脚本は阿井文瓶。監督は外山徹。特殊技術は矢島信男。前回と同じ布陣です。


東京近郊に怪獣ベキラが登場しました。ゲンはマッキー2号に青島と一緒に搭乗していました。すぐに倒してみせるというゲンに、青島は指揮は自分が執ると釘を刺しました。さてベキラはミサイルもナパームも効きません。ゲンはレーザーを撃ちました。青島はベキラの目を狙うように命じました。マッキー2号と3号のレーザーがベキラの目を狙います。しかしマッキー3号は撃墜されてしまいました。青島はなおも攻撃を続けるよう、ゲンに命じました。しかしそのとき、ゲンは大村の姿を見かけました。そして攻撃をやめてしまいました。しかし青島は、ここ一帯は避難命令が出ているはずだ、一人の不注意(逃げ遅れたこと)のために多数の人を犠牲にはできない、攻撃を続けろ、と命じました。しかしゲンは命令に従いません。それどころか、大村を避難させてから攻撃しろ、とゲンは主張しました。青島がそれを拒否すると、ゲンは勝手に脱出してパラシュートで降下。大村のところに近づきました。大村はパチンコに夢中になったために逃げ遅れたと話しました。のんきな大村は落としたパチンコ玉を拾う始末。いらいらした青島はベキラを攻撃しましたが、撃墜されてしまいました。それを見たゲンはマックガンで攻撃しました。そしてゲンは、ベキラの弱点が背中だということに気がつきました。しかし…


MACステーションに戻ったゲンは皆に攻められました。青島からは命令違反を責められ、それに呼応して黒田はゲンがスタンドプレーばかりだと責めました。ゲンは背中が弱点だということを見つけ出したことを主張しましたが、黒田は怪獣が背中を向けないかもしれない、と一蹴。なおもゲンをなじる青島をダンは怒鳴って止めました。そしてダンはゲンに1週間の謹慎を命じました。ゲンはダンの真意をわからず、ダンに文句を言いました。それを咎めた青島にダンはベキラの対策を急ぐように命じました。


ダンのところに詰め寄ったゲンは、ベキラの弱点を知っているのは自分だけなのに自分が謹慎している間にベキラが現れたらどうするつもりなのか、と尋ねました。ダンは、ゲンがいなければMACはどうにもならないと考えていることが他の隊員に好印象を与えていないのがわからないのか、とゲンを責めましたが、ゲンは納得できません。馴れ合いの友情やチームワークに何の意味があるのか、とまで言い放ったゲンをダンは怒鳴りつけましたが、ゲンはなおも納得しません。戦っている間に自然に生まれるのがチームワークだとゲンは言いました。するとダンは、今はゲンはベキラとは戦えない、自分と一緒に来い、と言って体育館に連れ出しました。そして一言。


ダン「俺の背中を攻撃してみろ。」


ゲンは絶句してしまいました。ゲンにも具体的な策はなかったのです。ゲンは闇雲にダンに飛び掛りましたが、すべてかわされてしまいました。自分の愚かさを悟ったゲンにダンは言いました。秩父の我心山の中にある白雲庵という寺に住む十貫という和尚に会え、と。


ゲンはオートバイを駆って白雲庵に行きました。そこに現れた老人(明石潮)にゲンは十貫のことを尋ねました。老人は「また厄介なことを持ち込んできたな。」と呟き、さらに十貫は留守だといって立ち去ろうとしました。ゲンはその態度から老人こそ十貫であることを見抜きました。ゲンは土下座して、ベキラのために何か教えてくれ、と頼みましたが、十貫は、そんなことはわからない、と言ってゲンを追い返そうとしました。


ゲンは十貫の腕を試そうと、十貫が炭焼きしているところを背後から不意打ちしましたが、十貫はゲンの振り下ろした棒をよけず、棒で殴られてしまいました。本当に十貫がベキラを倒す方法を知っているのだろうか。一人で闇雲に特訓するゲン。その様子を十貫と子供が見ていました。それに気がついたゲンは十貫の後をつけました。そしてゲンは見ました。十貫が子供を抱え、ジャンプして崖を飛び蹴りし、その反動で川の対岸に渡ったことを。ゲンはこれがベキラを倒す技だということを悟りました。ダンがゲンを十貫の元に派遣した意味はこれだったのです。十貫は雑念を捨ててやってみろとアドバイスしました。それからゲンの特訓が始まりました。最初はできなかったものの、ゲンはついに技を完成させました。それを見た十貫は、ベキラが東京に現れたことをゲンに告げるのでした。


