「リーチ先生」(原田マハ) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

リーチ先生
日本の美を愛し続けた英国人陶芸家、バーナード・リーチ。明治42年、22歳で芸術の道を志して来日。柳宗悦、濱田庄司ら若き日本人芸術家との邂逅と友情が彼の人生を大きく突き動かしていく。
明治、大正、昭和にわたり東洋と西洋の架け橋となった生涯を描く感動の“アートフィクション”
(「BOOK」データベースより)
 
20世紀初頭、東の端の島国、日本は、西の端の島国、英国と同盟を結んだ。日の沈まぬ大国と勃興したばかりの新興国の交流が始まる。
西洋と東洋の架け橋になろうと単身渡航した青年リーチは、日本で陶芸に魅せられる。柳宗悦や武者小路実篤ら白樺派の面々や、のちに陶芸家として偉大な足跡を残す富本憲吉、濱田庄司、河井寛次郎らと熱い友情を交わし、陶芸の才能を開花させていくリーチ。
やがて彼はさらなる成長を求めて、亀乃介や濱田を伴い帰国。イギリスの西端、セント・アイヴスに工房を開く。
そんなリーチの活躍を、彼の弟子、沖亀之助(架空の人物ですよね?)の眼を通じて描く。
リーチ先生の人柄に魅せられた亀乃介は助手となり、彼の志をひたむきに支えていく。リーチ先生と亀ちゃん、二人のの師弟愛が暖かすぎて、どうしてもそっちに目がいってしまう。
 
時が流れて1954年、イギリス人陶芸家バーナード・リーチは大分の焼き物の里・小鹿田を訪れる。その世話係を命ぜられた少年の亡父が、実は亀之助だったという、この辺は原田さんお得意の時空を超えたストーリー。
 
アートアンドクラフト、実際に日常の生活で使ってこそアート、陶芸って良いですね。
それにしても、芸術というものは、ここまで人間を向う見ずにさせるものなのか。
原田さんの美術ネタというと、ピカソや、モネ、マティスといった印象派の巨匠とか、そういう話が多いのですが、これはまた地味な、暖かい、でもいつも通り芸術に対する愛情にあふれた、とても素敵なお話でした。