(今日は疲れたなー)
っと思いながら、車から降り、重い足を引きずるように 仕事から帰ってきた竹夫は家の玄関に一歩 .足を踏み入れたとたん、梅子がいつものように走り出てきて言った。
「あなた!この前の山田さんちの娘さん、ついに離婚ってことになるらしいわよ! 今日ね森さんが山田さんとスーパーで会って、さんざん娘婿の悪口を聞かされたらしいのよ。だから あれはもう離婚しかないだろうって。 森さん 力入れて言ってたわー かわいそうに!まだ二歳にもならない子がいるのにねー ほんとにかわいそう! ねっ あなたもそう思うでしょ!」
っと一気にしゃべった梅子は竹夫の反応を見るように顔を覗き込んだ。
「おまえねー 亭主が帰ってきたら、まず おかえりなさい、お疲れ様でした。 だろ!」
っと あきれるように言った後、竹夫は服を着替えて食卓の椅子に座った。そして何の用意も出来いないテーブルを見て言った。
「おい!飯はまだ出来てないのか!」
「あら、ごめんね。 だって さっきまで森さんとその話をしてたから仕方ないでしょ!すぐできるから!待ってて」
っと言って、竹夫に背を向けて梅子はキャベツをきざみ始めた。
「まったく、よその家より自分の家だろ!亭主をなんだと思ってる」
っと 竹夫がぶつぶつ言うのを聞いて梅子は振り向いて言った。
「亭主よ! それよりさー 二歳にもならない子を連れて離婚なんて、どうするんだろうね!その娘さんが言うには、子供はかわいいけど、旦那はいらないんだって。 山田さんも孫がかわいいから、離婚して帰ってきたらいいって言ってるらしいのよ。あなたどう思う?」
「どう思うって? 言われてもなー じゃ離婚の原因はいったいなんなんだ?」
「それがねー 子供が生まれて、なにかと大変なのに家事をいっさい手伝ってくれないんだって。自分の食べたお茶碗もそのままにして横になってテレビを見るらしいのよ。それに休みの日も釣りが好きで朝早くから出かけて、夕方でないと帰ってこないんだって。 私もそれ聞いて、娘さんの離婚したくなる気持ちわかるって言ったのよ。 まあ 手伝ってって言えばしぶしぶやってくれるらしいんだけど、それってどうかと思うのよね。主婦にだって休みはいるわよ。 そうでしょ!」
っと 梅子はしゃべってる内にだんだん自分のことのように腹立たしげに言ったので竹夫もまけずに言った。
「えー たったそれだけか?たったそれだけのことで離婚か?」
っと 大きな声で何度も竹夫は確認するように言った。
「たったそれだけって言うけど、毎日のことだからね。ほこりと一緒よ、小さな不満がつもり重なって大きな汚れになって、ちょっとやそっとじゃ落ちなくなるのよ。分かった!」
っと 梅子も負けずに大きな声で言った。
「あー バカバカしい! おまえには物事の本質ってものが見えてないらしいな。いいか、よく聞け!家事をしてくれないからって離婚したら結局、自分がすべてやらないといけなくなるってことだろ。 それに子供はいつまでも赤ちゃんじゃないぞ。 これから先 一人で育てていくのは大変だぞ。10年後、15年後むずかしい年ごろになった時、誰に相談するんだ!親はいつまでも元気じゃないぞ。 その旦那 以外に最高の父親はいないんだから、お茶碗ぐらい なんだ。 洗えばいいじゃないか!」
「そりゃそうだけど、二人で作ったんだから、二人で育てるべきでしょ!」
っと 梅子は力を入れて言ったが竹夫はまだ言い足りないというようにつづけて言った。
「それにだ。 子供はかわいいけど旦那はいらないって? バッカじゃないのか。 その旦那がいなかったら子供はできてないんだぞ! 旦那のおかげで子供が出来たんじゃないか!」
「「いやーねー そういう言い方。じゃあ生んであげたのは誰よ!奥さんが大変な思いをして生んだのよ!」
「生ませたのは男だろ!」
「そうよ!だから何よ。男なんて生ませただけじゃないの!」
「バカか、 おまえは! そこがスタートだろ。そこが必要不可欠ところだろ!」
「何言ってんのよ! やりゃいいってもんじゃないわよ! バカ!」
「バカはおまえだ! 早くメシにしろ!」
