この世には2種類の人種が存在しているようだ。


生まれながらにして、人の道をなぜか心得ていて、常に社会の調和維持を心がけている人種。誰に教えられたわけではないのに感謝の気持ちを有している。私の知人にこういうのがいた。小学校の卒業文集に綴った文章がすごい。「6年間多くの良き友人に出会い、彼らに支えられてすごせたことに感謝しています」。10歳過ぎの少年が、「良き友人」「感謝」とは驚きではないか。ちなみに、彼は現在教職に就いている。


もうひとつの人種。幼き頃より両親を怒らせ、嘆かせ、憤らせる。危なっかしい印象を生まれながらに放ち、取り巻きの方々に多大なるご迷惑をかけ続ける。


何を隠そう、私自身は後者の人種だと心している。そういう人種はどういう行動に出るか。この書物のような、いわゆる「人生の啓発書」を追い求める。


その昔、まだ純粋を忘れていなかったころ、私は膨大な「啓発書」を読み漁った。中村天風、船井幸雄、加藤諦三・・・。それは、人の道を知らない自分に対する一種の修行のような行為であったと思う。それはまるで、硬い岩に日々黙々と金槌を打ち続ける職人のように。


純粋の時期を終えると、次に待つのは成熟の時なのか。家族、社会の中で、男は自ずと成熟を迫られる。取り巻きの人々にしかるべき言葉をかけ、彼らをしかるべき方向に導く。責任という言葉がその背後に立ちはだかる。40歳を前にして、年齢相応の見識を身に付けることを切に望むようになってきた。


「自省録」は、ローマ帝国の五賢帝のうちのひとりが書いた、呟きのような言葉を集めたものである。もともと世に出すことを想定していなかったこともあって解読が怪しい部分もあるが、その多くは読む者の胸に突き刺さり、魂をなぎ倒す。そして、生命力を奮い立たせる。格調高い神谷美恵子の訳文が光っていることも特筆すべきだ。生まれつき人の道を知らない愚鈍な男にとって、必須の書物である。男はその命が尽き果てるまで勉強なのである。(ちょっとキザですいません)


最も心に残った言葉。「死は熟したオリーヴの実が感謝しつつ枝から落ちていくようなものだ」。素晴らしい。超一流の人間から、その死生観をまっすぐと喉元に突きつけられた気がする。この先何度何度も読み返すことになるんだろうなあ。


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