脚本は阿井文瓶。監督は大木淳。特撮監督は東条昭平。前回のショッキングな内容には「困ったねえ」と思ってしまいましたが、今回もそれほど内容に変わりはありません。なにしろ、演出するのは前回と同じ大木淳。題名を見てわかるとおり、題材は桃太郎。主人公の名も桃太郎。ご丁寧にも劇中では桃太郎の歌がかかります。しかも怪獣はオニオンと来たら、もう大体の内容は想像がつくでしょう。この話に取り掛かるのにはちょっと時間がかかりました。


さて冒頭のナレーションは次の通り。


ナレーター「宇宙には何千億という星があります。(ここでリンゴの形をした星が映る)その中の一つ、これは惑星アップル。事件はこの果物いっぱいの星から始まったのです。これぞ怪獣オニオン。おっかない顔に似合わず大好物は果物という変なやつ。(しばらくオニオンはリンゴを木からもいで食べている)泥棒! オニオンに果物畑を荒らされてばかりいる惑星アップルの人々は畑に番人を置いているのですが…おかしいなあ。番人は何をしているんだろう。」


しばらくオニオンがリンゴの木の下をうろうろしている様子が映った後、木の枝が映ります。するとたくさんの鶏が止まっているのがわかります。なんと本物の鶏をそのまま使っています。鶏が鳴くとオニオンは両手を挙げて驚いた顔。これが非常に間抜けな面構えです。すってんころりと倒れてしまいました。地上に降りた鶏に追いかけられ、右往左往するオニオン。


ナレーター「ハ、ハ、ハ、ハ。愉快だねえ。オニオンの苦手は何と鶏なんだ。」


しばらくオニオンと鶏を映した後


ナレーター「お話変わってここはおなじみの惑星我が地球。あれえ、ここにもオニオン、あ、いや違った。この子は確か、桃太郎という名前。」


このナレーションは本当に何とかならなかったのでしょうか。今回登場する桃太郎(吉田友紀)はお伽話と違って弱虫なのか、悪ガキどもにいじめられています。しかし、桃太郎は抵抗しようとしません。桃太郎の両親はすでに亡くなってもういませんが、それを「桃から生まれたんだろう!」とからかわれる始末。そこへダンとゲンがやってきて、悪ガキどもをたしなめました。すると悪ガキどもは退散しました。百子と梅田兄妹もいます。桃太郎は喧嘩が嫌いだと言いました。


桃太郎「でも、みんなを苦しめる鬼みたいな奴が出てきたら、きっとやっつけてやるんだ。」


このセリフと、さらに田口成光とともに「ウルトラマンタロウ」では一般人が怪獣に特攻する話ばかり書いて「僕にもタロウの脚本は書ける」と揶揄されてきた阿井文瓶が脚本と言うことで、もうお話の見当がついたと思います。そう。この桃太郎少年がオニオンに向かっていくというのが今回のお話です。それが証拠にダンへはオニオンが地球に現われたという通信が入り、直後のナレーションはと言うと


ナレーター「惑星アップルから鶏に追われて逃げてきた怪獣オニオンは果物が豊富な秋の地球を襲ってきたのです。」


話に工夫が無さすぎです。桃太郎の祖父母が営む八百屋もつぶされてしまいました。例によって MAC も歯が立ちません。どうでもいいけどマッキー2号にはゲンとダンも含めて3人も乗っています。オニオンは変な煙を吐きましたが、この煙が目にしみて MAC の隊員達は右往左往。


ナレーター「鬼の目にも涙と言うが、この鬼みたいな怪獣オニオンは玉ねぎの匂いのする霧を吐いて人間に涙を流させるんだから、ちょっとふざけてるねえ。」


ふざけているのは脚本を書いた阿井文瓶の方です。ゲンの進言で新兵器が使われることになりました。


ナレーター「MACが開発したばかりの新兵器麻酔弾が今使われようとしています。(変な溜息をついた後)でも、効くのかねえ。


このナレーションは何とかならなかったのでしょうか。麻酔弾は命中しましたが、この直後にまた珍妙なナレーションが入ります。


ナレーター「君、注射好き?この怪獣オニオンも注射は大嫌いなんだ。だからものすごく怒ってしまったんだよ。」


もはや何も言う気が起きません。オニオンが倒れてしまったのでゲンは浮かれていますが、ダンは「効果が早すぎる」と浮かぬ顔。そのダンの懸念は的中。オニオンは不意に立ち上がり、マッキーを撃墜してしまいました。とここでCMに入ります。


