「新 東京いい店やれる店」(ホイチョイ・プロダクション)実は結構真面目なレストラン・ガイドブック | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

やれる店

 

「東京いい店やれる店」が発刊されたのは1994年、バブルは崩壊するも、今にして思えばまだまだその残り香が感じられた時代、男の本能を出来るだけたくさんのメスと交尾することと定義し、味は二の次、その目的にかなうレストランをリストアップした、考えようによっては料理人をバカにしたレストランガイドであった。

 

その発刊から18年、伝説の書が「新 東京いい店やれる店」としてリニューアルされた。実際に読んでみると、タイトルや表紙絵の軽薄さとは裏腹に、意外と真面目なグルメ本、食文化のうんちく本に仕上がっていた。前作ではほとばしる若さを感じさせていたが、18年の歳月はホイチョイをもしっとりと大人にしたということだろうか。

 

レストランの価値は味のみではない。内装や接客、ロケーションや客層などの要素も当然加味されるのはミシュランでも同じこと。デート向きの店ということに焦点を絞ったこの本は、実に真っ当なグルメガイド本である。

 

二人で飲んで食べて15000円とか、1時間6000円とかの価格設定が、チェーン居酒屋やB級グルメに慣らされてしまった自分たちにはやや高めに思えてしまうが、アメリカやヨーロッパは言うに及ばず、香港や上海でも、ちょっとしたところへ行けば軽くこれくらいの値段はする。日本のレストランの料理やきめ細かなホスピタリティを思えば決して高くない。

 

これだけ多様な選択肢がある我々東京人はラッキーである。デフレに慣らされ、ダンディズムまで忘れてしまってはいけない、そんなことをふと思った。