「ガラパゴス(上)(下)」(相場英雄) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

古い団地の一室で、自殺に偽装して殺害された心優しき青年。彼は、遠く故郷を離れ、日本中を転々とする派遣労働者だった。「世界でいちばん企業が活躍しやすい国」とは、「世界でいちばん労働者がこき使われる国」である。

警察小説史上、最も最酷で哀しい殺人動機。ガラパゴス化した日本社会の矛盾を暴露する、危険極まりないミステリー。

(「BOOK」データベースより)

 

警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、リストから、自殺に見せかけて殺害された身元不明の青年をみつける。遺体が発見された現場を訪れた田川は、わずかな隙間から「新城 も」「780816」と書かれたメモを発見する。

入念な聞き込みとメモから、不明者は沖縄県出身の派遣労働者・仲野定文と判明、仲野は福岡の高専を優秀な成績で卒業しながら派遣労働者となり、日本中を転々としていた。

田川は、仲野が非正規雇用労働者として勤務していた三重県亀山市、岐阜県美濃加茂市を訪れる。そこで田川が目にしたのは国際社会に取り残され、島国で独自の進化を遂げる国内産業の憂うべく実態だった。

田川は仲野殺害の実行犯を追いながら、コスト削減に走り非正規の人材を部品扱いする大企業、人材派遣会社の欺瞞に切り込んでいく。

 

と、まあ、社会派ミステリー、です。

この状況は、リーマンショック後の、世界経済恐慌の頃でしょうか。

確かに、日本の消費者の好みは独特で、日本の市場ニーズでモノを作っても世界では勝てない。少子高齢化する日本の市場は縮小こそすれ、拡大はしない。

世界経済が冷え込んだから、日本の市場にモノが流れるように、エコポイントだとか、政治はあの手この手で日本でしか通用しないものに補助金をつけた、ということか。

でも、日本食、アニメ、日本独特のもので世界に通用するものもあるにはあるし、工業製品だって、デジカメのように、日本品シェアほぼ100%の製品もある。

あの時は雇用はかなり悲惨な状況になったけど、モノさえ売れれば、企業は安定雇用のために人を囲い込み始めるはず。

目先にとらわれず、中長期的視野に立った政策が望まれます。

 

小説の方は、マンモス派遣会社が悪の巣窟だったわけで、創作上の話とは言え、とんでもない会社があり、とんでもない警察官がいたものです。事件は解決しても、読後感はあまりよくありません。

現実は、世の中は好転しつつあるし、これからはもっと良くなる。そう思いたいです。