『Pickup Cinema』

『Pickup Cinema』

新作も思い出の作品も おすすめ映画を紹介!

(C)2024 CJ ENM Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED

2024年製作/120分/G/韓国 監督:キム・ドクミン 出演:ユ・ヘジン、ユン・ヨジョン、キム・ユンジン、キム・ソヒョンほか 原題または英題:Dog Days 配給:ギャガ 劇場公開日 2024年11月1日 オンラインマスコミ試写で10月1日に鑑賞

韓国の演技派俳優と愛らしい犬たちが織りなす心あたたまる物語。

リゾート開発の仕事に携わっているミンサン(ユ・ヘジン)は、潔癖症で大の犬嫌い。自宅マンション1階の動物病院「DOG DAYS」のせいで、周辺に犬の糞が転がっていることに耐えられず、院長ジニョン(キム・ソヒョン)とのケンカが絶えない。

有名建築家ミンソ(ユン・ヨジョン)は、豪邸に愛犬のフレンチブルドッグ・ワンダと暮らし毎晩、出前をとる寂しい生活を送っている。

ジニョンと今日も言い争ったミンサンは、ワンダと来院したミンソをみて、紹介してもらおうとジニョンにすり寄る。そして紹介してもらう代わりに保護犬のチワワを預かることになる。

そんな時、散歩中に倒れたミンソとワンダが離れ離れになってしまう。救急車で運ばれたミンソを追いかけて走りだしたワンダは迷い犬になってしまったのだ。

 

ミンソは配達員ジヌに協力してもらい、ワンダを探すがなかなか見つからない。

ミンサンもジニョンとワンダ探しをする中で、犬への理解を深めていく。ワンダは無事にミンソの元に戻ってくるのだろうか・・・。

他に、少女ジユを養女に迎え入れた作曲家ソニョンとジョンア(キム・ユンジン)の家族、恋人の留守中にゴールデンレトリバーのスティングを預かったものの育て方がわからず四苦八苦するミュージシャンのヒョンなど、さまざまな背景をもつ人々が登場する。

都会の空の下、寂しさや悩みを抱えながら生きる人々が犬と出会う。そして犬たちを介して見知らぬ他人同士が心を通わせるようになる。

そんな心あたたまるヒューマンドラマ。ただし、可愛いだけではなく、犬にまつわる社会問題もきっちりと描き、強いメッセージを放っている。

俳優はもちろん、犬たちの演技にも魅了される、満足度の高い作品。

 

(C)2024「徒花 ADABANA」製作委員会 / DISSIDENZ

 

2024年製作/94分/G/日本 フランス  監督:甲斐さやか 出演:井浦新 水原希子 三浦透子 斉藤由貴 永瀬正敏 原日出子 板谷由香ほか 配給:ナカチカピクチャーズ 劇場公開日:2024年10月18日 ★オンラインマスコミ試写で9月25日鑑賞

そう遠くない未来。ウイルスにより出生率が低下し、人口が激減した日本。国家による延命治療が推進され、上流階級の人間にだけ病に侵された際の身代わりとして「それ」(クローン)が提供されていた。

裕福な家庭に育った新次(井浦新)は、妻と娘の3人家族。周囲から見れば理想的な家庭を築いていた。

しかし、重病に侵され、現在は病院で療養している。手術を前に不安にさいなまれていた新次は、医師(永瀬正敏)からカウンセリングを受けるよう勧められ、臨床心理士まほろ(水原希子)に精神面のケアをしてもらっている。

まほろの勧めで、過去の記憶をたどり始めた新次。

しかし、母(斉藤由貴)との親子関係、海辺で出会った謎の女(三浦透子)などの記憶が頭の中によみがえってきたことで、更に不安が増す。思い余った新次は「それ」に会いたい、とまほろに懇願する。

自らとうり二つの「それ」に面会した新次は、姿が一緒でも全く異なる才能や知性を「それ」が持ち合わせていることに驚く。

           

タイトルの「徒花」(あだばな)とは、「無駄な花」を意味し、この作品では「それ」が新次に語るソメイヨシノのこと。

品種改良でつくられた「ソメイヨシノ」は、美しいが、実をつけることが難しく、接ぎ木で増やす。人の手で増やされたソメイヨシノは全てがクローンだと言われている。自らの力で子孫を残すことができないソメイヨシノは果たして無駄な花なのだろうか…。

生命とは何なのか。次の世代に生命を引き継いでいくことにどれだけの価値があるのだろうか。新次の生き方、考え方を通し、生命について深く考えるきっかけになる作品。

 

 

(C)Marmalade Pictures, Inc.

