平凡な日々に飽き飽きとして生きる高校生のカヤ。16歳の誕生日を迎えた直後、深夜のバス停で出会ったのは爪と目しか見えない異世界の少女だった。真夜中に邂逅を重ねるうち、互いの世界に不思議なシンクロがあることに気づき、二人は実験を始める―。ああ、俺は、あの子の、英雄になれるじゃないか。大ベストセラー『君の膵臓をたべたい』の著者が描く、初の恋愛長篇!
(「BOOK」データベースより)
住野よるさんは、好きな作家さんで、基本的に全部読むことにしています。
読み始めて、最初は「なんじゃこれ?」と思いました。
序盤のカヤとチカの部分は、まずカヤに全く共感できない。一方で、チカについては、異世界人と見せて誰かが変装してるんじゃないのとか、深読みしてたのですが、、、
結局チカの世界のこととか、戦争とか、「みつからないように」という別れの挨拶とかは謎のまま。
それでも現世に無関心で、周囲から相手にされないカヤくんは、この謎の異世界人と心を触れ合わせ、恋愛の対象としてしまう。彼女のために、クラスメートの犬をさらって死なせてしまったり、学校のチャイムを壊したり、彼女のためならやりたい放題。
延々と続くカヤの異世界交流とねじ曲がった思考を冗長に感じ、なんじゃこの話!?と思ったが、後半は「そうきたか」と一気読みでした。
元クラスメートの沙苗と偶然再会し、成り行きで付き合い始めることになっても、高校時代のチカとの恋愛で人生のピークは終わったと感じているカヤは相変わらず。なまじ処世術を覚えて、ますます嫌な奴になっていた。
自分も、確かに高校時代は人生今がピークと思っていたけど、今も、この歳になっても、もう一花さかせたいと思っているので、ここでも彼に全く共感できない。
でも、自らの転勤話がきっかけになり、沙苗に初めて心情を吐露することによって、彼は独りよがりを脱し、変わることができた。タイトルの「この気持ちもいつか忘れる」そのままのラストは、十分に納得できるものだった。
人間の脳ってよくできたもので、楽しかった記憶は風化しても、それが楽しかったということは覚えている。
日々しっかり生きて、死ぬまで新しいことを積み重ねていこう。そう思わせてくれる、いままでの住野さんの作品とは一風変わった、でも強く印象に残る作品でした。