「大雪物語」(藤田 宜永) 大雪が演出する非日常で心がふれあう | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

大雪物語

 

ある冬、N県K町が観測史上初の99センチという豪雪に見舞われる。町民をはじめ観光客、仕事のため車でK町に訪れた人々は、駅や車中など長時間足止めを余儀なくされた。町、県、国レベルの除雪作業も追いつかず、町の深刻な状況から災害救助法が適用され、自衛隊の派遣も要請される。

そんな非日常のさなか、紡がれる6つのストーリー。「冷たいからこそ、人はより一層心を温かくさせる」

(「BOOK」データベースより)

 

2014年2月に関東甲信越に降った豪雪、奥様の小池真理子さんとともに軽井沢に住まわれている藤田さん、この話はその実体験を基にしたものなのだろう。秩父地方にも1m雪が積もって自衛隊が災害出動していたが、人工とはいえスキー場もある軽井沢が、1m程度の雪でこんなことになるなんて、ちょっと意外。

 

昨年の吉川英治文学賞受賞作品である。

逃避行を続けるひったくり犯の青年が独居の老婆と心のふれあいの「転落」、遺体搬送中の車の中で、運転手と喪主の女性が昼夜を過ごす「墓堀り」、女子高生が道に迷い山男に助けられる「雪男」、店を避難所として開放した花屋が昔の彼女に出会う「雪の華」、災害出動の自衛隊員が家を飛び出した姉と再会する「わだかまり」、著名なピアニストが別れた妻と再会する「雨のプレリュード」、大雪が演出する非日常の中、偶然出会った人たちが、極限の状況の中で心を触れ合わせる、ほっこりさせられる作品。どれも甲乙つけがたい佳作で、簡単に読める割にはしっかりとした読後感が残る。

 

藤田さんというとハードボーイルドなミステリー作家のイメージだったのだが、かなり印象が変わったかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みやすかった。