2023年製作/55分/G/日本 監督:堀江貴 出演:岩田華怜 冨家ノリマサ 谷田真吾ほか 配給:ギャガ 劇場公開日:2024年10月11日 ★オンラインマスコミ試写で9月20日鑑賞

 

あの日から10年。55分の作品の中に込められた、切なくも心あたたまる物語。それは東日本大震災にまつわるそれぞれの人生と想いだった―。

東北の小さな駅のロータリー。最終電車も出てしまった深夜。客待ちをしているタクシードライバー遠藤(冨家ノリマサ)は、同僚の竹ちゃん(谷田真吾)から仲間内で噂になっている幽霊話を聞かされる。

「夜遅く街道を流してると、大学生くらいの女の子がポツンと立ってるんだって・・・。『浜町まで行って』と頼まれるんだけど、着くころには姿が消えているんだ」。

竹ちゃんの話を一笑に付してハンドルを握る遠藤。

震災後、未だに閑散としている住宅街を走っていると、黒い服にサングラス、マスク姿の女性(岩田華怜)が立っていた。

「浜町まで行ってください」

あの噂話が頭をよぎる。不審に思いながらも女性を乗せ、タクシーを発進させてすぐ、慌てた様子の母娘が車の前に立ちはだかる。そして、「自宅のある浜町まで行って欲しい」と遠藤に頼む。

深夜、訳あり風の3人の客を乗せて、走り出したタクシー。ところが、浜町の手前で突如、車が動かなくなる。

奇妙な客とその秘密を乗せたタクシーは、果たして目的地までたどり着けるのか。そして、彼らを待ち受けている予想外の出来事とは。

ニューヨーク在住の堀江貴監督が、クラウドファンディングで資金を調達し、故郷・仙台への思いを込めて製作した作品。

ミステリータッチの展開に、鑑賞途中であれこれと想像をめぐらせ、最後にハッとさせられる。「あの日を忘れない」「震災を風化させてはならない」というキャッチコピーを受け止めるのがつらい人もいるのだ、と。

阪神淡路大震災を経験した者として、これまでにない震災をテーマにした作品に出会え、心を動かされたことに感謝したい。

 

 

 

(C)2024 Asmik Ace, Inc.

2024年製作/117分/G/日本 監督:荻上直子 出演:堂本剛 綾野剛 吉岡里帆 濱田マリ 森崎ウィン 柄本明 戸塚純貴 おいでやす小田 片桐はいり 小林聡美ほか

配給:アスミック・エース 劇場公開日:2024年10月18日 ★9月11日オンラインマスコミ試写で鑑賞

 

美大を卒業したもののアートでは身を立てることができず、人気現代美術家のアシスタントとして働く沢田。独立する気力もなく、淡々と日々を過ごしていた。

ある日、通勤途中に自転車事故で右腕を骨折。「商売道具をケガしてどうするんだ」と一喝され、解雇されてしまう。仕方なくコンビニでアルバイトを始めるが、仕事にも身が入らない。

同じく売れない自称漫画家の横山(綾野剛)にもからまれ、

アパートの部屋に戻ると1匹のアリが動いていた。その跡を追うように白い紙に描いた〇(まる)を古道具屋に持ち込んだところ、知らない間にSNSで拡散され、正体不明のアーティスト「さわだ」として、一躍有名になる。

「〇(まる)」は画廊で高値で取引され、国内外の美術館にも収蔵されるなど時の人となった「さわだ」。

画廊の女主人(小林聡美)は、「さわだ」を売り出そうと追加の作品を製作するように勧める。成功は嬉しいものの、沢田の日常と脳内は次第に〇(まる)に侵食されていく。

「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子が監督・脚本を手がけ、堂本剛が27年ぶりに映画単独主演を務める奇想天外なドラマ。

堂本を中心に演技派俳優たちがしっかり脇を固め、投げかけるメッセージも多い、見応えのある作品に仕上げられている。投資先としても人気の現代美術の世界の不思議が描かれ、クスッと笑いそうになるシーンも。

 

(C)2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

2023年製作/93分/PG12/オーストラリア 監督:コリン・ケアンズ&キャメロン・ケアンズ 出演:デビッド・ダストマルチャン、ローラ・ゴードン、フェイザル・バジ、イングリッド・トレリほか 配給:ギャガ、劇場公開日 2024年10月4日 ★9月10日 オンラインマスコミ試写で鑑賞

