「美しき愚かものたちのタブロー」(原田マハ) アート愛に溢れた西洋美術館誕生秘話 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

美しき愚かものたちのタブロー

日本に美術館を創りたい。ただ、その夢ひとつのために生涯を懸けた不世出の実業家・松方幸次郎。
戦時下のフランスで絵画コレクションを守り抜いた孤独な飛行機乗り・日置釭三郎。
そして、敗戦国・日本にアートとプライドを取り戻した男たち――。
奇跡が積み重なった、国立西洋美術館の誕生秘話。

 

国立西洋美術館の松方コレクションのことは、何となく知っていた。4年くらい前に、東京都美術館でやっていた「モネ展」を見に行ったついでに、この西洋美術館の常設展も見て「こっちにも、モネ、あるじゃん」と思った。でも写実的な宗教画も多くて、大原孫三郎が作った倉敷市の大原美術館と比べると、コレクションとしてのインパクトは少し弱かったかな。

 

でも、20世紀初頭、当時は前衛芸術だった印象派やそれに続く作品群を、ほぼリアルタイムで、それも日本の文化の発展のために私財をなげうって集めた松方さんの志には感銘するし、国際人で天真爛漫な人柄にも惹かれるし、その松方さん言いつけを、松方さんと連絡が取れなくなっても、愚直なまでに必死に守った日置さんにも心を動かされる。

原田さんの作品っていると、アートに対する愛の圧倒的な熱量なのだけど、この作品に関しては、ノンフィクションっぽさがちょっと勝ってしまった印象あり。松方さんか日置さんのどっちかに絞って、もっと創作しちゃったほうが読みごたえがあったかも。

 

原田マハにしか書けない日本と西洋アートの巡りあい物語だけど、原田さんの作品が直木賞候補になったのは「楽園のカンヴァス」「ジヴェルニーの食卓」「暗幕のゲルニカ」に続いて4回目だと思う。そして、今回も、残念でした。この4作だと、やはり一番は「楽園のカンヴァス」かなー。最初にすごいの書いちゃうと、なかなかそれを越えられないですよね。