美味しい花と綺麗な酒。8 | silly talkですってよ。

silly talkですってよ。

妄想の産物っす。

妄想っす。

もう一度言いますが、妄想の産物っす。

向日葵は太陽に向いてます。2






とりあえず新しい取引先が出来て。
そこで思い出す…。

「あ、店っ」
自分の店の事。
「あ…悪かった。仕事中だったな…」
なんて櫻井さんは小さく呟くと。
「今夜はオープン記念のパーティー? だからさ…良かったら松本くんも来てよ?」
そう誘われれば。

悪い気はせず。

「来れそうなら…」

それでも曖昧に返事をしてしまうのは…。

自分が。
向かい側の花屋の店長…だから。

「ぁ…花屋って、朝…早そうなイメージだもんな」
俺の無言の中に何かを悟ったのか。
櫻井さんは言って。
「俺はだいたいこの時間には店に来てるから…松本くんの都合で花、刺しに来てよ?」

それはきっとこれからの仕事の話で。

でも…。

「刺す…って…」
「え? 違う?」
「違わない…ですけど…」
刺すって表現が可笑しくて…。
思わず笑った。
それから背筋を伸ばして。
「じゃ、生けに来ますね」
そう言うと。
「…生ける…ね」
櫻井さんは納得したみたいに笑って。
「よろしくお願いします」
と頭をぺこりと下げた。



花束の残りを抱えて櫻井さんの店を出る。

それが何故か…。

…名残惜しくて。


そんな感情の自分に戸惑う。

道を跨ぐ数歩。

それが…。
なんだか長くて…。

まるで櫻井さんと俺の距離みたいで。

…切ない…。


そんな感情に。

戸惑う。



「ちょっとぉー潤くん、どこ行ってたのさー」
店に戻ると。
耳馴染みのある声がして。

上げた視線の先に。

え…。

「…カズ…?」

見慣れた顔があって。

「なぁに…その…恋するオトメ…みたいな顔」
そう悪戯に言われて。

は?

って思った次の瞬間には。
顔が熱くなって…。

「わぁ…マジ…?」

ってカズにも分かるくらい。

「潤くん、真っ赤」

赤面してるのが自分でも分かる。

「マジで? マジで恋したのっ!?」
「…っ」
カズが小走りに寄ってきて。
「え、ワタシに?」
見上げて来る。

そこで。

「そんなわけない…」

と、冷静になった。

「ですよねー」
カズはニンマリ笑うと。
クルリと背中を向けた。
「てか、どうしたわけ?」
短く息を吐いて気持ちを入れ替えてから、カズに問いかける。
カズ…二宮和也は高校の時からの友達で。
付かず離れず…で、現在に至る。
「花? お願いしたくて…」
「え、カズが?」
「そ、ワタシが」

珍しい…。

思ったけど口にはしない。

「会社の先輩だった人がお店出すんですよ」
「あ…なんか前に言ってたね…」
お世話になった会社の先輩が、会社を辞めたって。
「そ、その人です」
「どんなのにする? どんなお店?」
とりあえず。
櫻井さんから預かった花束を作業台の隅に置いて振り向く。
「飲み屋だって」
「飲み屋…ね」
「いかがわしくない感じの…」
「なにそれ」
カズらしい表現に笑う。
「ま、あの人のことだから…The飲み屋って感じではないと思いますけど…」
「ふーん」
何となく。
イメージを膨らませる。
「洒落た雰囲気になってるんでしょうねきっと」

洒落た…ね。

思考に浮かぶのは。
さっきまでいた櫻井さんのお店で。

ついついあの店に似合いそうな花をイメージしてしまう。

思考を振り切るように頭を振ってから。
「小洒落た感じ?」
「と、思います」
聞いてるのはコッチなのに、カズはなんだか曖昧で。
「わかんないの?」
「わかんないって言うか…」

ん?

カズを見つめると。
カズは外を眺めたまま。

「まさか、潤くんのお店の向かい側なんて…聞いてなかったんですよ」

…え…っ。


カズの視線の先には。
俺がさっきまでいた…。


櫻井さんの店っ!?


が…ある。