脚本は阿井文瓶。監督は東条昭平。


さて城南スポーツセンターの面々はマイクロバスで相模湖ピクニックランドまで遠足に出かけました。しかし、トオルは楽しくはありませんでした。父を亡くした悲しみを忘れることができなかったからです。歌を歌わないトオルを見てカオルも心配そうです。


ピクニックランドに着いてからもお弁当を食べる親子(松田洋治ら)を見てトオルは羨ましそうにしていました。トオルはカオルの呼びかけにもしばらく答えませんでした。その様子に百子とゲンも気付き、百子はお母さん、ゲンはお父さん役を買って出ました。その場はうまくいくかと思えたのですが、MAC本部から連絡が入りました。怪獣が現れたというのです。すぐに戻ろうとするゲンを見て、トオルは「おおとりさんはMACの隊員。僕のお父さんじゃないんだ。」と不満を抱きました。ゲンは現場へ向かいながら、心を痛めるのでした。


さて現場では怪獣カネドラスが暴れていました。マッキーはカネドラスの飛ぶ角にやられて撃墜されてしまいました。現場に遅れたゲンはトオルのことをダンに話しましたが、ダンは「それはただの感傷だ。第2、第3のトオルが生まれたかもしれないんだぞ。」と一蹴。さらにカネドラスが容易ならざる相手だと言って、次の機械での特訓を命じました。

カネドラスを模した機械

ゲンはこの機械をスポーツセンターに置き、一晩中特訓を続けました。いつしか朝になり、トオルは猛に跳び箱の指導を受けはじめました。しかし、トオルは跳び箱を飛ぶことができませんでした。ゲンはトオルを見ているうちに自分が特訓を続けることに疑問を抱きました。そして様子を見にきたダンにその疑問をぶつけました。みなしごのトオルの心を救うことさえできないのに、こんな特訓を続ける意義があるのか? そんなゲンの甘い考えをダンは一蹴。特訓を続けるように厳命しました。そこへカネドラスが月をたったとの連絡が。ダンは現場へと向かいました。そして去り際に、大村に怪獣があと30分で現れることを伝えました。大村はスポーツセンターの人達を避難させましたが、トオルは意固地になって帰ろうとしませんでした。ゲンは「トオルは自分に任せておけ。」と言い、大村に他の人の避難を優先させました。


ゲンはなおも特訓を続けましたが、技は完成しません。そこへ大村が戻ってきました。ゲンが機械の角らしきものを誤って蹴って飛ばしてしまいましたが、大村は真剣白刃どりを披露。大村は剣道をしていたことがあったのです。その時は何度練習しても真剣白刃どりを会得することができなかったのに、なぜうまくできたのかを大村は不思議に思いました。トオルはやけになり、自分は怪獣にやられて死ねばいいんだ、と叫ぶ始末。そこへトオルを心配してカオルがやってきました。それを大村から聞いたトオルはカネドラスが暴れる中、カオルのところへ駆け寄りました。それを見たMACの隊員はなぜか「隊長、おおとり隊員が。」と報告。ダンは攻撃を中止させました。しかし、カネドラスがトオルとカオルのところに迫ります。トオルとカオルは自動車の中に逃げ込みましたが、万事休す。仕方なくゲンはレオに変身しました。


レオはカネドラスとしばらく組み合った後、なんとトオルとカオルの隠れた自動車をかばって横になった格好になってしまいました。そこを「卑怯な怪獣」カネドラスが攻撃。レオは抵抗もできません。そのレオを見ていたトオルにトオルの父(二見忠男)の声が響きました。トオルはお父さんの子である前にカオルの兄ではないのか。くよくよする前にやることがあるのではないのか。はっとしたトオルはレオに「がんばれ。」と声をかけました。それを聞いたレオはなぜかカネドラスへの反撃を開始。カネドラスの飛ぶ角を真剣白刃どりで受け止めた後投げ返しました。角はカネドラスの両目に刺さりました。そこをレオはチョップし、カネドラスは絶命。レオは空へと去り、トオルとカオルはレオに礼を言いました。


それからしばらく経ったある日。トオルは小田急の和泉多摩川駅付近の多摩川の河原であん馬を使って跳び箱の特訓。捨て身で頑張れば何でもできるとレオが教えてくれた。トオルはゲンとカオル、そして大村とダンの見守る中、跳び箱を飛ぶことに成功するのでした。


ウルトラマンレオはダンとゲンの師弟関係の話という側面がありますが、同時にゲンとトオルの師弟関係の話という側面も持っています。第二期ウルトラシリーズの特徴として、主人公が一般人の子どもと交流を持つ、というのがあり、ウルトラマンレオはそれが成功したと言えます。今回はその関係の始まりともいえる話です。この話は人間ドラマという側面から見れば成功したといえるかもしれません。しかし、ウルトラマンレオ本来のテーマとも言うべき怪獣ものとしては破たんしている箇所がいくつかあります。それを順番に見てみましょう。


まず、トオルの物語と怪獣の特徴とが有機的に絡んでいないことが挙げられます。トオルがすねたのは孤児になった自分をゲンがないがしろにしたと思ったからです。怪獣の種類は何でもいいのです。そのため、カネドラスの存在が必要以上に軽く感じられてしまいます。


次に特訓の意義が不明なのが挙げられます。トオルとのやり取りで時間を食ってしまったためにゲンが現場に着くのが遅れ、レオは初戦ではカネドラスと闘って敗退したわけではありませんでした。ダンがゲンに特訓を強要する理由がカネドラスの武器がレオよりも強そうだと思っただけだったので、もしかしたらレオが直接闘っていたらカネドラスに勝てたのではないかという印象を受けてしまうのです。確かにレオがカネドラスと闘った時は苦戦しましたが、それはレオが弱かったからではなく、トオルとカオルを気遣っていたからでした。実際、レオが反撃に転じてからはカネドラスはあっけなく敗れてしまいました。真剣白刃どりのヒントを特訓中につかむという描写はありましたが、ゲンは直接カネドラスの角を見てはいないため、本当に特訓が必要だったのかは疑問が残ります。まず特訓ありきで構成したために無理が生じたのではないでしょうか。


脚本を書いた阿井文瓶は後にカオルまで亡くしてしまったトオルの寂しさにつけこんで円盤生物ノーバを暴れさせる話を書きますが、この時は上記の欠点は解消されています。その話が登場するのはまだまだ先ですが、初期の段階でなぜそのような構成をとれなかったのかが疑問です。特訓を柱にするという方針があったためにその呪縛から解けなかったのでしょうが、もっとやりようがあったのではないかと思います。


余談ですが、第二期ウルトラシリーズの脚本を書いた市川森一さんは一般人のレギュラーの存在を嫌っており、「帰ってきたウルトラマン」では意図的に坂田兄弟の出番を減らした話を書いていました。自身がメインシナリオライターを務めていた「ウルトラマンエース」でははじめは一般人のレギュラーは存在しませんでした。「ウルトラマンエース」で一般人のレギュラーである梅津ダンとその姉が登場するのは市川さんが番組を離れてからでした。さらに皮肉なことに、梅津ダン初登場の話を書いたのは市川さんをライバル視していた長坂秀佳さんでした。もっとも、長坂さんは「ウルトラマンエース」には数本しか参加せず、結局番組の最終回を書いたのは市川森一さんだったのでした。