ベキラの攻撃にマッキーは撃墜されました。ダンは地上からマックロディで攻撃していました。青島は背中を攻撃することを主張し、ベキラに向かっていきました。ダンは青島を援護するように命じましたが、青島に危険が迫ります。そこへバイクに乗ったゲンが駆けつけました。ゲンは青島を助けました。


青島「おおとり、俺も命令違反してしまったよ。」


青島はゲンに詫びました。青島のマックガンを受け取り、ゲンはベキラに向かっていきました。青島はゲンのバイクで戻りました。ゲンに迫るベキラ。ゲンはウルトラマンレオに変身しました。レオは優勢に戦いを進めました。まずエネルギー光球をベキラに浴びせました。そして山を一旦蹴ってその反動でジャンプしてベキラの背中をキック。二段蹴りが決まってベキラは倒されました。


ダンは青島に5日間の謹慎を命じました。ゲンも謹慎期間が5日間残っていました。しかしダンの真意を懲罰ではありません。青島には怪我を治せと言い、ゲンには、大村からの言付けを伝えました。この頃忙しくてパチンコに行く暇がない。スポーツセンターを手伝ってほしい、と。


大村が逃げ遅れたためにゲンが攻撃をやめる場面は「帰ってきたウルトラマン」第5話「二大怪獣東京を襲撃」の、郷秀樹(団時朗)が子供を見かけたためにMATの岸田隊員(西田健)の命令に背いてグドンにMN爆弾を撃ち込むのをやめる場面が元になっているのでしょう。しかし、両者にははっきりとした違いがあります。


「帰ってきたウルトラマン」第5話では郷から話を聞いた坂田(岸田森)は郷に「見たなら見たと主張し続けるべきだ」と言い、本当に子供がいたのかどうかは描かれませんでした。そして郷は最後まで自分の主張を貫き通し、岸田との対立どころかMATの組織自体に対して反抗するのです。このことはつづく第6話終盤で坂田が東京大空襲の体験を話して避難を拒否する場面の伏線になっています。


しかし「ウルトラマンレオ」ではこの場面がクローズアップされることはありません。大村登場シーンではこの場面には場違いなコミカルな音楽が流れ、この場面が話題になるのも直後の基地の場面だけです。そしてゲンの反抗は単なる思い上がりとして片付けられてしまうのです。


これは「帰ってきたウルトラマン」の話を書いた上原正三と「ウルトラマンレオ」第8話を書いた阿井文瓶の脚本家としての資質の差ではないかと思います。上原正三が怪獣やMAT(これは旧日本軍や米軍の暗喩でしょう)に翻弄される一般市民の苦しみ(これは沖縄戦の犠牲になった沖縄人の暗喩でしょう)を描くことが「帰ってきたウルトラマン」第5話と第6話のテーマだったのに対し、上原ほどのテーマ性を持っていなかった阿井文瓶はそこまでは目が行かず、単にゲンの未熟さのみを描くだけにこのシーンを入れたのです。ドラマとしてはどちらの方が出来がよいのかは一目瞭然でしょう。ツインテールとグドンが登場する前後編は名作として語り継がれているのに、ウルトラマンレオの第8話は特別話題にのぼる機会が少ないです。阿井文瓶は橋本洋二に、ウルトラマンはテロリストのようなものではないか、と言った事があるそうですが、残念ながら阿井の書いた作品からはそのようなテーマを感じることは私にはできませんでした。


「ウルトラマンタロウ」までの第二期ウルトラシリーズで辣腕を奮い、「ウルトラマンレオ」の初期数話にもクレジットされていた、TBS側プロデューサーの橋本洋二は作品にテーマ性を求めました。その方針に従って作られた「帰ってきたウルトラマン」は上原正三や市川森一などが活躍し、名作になりました。しかしこの二人に続く人物は登場しませんでした。この弱点は「ウルトラマンタロウ」では表面に現れませんでしたが、より硬質のドラマを目指した「ウルトラマンレオ」では一気に表面化してしまったのです。「ウルトラマンレオ」の初期がワンパターンに陥ってしまったのも、脚本を書いた田口成光と阿井文瓶に上原や市川ほどの力量がなかったためではないでしょうか。実際に作品を見て、私はそう思いました。実際、私の好きな作品が登場する中盤以降は若槻文三や石堂淑朗が参加し、バリエーションが増えたと同時に、作品の質もよくなったのではないかと思うのです。もっとも、石堂の作品には賛否両論あるかもしれませんが。