あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。(「BOOK」データベースより)
常識、秩序、正義、協調性、、、人間が社会生活を送る上で必要なものだけど、その枠にはまれない人、それをとてつもなく窮屈に感じてしまう人は少なからず存在する。この小説の主人公の少女・更紗と青年・文(ふみ)もそんな二人。
自由な生活を送っていた両親を失い、常識的な伯母の家に引き取られた更紗は、そのがんじがらめの生活に耐えられず、たまたま公園で少女たちを眺めていたロリコン大学生の文に助けを求める。
厳格な母親に育てられ、ストレスを感じていた19歳の文と、9歳の更紗の奇妙、気ままで心地よい同居生活、しかしその生活は、二人で動物園に出かけるという自壊的行動により2か月で終わることとなった。警察に事情を説明できないまま、文は少女誘拐・監禁の犯人となり、更紗はその犠牲者となった。ちゃんと自己主張ができない、愚か、世間知らずにもほどがあると言ってしまえばそれまでだけど、、、
伯母の家で再び従兄の性的暴行を受けた更紗は花瓶で彼を殴って怪我を負わせ、叔母の家を出て養護施設で高校を卒業した。お相手の亮くんの束縛に違和感を感じながらも同棲を続ける更紗は、偶然にも大人になった文と再会するが、彼は更紗に気が付いていないようだ。
当然の事のように一方的に結婚話を勧めようとする亮くんに煮え切らない態度を取り続ける更紗、亮くんのいらだちはやがてDVとなり、更紗は、文の下へ逃げ出すが、、、
身内も、世間も、多様性を認めてくれない。世間からはみだしてしまった、惹かれあう二人のヒリヒリするような運命。自分たちと違うものを異物として排斥する他人に対する非寛容さ、真実なんて当事者しか分からないのに、興味本位でそれを拡散するネット社会の罪、なんだか嫌な世の中になっちゃたなという想いが強い。
ラストにはほっとさせられました。読みやすかったけど重い話。さすがの本屋大賞受賞作でした。
凪良ゆうさん、初読みどころか、今まで全く名前も知らなかった作家さんです。こういう作家さんが一発で賞を取るって、直木賞みたいな、大手出版社と大御所の作家さんが選考する賞ではあまりないこと。選考委員の本屋の店員さんに拍手!