「愛と禁忌の述語論理(プレディケット)」(井上真偽)ラノベっぽいキャラと超難解な謎解き | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

恋と禁忌の術語論理

 

大学生の詠彦は、天才数理論理学者の叔母、硯さんを訪ねる。アラサー独身美女の彼女に、名探偵が解決したはずの、殺人事件の真相を証明してもらうために。

詠彦が次々と持ち込む事件―「手料理は殺意か祝福か?」「『幽霊の証明』で絞殺犯を特定できるか?」「双子の『どちらが』殺したのか?」―と、個性豊かすぎる名探偵たち。すべての人間の思索活動の頂点に立つ、という数理論理学で、硯さんはすべての謎を、証明できるのか!?

第51回メフィスト賞受賞作!!

(「BOOK」データベースより)

 

面白ければ何でもありのメフィスト賞受賞作だし、年末の「本格ミステリ」の5位くらいにランクインしそうな作品なので、それなら先回りして読んでおこうと手に取りました。

 

そして、難しすぎて、何度か寝落ちしました(笑)。

 

アラサー独身美女の天才数理学者とその甥っ子の大学生、二人の間にほのかに匂う禁断の恋の雰囲気。設定はラノベっぽくていいのだけど、肝心の推理の展開に、頭がついていきませんでした。

 

詠彦くんの身近でおきる殺人事件、それを解決するあやめさん(「スターニアスと命題論理」)、中尊寺さん(「クロスノットと述語論理」)の美人探偵、さらに3作目の「トリプレッツと様相論理」では、著者の別シリーズ「その可能性すでに考えた」の探偵・ウエオロさんまでが登場。この時点で、既にお腹いっぱいの推理が展開され、事件は解決済みと思われます。

その解決済みの事件を詠彦くんが硯さんに持ち込み、彼女が数理論理学を使ってアームチェアで否定してしまうのですから、普通の本格ミステリのさらにななめ上を行ってます。

いったい著者の頭の中はどのようになっているのか、感心せずにはいられません。

 

エピローグでは、詠彦くんが解決済みの事件を持ち込む理由もあっさり硯さんに見抜かれ、また二人の血縁関係についても余韻を残したまま終了、これもウエオロさんの「その可能性はすでに考えた」同様、シリーズ化されるのかな。

 

ま、井上真偽さんの場合は、キャラがいかに漫画っぽかろうが、現実離れしていようが関係ない。何せ本格ミステリですから。

犯行の動機とか、犯人ばかりが悪いのではない、社会が悪いんだ、とかは一切なし。東野圭吾さんの直木賞受賞作「容疑者Xの献身」などとは対極にある、ただただ、誰が、どうやって、犯行を実行することが可能だったのかを考える知的ゲーム。

小説を『作者の構想を通じて、人物や事件、人間社会を描き出そうとする、話の筋をもった散文体の作品』と定義するなら、もはや小説ではない。純粋に『本格ミステリ』です。

 

自分は、そもそも本格ミステリが苦手ですが、そういうのが好きな人にお勧めの一冊です。