当たり前だけど、日本酒は米から作られます。1
「この手が…誰かを殺せる程だと…知ったあの日から…」
松本くんの腕を掴んだまま。
「大切なモノを…作らない様に…生きてた」
言葉を…。
紡ぐ。
「激昂した自分は…手が付けられない…と、知ったから…ね」
誰にも話したことの無い…。
「人なんて…殴った事も無かったよ…」
あの日の話し。
「殴っても…痛いって…あの日知った…」
俺の指は…。
折れていた。
「…無敵なんて…さ…あるわけ、ねぇのに…な」
無敵では無かった。
折れた指。
折れた…心。
順風満帆だった俺の人生に…。
吹いた逆風。
「しかもさ?」
「…」
「俺は…アイツに守られたんだよ…」
当然、警察沙汰になることなんて覚悟してた。
でも、俺のした事が…。
公になることはなく。
上が出した判断は…。
『自主退職』だった。
「アイツが残した全ての証拠のおかげで、会社の出した答えは…そんなもんよ?」
守ってると思って。
守られていた。
真っ直ぐで。
純粋で。
やる気だけは人一倍の…。
後輩のアイツに。
「体裁? ってやつ?」
くだらないそんなもんの為に。
そんな会社にいた自分に。
そんな会社の利益の為に…。
自分が遮二無二だった事に…。
心底。
反吐が出た。
俺もアイツも…。
ただの駒に過ぎない。
それを知って。
思い知らされて…。
「アホらしく…なった…」
どうでもいいと…思った。
生きていくこと。
働くこと。
全て…。
すっと…。
松本くんの手が俺の手をすり抜けて。
今度は俺の手に…。
その手が重なる。
「アホ…ですね…」
ふっと…。
感じる松本くんの体温。
それは当たり前だけど。
…暖かい。
「それが…全てではないですよ?」
松本くんが柔らかく笑う。
その笑顔が…。
その微笑む顔が…。
花の様で…。
俺の暗闇に。
明るく…。
灯りを灯す様に…。
小さな花が…。
ポツリポツリと…。
咲いて…いく。
「どうでも良くないから…彼は…生きたんですよ?」
…。
「まだ…終わっては駄目だから…彼は生きたんです…」
…。
「そんな事も分からないから、櫻井さんはアホです」
…。
松本くんは笑みを浮かべたまま。
俺の手を…。
握り締めた。