「下町ロケット ヤタガラス」(池井戸 潤) 日本の農業再生へ、熱い想い溢れる勧善懲悪ストーリー | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

下町ロケット

 

帝国重工の財前が立ち上げた新たなプロジェクトは、準天頂衛星「ヤタガラス」を利用した無人農業ロボット。社長・佃航平の学生時代からの盟友である北海道農業大学の野木教授共々、佃製作所は、このプロジェクトにエンジンとトランスミッションを供給するかたちで参画する。ところが、財前の上司で社長候補のヒール、的場によりエンジン、トランスミッションは内製化に方針変更、佃製作所はプロジェクトから外されてしまう。

佃製作所を裏切った伊丹社長のギアゴーストは、佃のライバル企業ダイダロスらと組んで同様の無人農業ロボットプロジェクト「ダーウィン」を立ち上げる。技術面でも、話題性でも、完全にダーウィンの後塵を拝す帝国重工。

一方で、実家のコメ作り農家の後継ぎに収まった佃製作所の元番頭・殿村の収穫間近の田んぼを洪水が直撃する。

 

どうしようもなく八方塞がりと思えるこの局面で、さあ、どうする!という、人気シリーズ第4弾。いつもどおり分かりやすい善玉と悪役、そしてどん底から逆転劇が始まる勧善懲悪のストーリー。どうしたって最後は正義が勝つわけで、安心してハラハラドキドキ、感動できる。それに加え、今回はTVドラマも視聴済みだったので、さらに安心。

 

でも、それだけではない。この作品には、日本の農業の未来という重いテーマがある。企業とて大義を忘れてはいけない。小規模・零細、若者離れで超高齢化した農業の再生にかける企業人の熱い想いについ涙ぐんでしまう。池井戸作品は理屈抜き!

 

実際、日本の農業はほぼこの通りの危機に直面している。今も頑張っているであろう名もなきたくさんの財前、佃、野木たちにエールを送りたい。