私が中学生の時。
Kちゃんと言う、同級生が居ました。
Kちゃんからは。異臭がしていました。
制服も体操服も靴下もヨレヨレ。靴は汚れで真っ黒。そして、凄く痩せていました。Kちゃんには1学年上のお兄さんが居ましたが、彼も同様でした。
今、思えば。
ネグレクト(育児放棄)だったのだろうと察します。
中学2年生の時に、Kちゃんと同じクラスになりました。男子も女子も、「臭い!臭い!」と大騒ぎでした。私も正直、(う!臭い!)と心の中で思っていました。
今でも忘れられないのは。
修学旅行前日の事です。
Kちゃんは元々不登校気味でしたので、学校をお休みしていました。
私も含めてクラスメートは、翌日からの修学旅行が楽しみでたまらず、テンションマックスで大騒ぎ。
その時。
担任の先生が、静かに話してくれました。
Kちゃんは、修学旅行に行きたがっていたけど、修学旅行積立をして貰えなくて、行けない事。
Kちゃんは、修学旅行に行けなくて、ワンワンと泣いた事。
修学旅行に行ける事を、お前達は感謝するべきだ、と言う事を。
クラス中が、静まり返りました。
私は、Kちゃんに思いを馳せました。
私がもし、Kちゃんなら。
電車内やバス内。女子部屋。浴場。
嫌がられるに決まっています。
修学旅行は三泊四日。
行かなければ、自宅で過ごす事になります。
私なら、絶対に修学旅行に行きたくありませんし、自宅で過ごす方が余程気楽です。
ですが、Kちゃんは、泣くほど、行きたかったのでしょう。
私は修学旅行で、Kちゃんへのお土産に、小さなキーホルダーを買いました。帰ってからKちゃんに渡したら。彼女は、困惑したような、はにかんだような表情を見せてくれました。
Kちゃんとお兄さんは、中学校を卒業後、どこにも進学しませんでした。
Kちゃんとお兄さんが、今どこで、何をしているのかは全く分かりません。
ですが。
幸せであって欲しい、と想います。
私がKちゃんに、お土産としてキーホルダーを渡した行為。
あれは、正しかったのか、逆に残酷だったのか…。
未だに、答えが出ません。
その答えは。
永遠に、出る事は、無いでしょう。