「グローバル資本主義の中の渋沢栄一 合本キャピタリズムとモラル」 | ひろじのブログ

「グローバル資本主義の中の渋沢栄一 合本キャピタリズムとモラル」

1.正直に商売をしても十分利益を得られるし、むしろ、そうして得た利益こそが
  永続的な利益である。

2.富を独占せずに社会に還元すると、それがやがては自分の利益となて返ってくる。

3.君子は他社を優先すべきだと信ずるから優先する。その結果、他者だけではなく
  自分の利益も得る。

4.渋沢の道徳経済合一説に、アダム・スミスの思想との共通性を見出す人は多い。
 1.彼らは人の自利心を肯定的に捉え、個人の自己利益の追求が社会全体の
    繁栄に重要な役割を果たすことを強調している。

 2.自利心を無制限に容認するのではなく、道徳に制限された自利心こそ肯定した。

5.渋沢は、社会を豊かにするという究極の道徳の実践に人々が熱心に辛抱強く取り
  組むには、それに携わる人々自身もその事業から利益を得られるという期待が
  不可欠だと考えた。

6.スミスは、個々人が自らの富や社会的地位を求めて経済活動をしていると、
  「見えざる手」によって、結果的に社会の繁栄と調和が実現すると主張した。

7.真に国家を隆隆させるためには国を豊かにしなければならない。

8.渋沢が構想した「合本」は、欧米型を原型としつつも、独自の講釈が加わっていた。

9.スミスが肯定した自利心は、「義務の感覚」によって制限された自利心である。

10.渋沢にとって、人々を豊かにするという公益の追求は「究極の道徳」であり、
    民間で経済活動に携わる人々もその実現の一翼を担うべきことを強調した。

11.スミスは、個々の経済主体が公益を追求することは期待していなかった。

12.「公益は私利に従う」というおがスミスの立場である。それに対して渋沢の立場は、
    「私利は公益に従う」と言える。

13.渋沢が「合本」という言葉によって強調したかったのは、この組織を通じて事業を
    行うことで、特定の人だけが事業活動に経営資源を提供し、それに見合った
    見返りを独占するのではなく、多くの人々がそれぞれの力に応じてさまざまな
    経営資源を提供し、それに見合った見返りを得ることができる。

14.<経済=道徳説>は、①事業を通じて人々を豊かにすること。すなわち公益を増進
    することに最高の道徳的価値を認め、それと同時に、②そうした事業に関係する
    人々が事業を通じて十分な私利を得ることは道徳的に正当であるばかりか、
    事業に通じた公益増進のためにはむしろ不可欠であることを強調している。

15.人を騙すことなく正義に適ったやり方で商売する限り、あとは自己利益の追求を
    第一にして構わないというのが市場経済に関する一般的理解であろう。

16.自己利益の追求自体は大いに結構だが、それは自己利益を第一とせず、
    他者利益を第一とすることによってこそ実現されるべきものなのである。

17.渋沢栄一の合本主義に関し、次の二点を述べて、小稿を結ぶことにしたい。
  ①渋沢にとって合本主義とは、匿名の人々の間の単なる資本結合を意味する
      ものではなく、同族あるいは共同体紐帯を超えていたとはいえ、知己の人々の
      間の「顔の見える」人的結合を意味するものであった。

  ②商工会議所のような総合経済団体は市場と企業との間の中間組織と意識付け
      られる。そのような経済団体あるいはその指導者の機能は市場と企業によって
      供給されない経営資源を補完することにあると考えられている。

18.「商業道徳は『嘘をつかない』『個人の利益を優先させない』という二つの主要原理
    で成り立つ」と明言している。つまり、利益のために嘘をついてはならず、他者を
    欺くビジネスをしてもいけない。

19.キリスト教の信仰と利益追求との両立性にをめぐる中世と近代の神学論争は
    何世紀にも及び、宗教的および倫理的価値観を守る適切な形でビジネスを行う
    方法をめぐる議論に反映されていた。

20.「不正が利益をもたらす限り、人々は不正をやめない」と述べている。

21.「近代のビジネスは信用によって成り立っている。それは借金、すなわち、
    将来的に返済するという約束の下に実行される。」

22.徳川幕府から明治政府への政権交代を西欧列強の介入なしで実現した日本人
  は、幕末に締結された不平等条約にもかかわらず、明治期を通じて条約改正に
  粘り強く取り組み、20世紀初頭には西洋諸国とほぼ対等な海外取引を行える
  状況を創出した。

23.商業活動は、江戸時代に支配者階級であった武士教育の思想的基盤である
  儒教、なかでも『論語』の教えに反するものではない。それどころか、事業活動
  によって利益を生み出し、富を蓄積することは道徳にかなう。

24.「アメリカ人が個々に金銭的利益を社会に還元する。それが長期的に自らの利益
  になると考えているからだ。」


「グローバル資本主義の中の渋沢栄一 合本キャピタリズムとモラル」

-目次-
第1章 渋沢栄一による合本主義 独自の市場型モデルの形成
 1.渋沢栄一評価の変遷
 2.渋沢の客観的位置づけ
 3.合本主義と株式会社制度
 4.渋沢の作り出した株式会社システム
 5.市場型モデルと財閥も出るの併存・呼応
 6.合本主義から合本キャピタリズムへ

第2章 道徳経済合一説 合本主義のよりどころ
 1.道徳経済合一説の全体像
 2.経済=道徳説
 3.道徳=経済説
 4.道徳経済合一説を特徴づけるもの
 5.合本主義と道徳経済合一説

第3章 官民の関係と境界 世界史の中で渋沢栄一の経験を考える
 1.サン=シモン主義との類似性または接点
 2.官民の風通しの良い関係
 3.官民の二重性
 4.役割分担 -官民の交流と流用
 5.公益の追求 -官民共通の目標

第4章 「見える手」による資本主義 株式会社制度・財界人・渋沢栄一
 1.日本における株式会社制度の発展
 2.株式会社制度の有効性とフィジービリティ
 3.大阪紡績会社の事例
 4.財界リーダーの意義

第5章 公正な主手段で富を得る 企業道徳と渋沢栄一
 1.渋沢栄一の商業道徳の二面性
 2.商業道徳に関する西洋の議論
 3.日本の商業道徳に対する西洋の態度
 4.日本での商業道徳の議論
 5.商業道徳にまつわる未解決な問題
第6章 グローバル社会における渋沢栄一の商業道徳観
 1.商業道徳の持つ三つの側面
 2.商業に対する意識改革と商業者の地位向上
 3.商業道徳の徹底
 4.積極的な道徳活動
 5.21世紀に生きる渋沢の商業道徳

第7章 世界的視野における合本主義 資本主義の責任
 1.渋沢栄一の時代 1804~1931年
 2.大恐慌とその余波
 3.非西洋世界における工業化
 4.戦後の企業責任論
 5.持続可能性に関する責任
 6.新たなリベラルの時代とグローバル化
 7.世界に広がる合本主義

第8章 資本主義間の再構築と渋沢栄一の合本主義
 1.資本主義の危機と合本主義研究
 2.「日本的経営」再考
 3.日本経済の再生と「新型日本的経営」
 4.渋沢栄一の合本主議論の今日的意義