silly talkですってよ。 -7ページ目

silly talkですってよ。

妄想の産物っす。

妄想っす。

もう一度言いますが、妄想の産物っす。

芍薬の様に背筋を伸ばし。1








この人の背負った痛みを…。
受け止められるか…。
と聞かれたら…。

答えは…。

ノー、だ。


痛みは。
辛さは。



彼だけのモノ。



苦々しく語られる櫻井さんの過去に。
正直。
どんな言葉を掛けられるか…。

俺には分からない。

火傷の傷を忘れる程。
握り締められた拳。

その拳には…。

櫻井さんしか知らない。
櫻井さんにしか理解の出来ない…。


痛みと苦しみが…。

ある。


その手が…。
また煙草に伸びる。


きっとやり場のない感情を…。
少しでも紛らわす…為。

きっとずっと…。
櫻井さんはそうして来た。


でも…。

「もうダメです」

これ以上は見過ごせない。

そう思ったら。
身体が動いて。
櫻井さんの手に手を重ねた。
「見過ごすにも程がありますからね?」
重ねた手を軽く叩いて。
そのままその先にある煙草を取る。
「今夜はもう禁煙です」
奪い取った煙草を櫻井さんの手の届かない所に置いて。

笑った。

櫻井さんは…。

困った様に眉を下げる。


「…っ」


その表情は。
初めて見る顔で。

過去を語っていた表情とも。
出逢った時の表情とも。

違う。


それは。
表現するなら。
俺的に表情するなら。

そう…。

生きてる…顔。


辛く苦い過去は。
きっと櫻井さんの心に大きな闇を齎し。
その闇の中で…。

藻掻いて。
藻掻いて。

いつしか…。
櫻井さんは藻掻く事をやめ。

感情を殺した。


爽やかな程の綺麗な笑顔は…。
その押し殺した感情上に成り立っている…。


この表情は…。

そのどれにも属さない。


押し殺してない…。

素の櫻井さんの顔。


そう思ったら。

ギュッと…。

心が締め付けられる。

ふぅ…と、息を吐いて。
もう一度吸い込んで。

「俺に出来ることがあるとすれば…」
「…」
「生き急ぐ櫻井さんを留めること…くらいですね」
「…」

前を向く。

「大変でしたね…とか、苦しんだんですね…とか…そんな言葉では…きっと括れるモノでは…ないでしょ…?」

体験していない俺には分からない。

分かりたいとしても…。
それは無理で。

カズのように隣にいたわけでもない。
ずっと見ていたわけでもない…。


出逢ったのは…。

今日だ。

「だとしたら…俺に出来ることは…」

辛い過去を。
暗い闇を。

それを背負う櫻井さんが。

これからを生きる為に。

これ以上生き急ぐ事の無いように。

「アナタと笑う事…くらいです」


もし…。

櫻井さんが許してくれるのなら…。


「あ、勿論っ…櫻井さんが…」

隣を空けてくれるなら…。

と、振り向いて言いかけた言葉は…。


…。


その唇に塞がれて…。

紡ぐ事は出来なかった。