里帰りしたのは夏。
イギリスの夏は私の知っている夏とは違った。
とにかく寒かった。
最高気温は25度、時々15度くらいまでしか気温が上がらない。
九州生まれの私は、この気温は初春のような気候であった。
ある日、ビーチにピクニックに行くことになった。
日は照っていたものの気温は17度くらい。
こんな寒いのにビーチに行ってなにをするんだろうと
不思議に思いながらついていった。
私は厚手の長袖を持っていった。ビーチでこの気温なら寒いに決まっているからだ。
ところが、夫の家族は泳ぐ準備をしている。
もちろん半そで半パン!やる気満々。
ビーチ駐車場に着いた。
ビーチにたどり着くまで、林を抜けていく。
林を抜けるとビーチではなく、海水で湿った泥に草が生えていた。
海水の中に育つ草ははじめて見た。
「これはなんですか?」と義父にきいた。
義父は農作物の品種改良に携わっていたため、植物系には詳しいのだ。
「サンファだよ。この土地特有の植物で、塩分のある泥地に生息する。
食べられるんだよ。ゆでて、バターつけて食べると美味しいよ」と教えてくれた。
私はこの「自然のものを採って食べる」というのが大好き。
ここにしかないならなおさら、食べたい!!
義父が「食べてみる?」ときいてくれたので、大きくうなずいた。
義父と私はせっせとこのサンファを採った。
よく見ると葉っぱは、細長く肉厚。小さいアスパラガスみたいである。
「この茎を食べるんだよ。やわらかそうなものを選んで採るんだよ。」と義父は説明してくれた。
このサンファをスーパーの袋いっぱい取った。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20120319/03/hiromibh/fb/df/j/t02200165_0431032411860408847.jpg?caw=800)
ある1人の男性が「これは食べれるの?」ときいてきた。
義父が「食べれるよ。魚屋に行ったら、売ってるよ。ここではタダだけどね。」
この男性はお礼を言って私たち同様サンファを採りだした。
「イギリス人でもサンファを知っている人は少ないんだよ。」と義父は言った。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20120319/04/hiromibh/2a/31/j/t02200199_0332030011860415688.jpg?caw=800)
このサンファがある泥地を抜けて、ようやくビーチに着いた。
風が強くなっていたので体感温度は17度を絶対下回っていた。
この寒さではさすがのイギリス人も泳がないだろうと思いきや、いた。
1人や2人ではない。いっぱいいた。
白人の肌は赤くなりやすいのだろう、寒さで肌は真っ赤である。
こんな温度で泳ぐ日本人はサーフィンやってる人か海女さんくらいだ。
海は日本の冬の海の色。灰色。
お世辞にもキレイとは言いがたい。
「泳ぐか?」という問いに対し、
もちろん遠慮させていただいたしだいである。
ここで泳いだら寒中水泳。
イギリスまで来て風邪でもひいたら、初めてのイギリス訪問が台無しになる。
しばらく散策した後、元の道を戻った。
サンファが生息する泥地は、サンファを採取する人で一杯だった。
義父が教えた人が、また教えてとサンファの和が広がっていた。
義父がこそっと「美味しいサンファは全部採ったから、硬いサンファしか残ってないんだよ!」
とニヤニヤしながら得意げに言った。
帰ってサンファを食べた。
2~3分ゆでた後、バターで味付け。
とてもシンプルだ、
茎わかめのような触感で,バターとのコンビネーションもグット!
茎の中には細い芯がある。それは硬くて食べれない。
正直、とても美味しかった。
夫によるとイギリスで有名なシェフ Hugh Fearnley-Whittingstall(オーガニックや変わった食材をテーマにした人気料理番組をもつ)
やJamie Oliver (いくつものレストランをもつ)も、このサンファを使った料理を紹介している。
もう二度とあんな寒いビーチには戻りたくないが、
サンファを採りにいくなら、また行ってもいいと思った
食いしん坊の私でした。