2つ目 つづき | METAL SAFARI Hiro blog ●INDEPENDENT MUSIC WORKS●

2つ目 つづき

5月の締め切りまで半月で終わらせたよ。ベストを尽くせた。2ndアルバムのレコーディングも、並行だったから今思うと骨が折れたわ。メンバーのレコーディングもそうだし、何より自分のギターレコーディングも進めないといけなかったしさ。とにかく命懸けだった。どれもこれも、リミックスも、2ndアルバムもギターレコーディングも何もかも世界を意識せざるを得なかったし、最初からそのつもりだったけど実際本当になりそうだったからさ。そういうことを水面下ではやってたんだ。





そんなこんなでさ、日本時間5月1日の夜中の3時頃に最後の曲、アルバム最初の曲、あのギターインストの曲ね、あのリミックスを終えてデータ投げて終了したのよ。




後日『Perfect』って返信が来た時はホッとしたよね。




やってわかったことがある。やり切ってみたら意外なことに、2ndアルバムにも良い影響が出た。1stでこの方向性を叩き出せたから2ndはこうしようとか、1stはこうしたから、2ndはこうしないとかさ。俺の中で明確な区切りが、曖昧だったものがより線引きがついた。

いつまでも幻想を追い掛け続けるのは虚しいからさ。一発理想を叩き出しておきたかったんだここいらで。



そこから見えてくるもんがある。いつでも俺はこれくらいの作品なら日常的に作ることができる力、方法論、筋道を手に入れた。応用することもできるし、壊して新しいことも勿論できるしね。その上で今2ndアルバムにベストを尽くして取り組めてる。







とりあえず5月まではざっとそんなことがあったんだ。







だから、実は、こんなことやってたんだよ。何でこんな大事なことをみんなに報告できなかったのは分かるよね?






契約前だったからさ。






契約前提ではあったし、契約するつもりで話進めてたし、作業してたけど、実際サインはまだだったからさ。条件面も大雑把にしか協議してなかったし。二転三転する可能性だってあるでしょ?だから慎重にならざるを得なかったんだ。だから語るに語れなかったんだ。どうしようもなかった。本当に孤独な作業というものだった。葛藤してたよ。その時もう5月だよ?5ヶ月も経っちまったって、かなり待たせてるって感覚は常にあったよ。はっきり言って葛藤以外なかったよ。うちのボーカルのblogのINABLOで何とか伝えるのが精一杯。今思うともっと上手くやれたとは思う…反省。当時の俺達はそんな余裕はなかった。何もかもが初めての状況で、レーベルと仕事するのも初めて、その日その日の決断を、どうするか。次から次へと来る案件を、ばっちり決めて明日につなげていかないといけない状況だったから、とにかく手一杯だったんだと思う。





現実と向き合う毎日だったし、それが日常で全てになった。そういう現実的な生活が染み付いた。その頃から、みんなに報告することができる日を夢見ててさ、驚かせてやろうとか、これはビッグニュースだよねって、今まで応援してくれた人達と俺達の想いがついに、一つの到達点を迎える時がもうじき来るんじゃないかってさ。散々シミュレーションしてた報告の瞬間をさ。










そして実際、俺達の希望、夢、運命、人生とも言える切符、1stアルバムと2ndアルバムの契約書それぞれがついにレーベルオーナーから来たんだ5月の初旬に。






決して多い額ではないけど、契約金も頂ける。諸々条件も悪くないんじゃないか。全く持って俺達にとって、前に進むのに何のデメリットも感じない。文面が英文だから、契約は絶対的なものだから、理解しないといけなかったし、トラブルが起きちゃいけないから俺はそれを解読しただけでなく、こういう状況になったらどういうトラブルが起きるとか、そういうところまで理解しないといけないって思って、とにかくレーベルには躊躇せず質問を投げまくったし、こっちの人を頼った。友人に電話しまくった。




最終的に今思うと、ここがきっかけだったんだけど、渋谷にあるハリウッドに本校を構える音楽学校、俺も八頭もJUNもここの世話になってきたんだけど、MIで世界で最新のミュージックビジネスに精通してる方の元に行って、いろいろな角度から助言をもらうことができた。




3時間以上は話したかな。何て言うかね、行く前はさ、完璧に契約の内容が把握できればいいって、英語よくわからないし、これで翻訳してもらえたら、専門的な用語とかの意味も理解できれば何とかなるかなって。そういう気持ちで行ったんだけど、でも実際起きたことって、その3時間の中で俺の中にあった古い価値観を、ぶっ壊されたんだよね。




それ以上に一番の収穫は、俺達のこの4年間で一番大事にしてきたものに気付けたことかな。根本的なもの、自分って、METAL SAFARIって何なのかなってことだよつまり。気付かされた。




その日はひどく興奮してあまり眠れなかった。とにかくその日にあったことを自分の中で整理するので一杯だった。八頭と一緒にそのミーティングには行ったんだけど、彼は飲み込みが早かったんだけど、俺にはどうしてもまだ全てを丸呑みでない、完全には理解できない節が沢山あってね。世代が違うから当然、価値観や、視点の問題なんだけどさ。俺がこだわってるものも良くも悪くも露呈してしまった。俺はいつまでも変わらないと思ってたことでも、時代の方が変わってしまったって認めざるを得なかったことばかりだったし。




