Starless And Bible Black


試聴あり


タイトルに日本語で貼っていると劣悪コメントが多数来るので、あえて英語のタイトルに変える。


我がシェルフにやたらと並ぶキング・クリムゾンのCD。20代、知的音楽への飽くなき希求がもたらした成

果物。プログレッシブ・ロックという言葉が持つ甘く、それでいて近寄り難い、まるで、得体が知れないが、何か生命の深遠な部分を克明に描き出した哲学者の書物を手に取るような興奮。この地球のあちらこちらで発生し、長年の歳月に渡って伝承されてきた音楽的フォーマットと、ほんの1世紀に満たない過去に、確実に南アメリカの黒人に端を発した音楽的フォーマットとの融合。ロックという文法の中で繰り広げられる激しいインプロビゼーション、あるいは、自動車社会以前のゆったりとしたテンポを想起させるメロディー。


実はこのアルバム、今久しぶりに聴いてみた。前に聴いた時は、恐らく日本の首相の頭髪はポマードでてかっていたかもしれない。それくらい久しぶりなのだ。アルバムのリリース自体は74年。「宮殿」やら「太陽と戦慄」やら「レッド」やら、彼らの代表作の陰に隠れている印象が強かったが、改めてその名盤振りを堪能した。テンションが非常に高い演奏なのだ。


即興演奏がかなりの部分を占めている。そして、3曲のボーカル・ナンバーを除いて、すべてがライブ・レコーディングだ。決して聴きやすいアルバムではないのだが、音の存在感が尋常でないことに驚愕せざるを得ない。ロバート・フリップの自由度の高いギター・プレイが、前衛芸術のようなダイナミズムを放散している。真夜中に暗い部屋で一人ヘッドホンで聴き入るのがベストである。何も考えず、頭の中を真空にして、仕事のことや、経済のことや、政治のことは忘れて、無の境地になるがいい。


「レッド」よりは聴きにくいが、「ポセイドンのめざめ」よりもイマジネーションに満ち溢れている。「アイランズ」よりは優美さに欠けるが、「リザード」よりもエキサイティングである。気取り屋のスノッブな人間には決してなりたくはないが、安易な方向に流れない、音楽の歴史を汲み取りながら、前衛の道を切り開いてきた人々が演奏する音楽には、無条件で、素直な耳を傾けたい。