アドルフ・ヒトラーの絵画評 | ひろくんの趣味日記

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 これまでネットで独裁者アドルフ・ヒトラーの絵画をかなりの数を観たので感想を書いみる。政治家になる前は画家を志して美術学校の試験に失敗したものの、収入を得るためにウイーンの街角で絵ハガキを売って暮らしていた。現在、ネットで観られるヒトラーの絵はその頃に描いたものがほとんどである。
 ヒトラーの絵を観てすぐに気づいたのは、画風が徹底した写実主義で、古典的だという点だ。水彩画で描いた風景画が多いが、油彩画と勘違いしたくらい精密で、建物の壁の質感の表現など優れている。人物画においても写実的な描き方で、犬のデッサンなど精密で巧い。人物画は女性画ばかりで、私が調べた限りでは、男性を描いたものはなかった。風景画と比べると人物画は苦手といわれているが、そうだともいえない。ヒトラーは一枚の絵を時間をかけて丹念に仕上げていく集中力は持っているが、絵に独創性がないのが欠点だ。

 第一次世界大戦に従軍した時のヒトラーの水彩画も残されている。戦場の様子をコミカルに描いているが、こちらの絵は線も柔らかく、色彩も明るい。ウイーンで描いていた精密で念入りな風景画に比べ、短時間で的確に仕上げている。対象を瞬時に把握して、すばやく描き写すスケッチの能力があることがわかる。
 あと一つ気になるのは、想像で描いた絵が一枚もないことだ。ワーグナーのオペラを好んでいたといわれているが、想像で描いたドイツの神話を題材にした絵が一枚もないのが不思議だ。ヒトラーは見たものを正確に描く技術には優れているが、想像で絵を描くということに全く興味を持っていない。興味がなかったのか、描けなかったのか分からない。
 20世紀のはじめ頃には、ウイーンでも革新的な想像画が次々に描かれていた時代だから、ヒトラーのような古典的な写実の絵ではすでに時代遅れという感じがする。 

 

 

 

 

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