 

オーストラリアのテレビ番組司会者ジャック・デルロイ(デビッド・ダストマルチャン)は自身の番組の視聴率低迷に悩んでいた。

視聴率を上げるため、がん闘病中の妻までトークショーに登場させるなど手段を選ばなかったが、あともう少しのところでライバルに差をつけられていた。

起死回生を狙って企画したのが、ハロウィンの夜のオカルト特集。

1977年のハロウィンの深夜、バラエティ番組「ナイト・オウル」の生放送中に、霊能力者たちに登場してもらい、スタジオ観覧者、視聴者とともに超常現象を体験しようという内容だった。

まず、登場したのが霊聴能力者クリストゥ(フェイザル・バジ)だったが、どうもインチキ臭い。しかし、出番が終了した途端、何かに怯えたように苦しみだした。

続いてメインゲストとして登場したのが「悪魔との対話」の著者ジューン博士(ローラ・ゴードン)と本のモデルとなった悪魔憑きの少女リリー(イングリッド・トレリ)だった。しかし、コメンテーターとして参加していた催眠術師は、全ての超常現象を否定し、この二人に対しても最初から懐疑的な立場を取る。

番組を盛り上げようとジャックがもくろんだのは、史上初の「悪魔の生出演」。リリーの身体の中に潜んでいる悪魔を呼び起こし、スタジオに登場させようというものだった。

リリーの表情はみるみる変わり、スタジオは恐怖に包まれる。

人気テレビ番組の生放送中に起きた怪異現象を、エクソシストなど往年のホラー作品へのオマージュを込め、レトロな映像を織り交ぜながら描いたホラー映画。

そもそもキリスト教世界での悪魔とは何なのか? 悪魔憑きの少女リリーの様子を見ていると、多重人格者のようにも思えるのだが・・・。

恐怖映画は苦手、という人でもライト感覚で鑑賞できる作品。テレビ番組製作の裏側が垣間見えるのも面白い。

 

(C)Aamir Khan Films LLP 2024

2024年製作/124分/G/インド 監督:キラン・ラオ 出演:ニターンシー・ゴーエル、プラティバー・ランターほか 配給:松竹 劇場公開日 2024年10月4日 ★関西マスコミ試写で8月20日に鑑賞

2001年、大安吉日のインド。列車の中は結婚式を終えたばかりのカップルとその家族で混雑していた。

同じ赤いベールで顔を隠しているプール(ニターンシー・ゴーエル)とジャヤ(プラティバー・ランター)は、それぞれの花婿の家に向かっていた。

ところが、ひょんなことから二人は入れ替わってしまい、ジャヤはプールの夫ディーパクの家へ連れて行かれる。

恋愛の末に結婚し、ディーパクの家に嫁ぐことを夢みてきたプールは、駅で迷子になってしまう。ディーパクに頼りきりだったプールは、彼の実家の住所も電話もわからず、連絡の取りようもなく、たった一人で一夜を過ごすことになってしまった。

一方、大学進学を希望していたが、母親の勧める相手と結婚させられることになっていたジャヤは、ディーパクの住む大家族の村に到着する。

そこは昔ながらの風習が色濃く残る地域で、妻は夫の名前すら口にすることが許されないような所だった。しかし、家族はあたたかな心の持ち主ばかりで、プールの行方とジャヤの嫁ぎ先を探すため、警察へ捜索願を出すことに。

一夜が明け、プールは駅で出会った少年に屋台の女主人を紹介され、手伝うことになる。最初は右も左もわからなかったプールだったが、次第に仕事をすることの面白さを知るようになる。

また、有機農法の勉強をしたいと思っていた聡明なジャヤは、身を寄せていた家の畑の害虫の駆除法を教えるなどして、皆に感謝される。しかし、ジャヤの行動には不思議な点が多く、警察も要注意人物としてマークするようになる。

入れ替わった二人の花嫁はそれぞれが置かれた場所で自らの可能性や価値観に気づき、周囲の人々を笑顔にしながら人生を切り拓いていくのだが・・・。

 

あり得ないような物語が展開するのも不思議の国インドならでは。大自然のなか、思いがけない運命のいたずらに翻弄されながらも二人の花嫁は、強く逞しく生きようとし、周囲の人々は、戸惑いながらもそれを見守り、助けようとする。

