秋の公園

 

 

オリジン弁当のグラム売りのおかずにはまっている。

 

自炊で食事をすると野菜などを食べるようにはなるのだが、どうしても簡単なものばかりになり、結果的にあまりとらない食材が増えてしまうが、このグラム売りのシステムは結構幅広い食材を取ることが出来る。

 

自炊よりも少々割高にはなるが、手の感覚に集中し、たれの少ない総菜を選ぶことで約何円かを予想することが出来る。あとは家で炊いたホカホカ(時々びちゃびちゃ)のご飯を食べるだけだ。

 

四つに分かれた皿を片手に総菜を入れていくのだが、どうしても隣の客のメニューが気になってしまう。

 

他人事なのだから放っておけよ、とも思うのだが、心の中で

「もう少しキノコ類も取った方がいいのに」

「それは骨がついている分重くなるのに馬鹿だなぁ……犬にでもしゃぶらせるのかい」

「そんなのばっか食べてたらカーネルおじさんみたいになっちゃうぜ」

「こいつ……何人家族だよ」

などと姑の様に呟いてしまう。

 

昨日は家族でご来店の方々がいた。

高校生位の息子が皿に取った唐揚げの量でもめている。

確かに尋常ではない盛り方だ。皿の蓋が45度以上開いている。

 

母「あんた!それほんまに全部食べるんやろうな!そんなに盛って全部食べれるんやろうな!」

息子「うん……たべるよ……だから、たべるって」

父「ほっとけやこいつが食う言うてんねんから……こいつ阿保やから唐揚げ食いまくって死んだらええねん!」

娘「……(溜息)」

母「ちゃうやん!こいつが唐揚げ食いまくって死ぬのはええけど!そんな盛って幾らになる思うてんねん!」

父「今晩高くても明日から一人分安くなるわな!鬱陶しいからぎゃあぎゃ喚くな!」

娘「……(溜息)」

 

息子の命がグラム幾らなのかは知らないが、唐揚げを食いすぎることで明日からいなくなる事を喜ばれる息子も不憫だが、あれだけ「食ったら死ぬ」みたいな言い方された唐揚げ達も同じくらい可哀そうに思える。

 

一通りの会話を聞いた息子はしばらく潤んだ目で立ちすくみ、考えた挙句商品棚に唐揚げを戻し始めた。

 

父「そうやろ!食われへんやろ!食われへんのやったら最初から取るなボケ!」

 

そして家族はなかなかリーズナブルな会計を済ませて、娘が先ほどまで観ていたらしいテレビの話を母に切り出した。そして四人肩を並べて帰って行った。

 

 

きっと優等生のSNSではこのような会話に対して「言い方がひどいと思う!」「親失格!」「息子がかわいそう!人の道外れないかしら!」

 

といったコメントが流れるかと思うが、普通の高校生が「栄養バランスを考えて選ばないと病気になるわよ?」と言われて言う事を聞くだろうか。

 

私の経験では唐揚げとマヨネーズは高校生にとって青春の味と言うべきか、生きる為の理由一つに近かった。

親の財布でありったけ取って良いと言われれば私も同じことをしていたかもしれない。

高校生の身体はあらゆるアンバランスな栄養素を、理屈を超えた消化機能で筋肉に変えてくれると信じられている。(嘘)

現実味の無いメタボリックな将来より、今の幸せを考えるのは当然の事だろう。

そして勿論、その愚かさを食い止めるのも親の役目だ。

 

子の愚かさを食い止める為にはその場だけの優しい言葉だけでは成り立たないことが多い。

本当に大切なのは日頃からのコミュニケーションだと思う。

 

言葉は綺麗な方が言いに決まっている。

息子に死ねばいいなんて言わない方が良いに決まっている。

家族団らんには、オリジンではなく母の手料理が良いに決まっている。

 

ただもっと大切な事は、あれだけ怒鳴りあった後も、何事も無かったかの様にテレビの話で盛り上がりながら、しっかり肩を並べて帰っていく四人の家族の後姿が物語っているように思える。

 

そんな事を考えながら、42歳独身男性は蒸し鶏のサラダを皿に取った。手に掛かる重さを感じながら。

 

 

PS.展示会あと二日となります。日曜日は一日在廊しておりますので、ご都合が合えばふらりとお立ち寄りくださいませ(*^^*)