脚本は阿井文瓶。監督は山本正孝。特撮監督は矢島信男。今回は「狐がくれた子」という話をモチーフにしているそうですが、私はこの話を知りません。


下町のある神社でトオル、カオル、百子はウリー(清水啓司)という男の子と知り合いました。彼は不思議な術を使って暴れました。念動力で神社の灯籠や鳥居も動かしてしまいます。その事件を察知したダンとゲンは出動し、ウリーと遭遇しました。トオルからウリーが宇宙人かもしれないと聞いたダンはウリーを追跡しました。ダンのうしろで「中央区子供の遊び場」という文字がかかれたものが浮いていたので、中央区でロケーションをしたのでしょう。ウリーが念動力を使って暴れるのでダンもウルトラ念力で対抗しました。ウリーよりもダンの方が力は上でした。そしてダンは下町(おそらく佃か月島のあたり)の長屋で思わぬ人物(ひし見ゆり子)と出会いました。


ダン「アンヌ!」


少年が「ママ」と呼ぶ女性はウルトラ警備隊のアンヌとそっくりでした。ここでウルトラセブン最終回でダンが自分の正体をアンヌに告げる場面が流れますが、BGMはウルトラセブンのものを使ってはいるもののなぜかオリジナルとは別物の牧歌的なものです。微妙に合っていないのでここはオリジナルと合わせるか別の曲を使ってほしかったなあと思います。


ここで場面がセピア調に変わりました。ダンは河原の葦が茂るところで女性と会っていました。ダンは「君はアンヌなんだろ」と聞きましたが、女性は答えず、ウリーを呼びました。やってきたウリーは女性に甘えました。ダンは「その子は宇宙人なんだ。君も宇宙人なのか。」と尋ねましたが、女性はウリーと一緒に去ってしまいました。


ダンがいろいろ夢想していると、ゲンがやってきて被害の状況を報告しました。しかし、ダンは上の空。


ダン「しかし、なぜアンヌが…」


ゲンが怪訝に思って聞き返したので我に返ったダンは「なんでもないんだ」と言って誤魔化しました。


MACステーションでもダンは物思いにふけっていました。そして意を決して出て行きました。ダンはスーツに着替えて女性のところへ行ったのです。ダンは女性に言いました。


ダン「また地球に住むことになって、まず君を訪ねた。しかし、君はいなかった。誰も君の行方を知らなかった。あちこち探したよ。必ずどこかに元気でいてくれるに違いないと思って。会えてよかった。アンヌ。」


しかし、ダンの思いとはうらはらに女性はダンと目を合わせようともしませんでした。そして言いました。


女性「あたしは、アンヌじゃありません。」

ダン「しかし。」


ここで女性は振り返って言いました。


女性「アンヌじゃないんです。」


女性は立ち去ろうとしました。そこへゲンからの通信が。ウリーのせいで異常事態が発生しているというのです。その通信は女性にも聞こえ、思わず女性は立ち止まりました。不安な表情の女性を見てダンは言いました。


ダン「大丈夫だ。私に任せておけ。」


CMがあけるとウリーが遊園地で遊んでいる様子が映ります。しかし、ただの遊びではありません。観覧車は宙に浮き、ウリーはジェットコースターに乗りこんで、勝手に動かしています。ウリーに発砲しようとした MAC の隊員をダンは止めました。


ダン「相手は子供じゃないか!」

ゲン「違います。相手は宇宙人です。」

ダン「違う。俺の知り合いの人の子供だ。」


今回のダンは私情が入りまくりです。まるでゲンと立ち位置が逆になったかのようです。ゲン達はそのことを知りませんが、深く愛した人が絡んだ事件ですから、仕方のないことかもしれません。ウリーはジェットコースターに飽きたのか、今度はジェットコースターを念力で破壊しました。それを見てゲンは発砲しようとしましたが、ダンは止めました。


