ようやく個展が終わり荷造りを始めているのでしょうか。
テイシマはある時期がくると巣を移動します。
長くても4年、早くて2年経つと別の場所へ移動して生活を営むのです。
季節によって集団で移動する動物はいますが、テイシマは東淀川区という狭いエリアで餌場の近さ駅の近さ、家賃の安さで巣を選びます。
しかもテイシマは集団では移動しません。大抵のテイシマは一匹で行動します。
集団で行動をすると天敵に見つかりやすいから……ではなく、移動しよう!と言うと、みんなに反対されるからです。
餌場が近く、駅からも近い、こじんまりとした小部屋をテイシマは好みます。
大きな巣に住むより、天敵から身を隠しやすいから……ではなく、掃除が楽だから。
この時期に向けてテイシマは一か月前から準備を始めます。
テイシマが探しているのは……
駅と餌場から3分以内、翼を休める場所(バイク置き場)があり、エアコンがあり、そしてセパレート。。。
不動産会社のお兄さんが上目遣いでテイシマを睨みます。
「……いやね……全部は無理っすよ」
テイシマはお兄さんから意識を切らず、ちらりとパソコンモニターに目を配ります。
お兄さんは溜息を洩らしますが、テイシマは彼に努力をもとめます。
お兄さんは素早い動きでキーボードを叩き始めました。
テイシマはモニターから目を離さず、探しているふりをしていないかを監視します。
あ、これは!?とテイシマは吠えます。
もうここ埋まってるし、意外と駅から離れてますよ?3分っしょ?とお兄さんは動じずキーを叩き続けます。
5分でも我慢できるけど……とテイシマは後ずさりながらお兄さんを睨みます。
これは!?
ユニットっすよ。
これは!?
バイク止めれないっす。
ここは!?
五分とか言うてるけど7分は掛かる場所っす。
どれ程の時間がたったことでしょう。
二匹は押し合い、引き合い、駆け引きの中で徐々に互いの終着点に落ち着いてゆくのです。
やがて疲れを見せたテイシマは肘をついた姿勢で動きをとめます。
新たな巣を得るために、何を削ろうかと悩んでします
不可解な目で見るお兄さん。
やがてテイシマは顔を上げます。
お兄さんも安堵の表情で姿勢を崩しました。
長い戦いが終わりました。
テイシマは、お兄さんから渡された封筒を片手に立ちあがります。
長く座っていたためか、腰から膝が痺れた様です。テイシマは右足を少し引きずりながら商店街の中に消えてゆきました。
5月になり、取材班は元気を取り戻したテイシマを発見しました。
いつもよりご飯の量が増えている為か、顔色がよく元気を取り戻したようです。
テイシマは家賃が下がると食費に財布のひもが緩みます。
引きずっていた右足も良くなったそうです。
でも安心はできません。
テイシマは新たな巣を拠点に8月末からの個展に向けて再び戦いが始まるのです。
ナレーター・亭島和彦
主題歌・中島みゆ〇
