君と並んで座った海辺の堤防。
その君はもう僕の隣にはいない。
「ずっと一緒にいてね。約束だからね」
今でも浮かぶ君のちょっと切ない微笑み。
僕の肩に頭(こうべ)を預けて、
「あなたと出逢えて幸せなの。本当の愛って
見返りなんていらないんだって。
あなたがこうして、私の傍にいてくれるだけで
私は素のままで居られるの」
夕日が水平線に隠れて、東の空からは月の
光が僕らを包もうとしていた。
「僕も幸せなんだ。頼まれなくたって、ずっと
傍にいるから。生きててよかった。こんなにも
愛せる君と出逢えたんだから」
「もう、馬鹿。そんなにストレートに言われたら、
恥ずかしいよ」
「よく言うよ。そっちが先に言ったくせに」
君は顔を赤らめて、視線を逸らした。
「紅茶と愛の告白はストレートが一番!」
まるで、紅茶のCMのコピーのような台詞。
自然と僕の口から飛び出していた。
その台詞を聞いた君は、逸らしていた視線
の向きを僕の瞳に合わせて、
「大好き!」
と叫んで、僕の胸に飛び込んできたね。
60分くらい、僕らは抱き合い続けたんだ。
その時だったね。
僕が君にプロポーズしたのは。
「こうして、ずっと素直な君を抱きしめて
いたいんだ。家に帰って『ただいま』を
言う時に『おかえりなさい』と言ってくれる
のは君以外考えられない」
離したくなかった。
離れたくなかった。
だけど、君は……
この海に来て、夕日を眺めると君の
ことを思いだすんだ。
今でも、君と語り合ったあの頃を。
君と抱き合ったあの時を。
『愛する君へ
僕はまさか君が隣にいないこの海
からの夕日を見ることになるなんて、
思いもしなかった。
だけどね。君の心と僕らの愛の結晶は
ちゃんと生き続けていくからね。
いつになるか分からないけど、僕も
いずれ君と同じ世界に行くから、さよなら
は言わせないでくれよ。
そうそう。
今日僕は、君の遺言に従って、お墓に
納骨するのとは別に散骨するために
遺骨を持ってきた。
君と永遠(とわ)の愛を誓ったこの堤防
から、僕は君の新しい世界への旅立ちを
祝します!
今までずっと僕と一緒にいてくれて、
本当にありがとう!
そして、新しい世界への出発、本当に
おめでとう!
君との想い出を胸に、僕も新たな一歩
を記します。
この世で一番君が愛した男より』
そして、僕は手紙を読み終わると同時に、
君の遺骨を堤防から夕日に染まる海へと
投げ入れた。
君の骨は、キラメク放物線を描いて、海
へと溶け込んでいった。
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