美しい婚姻衣装や装飾品、日本では考えられないようなインドでの結婚の風習。「へぇ~」と驚きながら、二人の女性の生き方を応援したくなる、心あたたまるヒューマンドラマ。

 

(C)2024「傲慢と善良」製作委員会

2024年製作/G/日本 監督:萩原健太郎 出演:藤ヶ谷太輔、奈緒、倉悠貴、桜庭ななみ、菊池亜希子、前田美波里ほか 配給:アスミック・エース 劇場公開日:2024年9月27日★関西マスコミ試写で8月7日鑑賞

 

家業を継いだ西澤架(藤ヶ谷太輔)は、容姿端麗で仕事も恋愛も順調だった。しかし、ある理由で長年付き合っていた恋人に去られてしまう。

それをきっかけにマッチングアプリで婚活を始めた架は、ある日、英会話教室に勤める坂庭真実(奈緒)と出会う。美しく控え目で、気の利く真実にひかれた架。二人は交際を始めるが、1年を過ぎても架は結婚に踏み切ることはなかった。

そんな時、真実がストーカーに追われていることを知った架は彼女を守るために一緒に暮らすことにする。

ようやく婚約した二人は、架の友人宅のホームパーティーに出かけたり、結婚式の準備を始めたりと、幸せいっぱいに過ごしていた。

ところが、ある晩、寿退職の送別会に出かけた真実は架の前から姿を消してしまう。

ストーカーの仕業なのか、と心配になった架は、真実の実家を訪ね、彼女が過去にお見合いをした相手にまで会って、その行方を探す。そこに浮かび上がってきたのは、マッチングアプリでは知ることのなかった真実のこれまでの人生と嘘だった。

 

「傲慢」とは、婚活で相手を探しながらも交際して1年が経過しても将来を決めない架の姿。「善良」は、昔気質の母親の元で素直に育ったものの、自分らしく生きたいと実家を離れ、架と交際をするもあることをきっかけに自身を責め、違う生き方を模索する真実の姿。

それぞれの視点で、現代の恋愛観、価値観などを描き若者の支持を得た直木賞作家・辻村深月の同名小説の映画化作品だ。

清楚で内向的なのだが、自ら人生を切り開いていこうともがく真実の姿に共感を抱く女性は多いのではないだろうか。

仕事にも容姿にも自信満々なのだが、どこか抜けたところのある憎めないキャラ、架役を藤ヶ谷太輔がしっかりと演じている。

 

 

(C)五十嵐大/幻冬舎 (C)2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会

2024年製作/105分/G/日本 監督:呉美保 出演:吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人、ユースケ・サンタマリア、烏丸せつこ、でんでんほか 配給:ギャガ  劇場公開日:2024年9月20日 ★オンラインマスコミ試写で8月15日鑑賞

 

昭和の終わりごろ、宮城県の小さな港町に、一人の男児が誕生した。お食べ始めの日、テーブルにはごちそうが並び、親族が集まり祝いの席がにぎやかに始まる。ごく普通の日本の原風景。しかし、その子の両親は共にろう者だった。

大(吉沢亮)と名付けられたその子は、両親の愛情をたっぷり受けてすくすく育った。耳の聞こえない夫婦にとっての子育ては、凡人には想像できないような努力が必要だった。

しかし、大は幼い頃から自然に手話を覚え「聴こえる世界」と「聴こえない世界」を行き来し、大好きな母の通訳をごく自然にし、母と手紙の交換をし、自分のおかれた環境になんの疑問も抱かずにいた。

ところが、小学校に入学したころから、大は周囲から特別視されるようになる。自宅に遊びに来た友達から好奇の目で見られたり、周囲の大人たちから過剰な同情を受けたり、誤解されたり。戸惑い、思い悩む大にとってろう者である母は次第に恥ずかしい存在となり、やがて学校にきてほしくないとまで思うようになる。

思春期を迎えた大は、ことあるごとに母に反発し「障がい者の家庭になんか生まれたくなかった」と、きつい言葉を投げかけ、逃げるように故郷を後にする

東京で暮らすようになった大は、複雑な思いを抱えたまま、パチンコ店でアルバイトをしながら自分の進む道を模索していた。偶然知り合ったろう者のグループに参加し、言葉以上の勢いで手話を操る姿に圧倒され、多くを教えられる。

そんなある日、ライターとして自立できるようになった大の元に父が倒れた、との一報が入り・・・。

 

