はじめてのロンドン | 国際結婚 こんなところまで来てしまった・・・

国際結婚 こんなところまで来てしまった・・・

これは、私の過去の記録(日記)です。
イギリス人の夫と国際結婚 
中東で海外生活を経て
やっと日本に戻ってきた。。
海外でも日本でも何故かいつも微妙に波乱万丈をしている
2児の母です。

イギリスに初めて里帰りしたときの話。

イギリスについてすぐ、行きたかった所。
もちろんロンドン。
すごく期待していた。

一番に行ったのは有名なオックスフォードストリート
買い物好きの私は、どんなお店がロンドンにあるのか気になっていた。
大きな通りにぎっしりとお店が並んでいた。
が、なんだか様子がおかしいことにしばらく歩いて気づいた。
同じブランドの店がいくつもあるだけなのだ。
結局大通りには面白そうなお店を見つけることができなかったのだ。

ガッカリしていると、夫が「あの人のTシャツ見て」と言い出した。
白人男性のTシャツの背中中央には漢字で大きく「便所」と書いてあった。
なぜ、あの人はこのTシャツを着る前に「これ何の意味だろう」と思わなかったのだろうか・・・
もし今、意味がトイレだと知ったら、彼はどうするだろうか・・・

当時、漢字がブームになりかけていたイギリスでは、
いたるところで漢字Tシャツを見つけることができた。
特に流行っていたのは「スーパードライ 極度乾燥」のTシャツ。(何がカッコいいのか意味不明)
今ではイギリスのどの田舎でも売られているほどである。

「しかし、便所はヒドイ」と失笑しながら便所Tシャツの男性を見ていると、
こともあろうに超有名デパート「ハロッズ」に入っていった。
知らないって恐ろしいことだとつくづく実感した。

私もハロッズには行ってみたかったので、中に入ろうとすると
大柄の黒人男性に止められた。
セキュリティーの男性だった。
「君は中に入ってはいけない」
「はあ?どうして?」
「君のそのバックがいけない」
実はロンドンで買い物をしても手荷物を持たないでいいように、リュックを持ってきていたのだ。そのリュックがいけないと言うのだ。
店が客を選ぶなんて、日本では考えられないこと。
とても頭にきたので「帰ってやる!」と言いたいところだったが、せっかくはるばる日本からやってきたのに、そう簡単には引き下がれない。
まして「便所」Tシャツ男が入れて、リュックの私が入れないのはぜんぜん納得いかない。
「リュックのなにがいけないのか?」と食い下がった私に
「バックが品物にあたり、店のものを壊す可能性があるから。もしもどうしても中に入りたいならリュックをハンドバックのように持ち歩けば中に入っていい」とセキュリティの男は言った。
「最初からそう言えばいいのに・・・」と思いながらも気の弱い私は
「サンキュー」と日本人スマイルで中に入った。

建物自体、とても歴史のあるものなので、エスカレータ付近の壁の装飾は非常に感心した。
しかし、デパートの中に売られているものはぜんぜんたいしたことなくてガッカリ。
あんなに苦労して入ったのにと夫にぼやいたのだった。

帰りの地下鉄で電車に乗ると、ほぼ満席状態。
「しょうがない」と思いながら立っていると
、私の前に座っている見るからに上品な80歳くらいのおじいさんが、「ここに座りなさい」とニコニコしながら席を立った。
「いいえ、とんでもない!おじいさんが座ってください。私は大丈夫ですので。」
「レディーファーストだよ。お嬢さん。男性として当然のこと。」と一歩も譲らない。
何度かこのやり取りをしたが、
あまり断るのも失礼になりそうだったので、お礼を言って座らせてもらった。
しかし、80歳で男性としてのこの心意気と意地。
30年以上生きてきて、日本ではこのような心意気のある老人に一度も出会ったことがない。(日本にはレディファーストと言う考え方はないので当然だが・・・)

上品なこの老人は背筋をピンと伸ばし、ニコニコしながら、帽子に少し手を沿え、軽く会釈してその場を去った。
身のこなしといい、男性としてのプライドといい
「かっこいい・・・本物のジェントルマンだ」本当にそう思った。
古き良きジェントルマンは存在したのだ。

イギリスをちょっと見直した出来事だった。