CMがあけるとオニオンが地上に降りたゲン達を襲っています。万事休すか、と思ったらオニオンは仰向けに倒れてしまいました。


ダン「そうか。やっと効いてきたなあ。」

梶田「よーし、腐った玉ねぎみたいにぶっ殺してやる。」


隊員達は MAC ガンで攻撃を始めましたが、オニオンは起き上がり、またあの霧を噴射しました。しまったというゲン。しかし


ナレーター「どうしたことか、その効果が半分しか現われなかったんだねえ。」


麻酔弾の効き目はあったようです。その様子を桃太郎は凝視。店を潰されて泣く祖父母を見て桃太郎は鬼退治を決意しました。さっき桃太郎をいじめていた悪ガキ達も合流し、鬼退治へと向かいましたが、あの霧にやられてしまいました。悔しがる桃太郎。一度は「MACに任せるんだ!」というゲン。桃太郎の歌が流れる中、桃太郎は鬼退治へ行くために犬(他人の家のものか?)とペットショップのサルを連れて行こうとしましたが、失敗。ここで桃太郎の歌が鳴りやみ、桃太郎は雉の代わりの鶏を抱いて歩いていました。それを見て、ゲンは桃太郎に協力することにしました。


ゲンはヘリコプターを手配し、大きな桃をつるしオニオンの近くへと飛ばしました。


ダン「ゲン、まさか。大丈夫か?」


オニオンは桃をつかむことに成功しましたが、鶏の鳴き声がしたので桃を離してしまいました。地上に落ちた桃が割れると中からは桃太郎が桃太郎の格好をして登場です。このとき、いつもウルトラマンレオが登場する時に流れるファンファーレが流れます。桃太郎は弓矢を射ちました。弓が左目に当たるとなぜか矢が爆発。もう一発射ちましたが、今度はオニオンが金棒で防ぎました。ここで麻酔が切れてしまいました。桃太郎はもう一発射ちました。すると


ナレーター「狙いは正確。(ビヨーンという音がしてオニオンのパンツがずり落ちる)さあ、困ったのは怪獣オニオンだ。いやあ、本当に困るよねえ。こういうとき、君も経験ある?」


私はそんな経験無いです。桃太郎に危機が迫ったのを見てゲンはレオに変身。しかし、いつもの勇壮な曲ではなく、のんびりした曲です。だから緊張感がありません。大木淳さん、何とかならなかったのですか。しまいには桃太郎が流れる始末。レオはオニオンの角を切断した後、オニオンを大きなリンゴの木に変えてしまいました。桃太郎はオニオンの角を荷車に載せてひいていきます。


ナレーター「鬼の角はおじいさんやおばあさんの神経痛の薬になるんだよ。こんなにたくさんあれば、たくさんのおじいさん、おばあさんが喜ぶぞう。さあ、犬が後を押すえんやらやー。」


やれやれ。やっと終わりました。民話を題材とするのはよい着眼点だとは思いますが、大木淳演出の二本については失敗だったと思います。あのナレーションは民話の語りを意識したのでしょうが、子供に媚び過ぎです。これではウルトラマンレオなのか民話なのか、よくわかりません。田口成光、阿井文瓶、大木淳の三人の罪は大きいでしょう。大木淳さんは特撮監督ではウルトラセブン第8話「狙われた街」に代表されるように名演出を連発しましたが本編監督としてはそれほど力がなかったように思います。次の話は若槻文三さんが脚本担当。浦島太郎をベースにしていますが、前回と今回よりはマシな作品にはなっていると思います。