だなと思って。

例えば憧れている鍼灸師の先生とか、師事している先生とかいるんですけれども、まだまだこの道に入って10年足らずのペーペーの私の話も最後まで聞いてくれて吸収できるところは下っ端の私からも吸収しようとしてくれる、素直というかどんな人からも影響を受けようとするスタンス。それって謙虚じゃないとできないんだろうな、と思っていて。先生方は謙虚だからこそ上を目指そうと思っていて、会うたび会うたび進化をしているんですね。

私が憧れている先生たちに近づこうとしても、先生たちももっともっと先、100歩も200歩も先に行っちゃっているので、一生追いつかないんだろうなってくらいずっと勉強し続けている先生方がたくさんいて、自分もこの仕事をしている限りずーっと勉強して、ずーっと進化し続けないと止まって死んじゃうんだろうなって思ってます。

 

 

―長々と色んな質問に答えてくださってありがとうございました!他に何か蔡本さんからこのブログの読者の皆様に伝えたい事はありますか?言い残した事とか。

 

伝えたい事…う〜ん、困ったな。(笑) 逆に質問していいですか?ひろみちゃんは伝えたいこと明確にあるんですか?

 

 

―私ですか?私…ここ最近はずっとこのブログの事を考えてるんですが、この企画を考えたきっかけが自分がこの夏本当に苦しんだ時に、私みたいに苦しんでいる人ってたくさんいるんだろうなって思ったんですよ。で、その苦しんでいた当時マジでどん底だったんですけれど、それでもやっぱり前を向いて生きていけば変わるじゃないですか。蔡本さんも理不尽な事、納得できない事全て受け止めて、乗り越えて、糧にして来ていらっしゃいます。だから今苦しんだり悩んだりしている人達に自暴自棄にならないでっていうか、投げ遣りにならないでくださいね、って。絶対良くなるから、絶対に良くなるからそれを信じて前に進んで欲しいっていうのを私は一番伝えたいって思ってます、この企画を通して。

素晴らしい人ってその人生そのものが他者への励ましだと思うんですよ。私が今回蔡本さんをこの企画の社員編でトップバッターに選んだのもそれが理由で、蔡本さんの人生を見ただけで励まされる人って世の中にたくさんいると思うんです。それを世に出したかった。

 

ありがとうございます。(笑) それで言うと、自己肯定感って話になると思うんですけれども、心理的な話だったり仕事の話においても。私、自分自身で、自己肯定感めちゃくちゃ高いなって思っていて。余り卑屈になりません。

私の一番好きな四字熟語が「自画自賛」なんですね。(これ言って一度フランス人の男性から君は本当にもうちょっと奥ゆかしく日本人らしく生きられないのかって怒られた事あるんですけれど)

 

なので、埼玉県川越の方から千代田区麹町まで毎朝1時間以上かけてオフィスまで来るんですけれど、毎日オフィスにたどり着いた瞬間、私はこの社内で目の見えている誰よりもすごい頑張って来れていて、もし今日いきなりこのSAPの社員全員がアイマスクをしろって命令されたら、ここにたどり着けるの私だけじゃんって毎日思うんですね。

 

で、「あ、私一人で来れてる、ほんとまじすごい」ってまず朝褒めて、帰って来れたら「すごい満員電車の中、みんな疲れてる中、電車の中で1時間立って来れたぞ私すごい」って家に帰って褒めて、割と褒めまくって来てます。なので自分が目が見えないから卑屈になったりって言うよりも、目が見えないのにここまで出来る私すごいって、いつも思っています。

そんなに誰かれから褒められる機会なんてそもそもないんだから、だったら自分で自分の事をもっと褒めてあげたいし、皆さんも自分の事をしっかり褒めてあげてほしいです。

 

 

―自分をとても大事にされてるんですね。

 

自分大好きですね。だからこそ、謙虚でいなきゃなって気持ちもあります。自惚れないように。

 

 

―私から見たらいつも謙虚ですよ。

 

謙虚でいたいっていつも思ってます。でも、自分は褒めます。(笑)皆さんも自分の事をしっかり褒めてあげてほしいです!

 

 

(蔡本英美さん編 完)