やりましたね。米澤さん!ミステリー四冠、直木賞、山田風太郎賞ダブル受賞。
米澤さんって、基本的にミステリー作家と思っていたので、に歴史小説は書けまい、黒田官兵衛をホームズにした時代推理小説だろうと勝手に決めつけていたのですが、いやいや、これは立派に歴史小説です。
天正6年の荒木村重の信長に対する謀反と籠城戦が小説の舞台になっています。
謀反は歴史の事実として知っていたし、その際に説得に当たった黒田官兵衛が捕らわれ土牢に入れられてしまったことは、NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」の通りに理解してましたので、官兵衛を岡田准一さんに脳内変換して読み進めました。(荒木村重役が誰だったかは忘れた💦
大河ドラマの主役は黒田官兵衛だったが、この小説は守将の荒木村重の視点で展開していく。毛利の援軍をひたすら待つばかりの長期の立て籠もり。危機は確実に迫っているが、為す術はなく身動きは出来ない、四面楚歌の閉鎖空間。その過酷な状況の中で、堅固だったはずの城の守りが、疑心暗鬼や気のゆるみからなすすべなく崩壊していく。
村重と官兵衛の人物造形も見事。智謀の面では官兵衛以外に相談相手になるものはいない状況で、官兵衛は村重に対し、城内で起きた事件の解決に向け的確な示唆を与える。
なぜ敵の村重に、それは自己顕示欲なのか、官兵衛の乾坤一擲の仕掛けなのか。
第166回直木賞の受賞作は、本作品と今村翔吾さんの「塞王の盾」、奇しくもいずれ戦国時代の籠城戦を舞台にした歴史小説でした。
歴史小説が本職の今村さんの作品は、圧倒的にド派手な戦国エンターテインメント、一方で本作はわくわくするような戦国ならでは攻防戦はないものの、重苦しくなるような心理戦にページを繰る手が止まりませんでした。
全くの余談ですが、若い頃仕事の関係で伊丹にあった会社の独身寮に6年間住んでいました。今では公園になっている有岡城跡ですが、当時はさびれた商店街があるばかりで、ここにお城があったことを示す痕跡は何もなかったように思います。
寮のあった場所はJR伊丹駅から徒歩5分ほど、本丸からは多少離れてはいるものの、総構えの中だったことは間違いありません。知らなかったなー。