ダン「俺がやる。」


女性も駆けつけました。それでもウリーは念力を使い続けます。


ダン「こら。いたずらはいい加減にしなさい。」

女性「ウリー、いけません。」


ゲンは女性に尋ねました。


ゲン「あなたですね。隊長の知り合いというのは。」


女性は何も答えませんでした。河原でウリーとダンは念力で勝負。今度はダンにも疲労の色が濃くなってきました。倒れそうになったダンを見かねたゲンはついに発砲してしまいましたが、弾はウリーをかばったダンに当たってしまいました。


ゲン「隊長、すいません。隊長、僕は…」

ダン「いいんだ。あの子は?」


これを見た女性はついに今までのことを話しました。


女性「あたしの子じゃないんです。宇宙人の捨て子なんです。みんながあの子を育てることに反対しました。でも、とってもいたずらな子だけど、あたし、ほっておけなかったんです。」

ダン「やっぱり、君は…」

女性「アンヌじゃありません。隊長さん、あたしはあの子をあなたのような立派な人に育てたいと思っていたんです。


しかし、ウリーの念力は女性に被害をもたらしました。そしてウリーは巨大化し、ウリンガに変貌。ゲンはウルトラマンレオに変身しました。初めの方こそ念力で善戦したウリンガでしたが、所詮はレオの敵ではありません。パラボラアンテナでウリンガの念力を跳ね返して形勢逆転。ウルトラマントでウリンガをウリーに戻し、ウリーを宇宙に返すことにしました。ウリーが「ママー」と叫びながら女性のところへ駆け寄る場面では「ノンマルトの死者」でも使われた曲が流れます。女性はウリーと一緒に宇宙へ去ることを決意しました。気がついたダンは何度も「アンヌ」と叫びましたが、ウリーと女性はレオの手に乗り、宇宙へ去って行きました。ダンにはそれを見送ることしかできなかったのです。ナレーションがこう締めくくります。


ナレーター「あれはアンヌだったのか、それもと別人だったのか。永久に確かめる術はなくなってしまった。どこまでも晴れ上がった美しい秋空の中を二人を手にしたウルトラマンレオが行く。」


脚本では女性の正体はやはりアンヌで、ちゃんと名乗っていたそうです。なぜこのような形にしたのかは知りません。私は脚本通り名乗ってもよかったのではないかと思います。


この話が放送されてから9年と半年後、「ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦」が日本テレビで放送されました。この作品でアンヌはウルトラセブンと再会しました。アンヌは息子に「ダン」と名づけているというのが泣かせてくれました。アンヌだけではなくてフルハシも登場し、やはりセブンと再会しました。ピット星人に倒されて倒れているセブンを見て、フルハシが「地球のためにボロボロになって、ダン、おまえは馬鹿野郎だ。」と叫ぶ場面は感動しました。このような旧作を尊重した作りは当時は研究者の間で普及していたインターネット上でも話題になりました。しかし、残念ながら完璧ではありませんでした。アンヌはセブンに話しかける時、「セブン」と呼んだのです。もともと脚本では「ダン」と呼びかけることになっていましたが、ひし見さんの意見で撮影現場で「セブン」に変更したのです。ここは「ダン」のままにしてほしかった。後でひし見さんはファンにがっかりしたと言われ、反省したそうです。


今回は阿井文瓶が脚本を書きました。私は田口成光よりは阿井文瓶の方が若干力が上だったのではないかと思っています。実際、ロンの話やノーバの話は佳作になっています。ただ、前にも述べたとおり、それまでのシリーズに参加した作家陣(金城哲夫、千束北男、藤川桂介、佐々木守、山浦弘靖、山田正弘、南川竜、上原正三、市川森一、若槻文三、小山内美江子など)や師匠の石堂淑朗に比べると数段落ちることは否めないと思います。


また今回演出した山本正孝はウルトラセブンの時は助監督でした。ウルトラセブンへのこだわりはその時の経験から来ているのかなあと思います。