9月は14冊でした。
まずは第171回直木賞関係の本を2冊。
◆ツミデミック(一穂ミチ)
一穂ミチさんは「スモール・ワールズ」「光のとこにいてね」に続いて3作目だけど、さすが直木賞受賞作、これが一番面白かったかな。
コロナ禍の中の犯罪の短編が6編。ホラーっぽい「違う羽の鳥」と最後の「さざなみドライブ」が特にお気に入り。それと「特別縁故者」がいい感じのお話で、「スモール・ワールズ」で言えば「魔王の帰還」みたいな位置づけでアクセントになっている。納得の1冊。
◆令和元年の人生ゲーム(麻布競馬場)
直木賞候補作だけど、麻布競馬場って誰?って思いながら手に取ってみたら、予想外に面白かった。
意識高い系で能書きを垂れ、承認欲求ばかり高くて手が動かない奴っていつの世もいる。Z世代の人を主人公にした短編が4編だけど、本当の主人公は全編に出てくるわき役の沼田くん、第一話でうわべばかりの吉原くんとの争いに敗れ、性格が曲って斜に構えながらも、良き参謀役として実力を発揮する場を求めてさまよう、手を動かせる男。でもパーソンズエージェントで何があったのでしょうか。ラストは寂しいですねー。
夏の文庫本フェア、新潮文庫から4冊、角川文庫から4冊、集英社文庫から1冊。
◆ひとりでカラカサさしてゆく (江國 香織)
80代の男女3人が丸の内のホテルで猟銃自殺というセンセーショナルな事件、お互い面識もなくとまどう遺族たち。心をわしづかみにされる冒頭とは裏腹にストーリーは淡々と進み、当人たちの心情はほとんど明らかにされることなく、遺族たちの日常も劇的な変化があるわけでもなく、特に何かが起きるわけでもなく話は終わる。感想が難しい?一冊。上白石萌音さんの解説が良い。
◆地球星人 (村田 沙耶香)
何なんでしょうねー、この話。どういう育ち方をすると宇宙人になってしまうのか、やはり毒親の影響でしょうか。それにしてもネットで見つけた旦那の壊れっぷり、ホモでもないのにセックスが嫌いな男ってちょっと考えられないなー。この3人、最後はどんなになっちゃってたのでしょうかね。
◆苦役列車 (西村 賢太)
読了してから著者の略歴をググってみたが、本当にこの小説のままの人だったんですね。全く共感できないタイプの人、うーん、これが芥川賞を取ったのか。
◆恍惚の人 (有吉 佐和子)
もう50年も前の作品なんですね。オリジナルかリバイバルかはわからないけど、TVドラマにもなって「恍惚」が流行語になったのを何となく記憶しています。昨年95歳で亡くなった父は茂造みたいなならずに亡くなる数日前まで自分でトイレに行っていた。同い年の義母はもう半年以上も点滴だけで生きている。自分は老醜をさらさずに死にたい、いかんともったら、子供たちの世話にはならず、自分一人でもさっさと施設に入ろうと強く思います。
◆ないものねだりの君に光の花束を (汐見 夏衛)
クラスメイトでアイドルグループの完璧男子と平凡な女子の、読んでる方が恥ずかしくなるような恋愛・成長物語でした。こういうのもたまにはいいかな。
■谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題(東川 篤哉)
自分は文京区出身なのでこの界隈は土地勘あり、楽しく読ませていただきました。東川さん、「謎解きはディナーの後で」の方ですよね。ユーモア溢れるキャラたちが織りなす日常系ミステリー、ミステリー要素もしっかりしてて読み応えありました。
◆かぞえきれない星の、その次の星 (重松 清)
コロナ時代の、ファンタジー風短編集、テイストはいかにも重松さん、良いお話なんだけど、これだけ「これでもか」と来ると、ちょっと食傷気味。
◆うちの父が運転をやめません (垣谷 美雨)
地方へ出張に行くと、バスの本数が少ない、駅前にタクシーもいない、人が歩いていない、びっくりさせられます。車がないと何もできない、深刻な問題ですよね。東京の区部に住んでいると維持費も高いし、車は不要なのですが、そういえばうちの父もなかなか車を手放そうとしなかったな。その世代にとって、車はステイタスだったからなー。
◆脳科学捜査官 真田夏希 (鳴神 響一)
こういうやつって、主人公のキャラ立ち次第なんだけど、真田夏希さん、どうかなー。臨床心理ドクターにして心理職特別捜査官、結構願望強めのアラサー美女、なんかもう一つキャラが固まっていないような。ストーリーはまあ、よくある話で、続編に期待、かな。
◆ミシンと金魚 (永井 みみ)
認知症を患う老婆・カケイさんの、もやがかかったような語りで、その人生が次第に明らかになっていく。薄幸な人生、でも、人生、悪いこともあれば良いこともある。次第に明らかになっていく真実、読み応えありました。でも、歳を取るのってやだなー。
その他、2冊。
◆りゅうおうのおしごと! 盤外編2 (GA文庫・白鳥士郎)
名残惜しくもあと1巻で終わってしまう「りゅうおうのおしごと!」も番外編で一休み。中編が2編、JS研とのロリキャンプと運動会はこれはあの名人とのハワイの竜王戦前夜の話。何も考えずに楽しく読みました。
◆シャーロック・ホームズの凱旋 (森見 登美彦)
シャーロック・ホームズとワトソンが京都に住んでる!これは森見さんのパロディ小説?と思ったけど、中盤でロンドンと京都がつながってパラレル・ワールド展開。どっちの世界線が本筋になるのか、終盤は怒涛の展開でした。ホームズが登場するけどミステリー要素はほぼなし。面白いことは面白かったけど、読後感はややもやもや。