本当に悩みに悩んだよ。一番頭使ったな。作曲より頭使ったわ。





真剣に考えるってさ、凄い大事なことだと俺は思った。結局、その人が一番大事にしてるものが浮き彫りになる瞬間でしょ?自分は何に固執してる人間なのか分かる瞬間なわけでしょ?自分がどっからそれを見てるのか立ち位置がわかる瞬間でしょ??自分が何なのかわかる瞬間でしょ?色々なものが浮き彫りになる、そんな瞬間だったよ。




分かったんだよね、全部さ。契約書突きつけられてさ、人生かけて考えたんだもんそりゃ答えも出ますわ。





自分が何にこだわってたのか。何に向かっていいきたいのか。何のためなのか。誰のためなのか。一体これは何なのか。もう全てがね。







稲本にも、JUNにも間もなく、一つの俺からの回答を、一体何が起きたのか、何が始まるのか、話したよ。きっと電話越しで俺がMIでのミーティングで価値観を壊されたように、気付かれたように、同じような感覚になるのに時間はかからなかっただろうね。今でも覚えてるわその時の会話を。最後まで信じられないと言ったような、でも、そこから何かが始まるんじゃないかっていう、新たな希望の光っていうのかな、今確かに自分の胸にしっかり抱いて書いてるこの感覚ってのをメンバーみんなが共有し始めた瞬間だったのかもしれない。それが5月の中旬の出来事だった。







そっからは更に話が早かったな。あっという間だったよ。メンバーで集まったりなんだ、ミーティング重ねてさ。『覚悟』とか『腹をくくった』とか、そういう感覚って言うのかな。全員同じ気持ち、同じとこ見ちゃったね。当時はまだそういう感覚だったんだけど。今はもう少し進んでるよ更に。





足りなかったのは本当のところでの覚悟だったんじゃないかなって。少なくとも俺は覚悟してたと思ってたんだけど、そんなんじゃなかった覚悟って。何に対しての覚悟だって?音楽という人生を選ぶっていう覚悟っていうことにつながってくるんだけどさ。そんなのとっくにって話なんだけどさ、違うんだよ。




音楽を人生にってさ、つまり


この先、3年、5年、10年、20年、25年。その先。


俺達はこのまま立って行くことができるのかってこと。


みんな今みたいに立ってられるのか。


リアルな話だよ。


綺麗ごとは言えないよ一切。どの世界もそうだけど、数十年とその世界で立っていくことって、いつの時代でも難しい。


音楽の熱烈なファンじゃなくともさそんなのわかるでしょ。

例え一世を風靡してたとしてもいつの間にか、消えていってしまうようなミュージシャンをみんなも星の数ほど、それが過ぎ去っていく様を見てるよね?歴史が物語ってるよね?





今ひどく夢の無い話をしてるのかもしれない。




けれど、それが現実で、この世界の厳しさを物語ってる。





俺は、METAL SAFARIというバンドで約4年間活動して来た。

短くはないけど決してまだ長いとも言えない年月だったけど、語り尽くせない程、様々な経験をしてきた。頭を抱えたり、苦悩したり、しんどくなったり、計算したり、見栄を張ったり、必死過ぎてなりふり構わずやってしまったこともある。



世界の様子も分からないのに音楽界の右も左も分かるわけがなかったから。迷惑をかけた人達もいたかもしれない。つれない顔して、貴方の前に立ってたのかもしれない。覚悟が決まってない人間と対峙するって言うのは、周りにも迷惑をかけるってことが今は良く分かる。









結論から言うと、俺達は契約書にサインしなかった。アルバム二枚ともサインしなかった。







正確に言うと、ある条件をいくつか出した。それは譲れないという絶対条件が。この条件こそが俺達がインディペンデントでやってきた上で俺達の中に根本的な部分で、武器であり、一番大事にしてる部分だったんだけどさ。




これは戦いだから。あっちも勿論、覚悟を持って俺達に話をしてきたわけだけど、俺達も同じ土俵で、覚悟を持って立ったからだろうね、こういう結果になったのは。





あっちからの回答は、その条件ならリタイヤするしかないと。





それは、俺達の後退を意味しなかったんだよね全く。むしろ、確信に変わった回答だったから。




要するに、権利ビジネスだからさ。音楽って。あっちはアーティストの権利を手に入れて、それを使って仕事するんだよ。その権利って言うのは、俺達アーティストが本来所有してないといけないもので、今もここに、手元にあるものなんだけどさ。




そんな大事なモノ渡すわけにはいかないでしょ。




ゲリラ配布はできなくなるのかな?とか。

CDの供給は自分らでできなくなるの?とか。

稲本が一生懸命生み出した歌詞の扱いは?自由に引用、解説、伝えられなくなるんじゃないかな?とか。

PVは?とか。

マイスペはどうなるの?とか。

YOUTUBEは?とか。

他にも思いもよらぬ足枷がでてくるんじゃないかな。とか。






どれも、俺達の最高の武器だよね。カッコいいと思ってやってきた活動ができなくなってしまうのは、あまりにも不本意過ぎるし、本末転倒だ。








つづく