作家・エッセイストの五十嵐大氏が、自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」に自身が抱く葛藤や悩み、そして繊細な心情を綴っている。その映画化作品である本作には、これまで私たちが詳しく知る由がなかった「聴こえない世界」の人々が丁寧に描かれ、その中で言葉以上に感情を素早く表現するコミュニケーション手段としての手話が登場し、驚かされる。

ろう者である母親役の演技が素晴らしい。不自由な身体であってもいつも明るく、前向きに生きる姿は感動的だ。そして、障がい者である親の元に生まれた子の、思春期から大人へと成長していく複雑な心情を見事に表現した吉沢亮の演技にも心が吸い寄せられ、涙がとまらなかった。

(C)Speranza Film AS 2023

2023年製作/94分/G/ノルウェー 監督:マルグレート・オリン 製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース、リブ・ウルマン 配給:トランスフォーマー 劇場公開日:2024年9月20日 ★オンラインマスコミ試写で8月20日鑑賞

 

初恋の相手は自然だった・・・

人里離れたノルウェーの山岳地帯「オルデダーレン」。氷河に囲まれた地で、84歳の父と75歳の母が暮らしている。

ドキュメンタリー作家マルグレート・オリンは、厳しくも美しいこの地に生きる父母の姿をカメラに収めることにした。

帰郷した娘に、父はこの国で最も美しい渓谷に案内しながら自身の生い立ちや妻への愛、自然と生きることについて語り始める。

先祖代々暮らしてきた地で愛する人と共にシンプルに生きる幸せ。時に牙をむく、大自然との付き合い方。

四季折々の渓谷の姿。水と緑と雪と氷がつくりだす自然の造形。地球上にこんなに美しい場所があったのか、と驚き、息を呑むようなシーンが次々と映し出される。

地球は、自然は私たちにかけがえのないプレゼントをしてくれたのだ。

しかし、気候変動はこの地にも影響を与え、氷河は少しずつ溶け、雪崩が起きる。

生きることの意味は、豊かさとは、老いるとは・・・。渓谷の四季の美しさを堪能しながら私たちも深く考えることになる。

初恋の相手を忘れないで・・・。

 

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

2024年製作/119分/PG12/アメリカ 監督:フェデ・アルバレス 製作:リドリー・スコット 出演:ケイリー・スピーニー, デヴィッド・ジョンソン, アーチー・ルノー, イザベラ・メルセードほか。配給:ディズニー 劇場公開日:2024年9月6日 ★8月19日マスコミ試写関西で鑑賞

 

2142年、地球から遠く離れた惑星で労働者として働くレイン(ケイリー・スピーニー)は弟として大切にしているアンドロイドのアンディ(デヴィッド・ジョンソン)と励まし合いながらも惨めな気持ちで暮らしていた。

ある日、元恋人のタイラー(アーチー・ルノー)に誘われ、同じように人生の行き場を失くした若者6人で惑星を脱出。宇宙空間に放棄されたステーション「ロムルス」に乗り込む。

そこで冷凍休眠装置と燃料を調達し、遠い惑星に逃げようと計画するのだが、ロムルスの中には多数の危険な生命体が休眠状態で閉じ込められていた。

それは、ヒトの体内に種を植え付け、胸を突き破って誕生する恐怖の生物・エイリアン。異常な速さで成長する謎の生命体だ。タイラーたちはロムルスの探索中に、誤ってエイリアンを覚醒させてしまったのだ。

エイリアンの血液は、全ての物質を溶かすほどの強力な酸性のため、安易に攻撃することはできない。逃げ場のないステーション内で、生き残りをかけた恐怖のサバイバルが始まる。

果たしてレインたちは、次々と襲いかかってくるエイリアンから逃れることはできるのか。

1979年に第一作が公開された人気シリーズの7作目。すでにその正体や特徴は熟知しているため、今作では物語がどう展開し、エイリアンがどう攻めてくるのか、と期待しながら試写を鑑賞した。

前半はこれまでと似た展開だったものの、効果音に恐怖が増幅され、テーマパークのアトラクションを体験しているような臨場感だった。

次第にAIやゲノム編集などの「旬」の素材が盛り込まれていき、強いメッセージを放つ。

ヒトとアンドロイドとの違いは何か。束になってかかってくるエイリアンは怖いけれど、実は最も怖いのは人間の欲ではないのか。

 

初めて観る人も楽しめるし、往年のファンの期待も決して裏切らない仕上がり。

可愛くて強いニューヒロインの誕生で、続編が楽しみな新シリーズの幕開けだ。